ずいぶんと久しぶりのサッカー日記の更新です。今回の話題は、Sportiva8月号から。前にもこのコーナーで紹介したことのある雑誌ですが、ここ半年くらいはずっと買ってなくて、久しぶりにコンビニで立ち読みしておぉ~っと思って即購入。
目に止まったのはサイモン・クーパーという人の、『ストライカーの才能は天性のもの?』というコラムでした。
彼が日本の友人に聞いたところでは、日本代表はいつも「決定力不足」に悩んでいる。しかしそれはどの国のチームでも同じであり、しかも得点能力は人に教えられるものではなく、ゴールの才能は天性のものとなっているから大変だ。しかし、実はそうではないのではないかと。得点能力は「教えられる技術である」と。
そして紹介されていたのがガリー・リネカーの話。リネカーといえば日本でもプレーして、というより我がグランパスでプレーして、ストイコビッチとベンゲル監督は名古屋の英雄になりましたが、リネカーは名古屋では“3億円泥棒”ということになっています。高い給料のわりにはまったく活躍せず、奥さんと一緒にCMに出て帰っただけ。リネカーが名古屋に来ても誰かが石をぶつけるかもしれません。
ただ、少しサッカーの話ができる連中と話すと、リネカーはロナウドのように自ら仕掛けるタイプではなく、“待つ”タイプだから、グランパスにはいいパスを出せる選手がいなかっただけだと、グランパスにはガスコインがいなかっただけだと、変な諦めになっていたものです。
しかしリネカーが世界的なストライカーであったことは間違いのないことで、母国イングランドではいまだに英雄でしょう。そして、彼がまだ全盛期だった90年のワールドカップ・イタリア大会で、イングランド代表への密着取材を許されたピート・ディヴィスという作家が、リネカーにゴールの決め方を尋ねたところ、以下がリネカーの解説。
スペースに繰り返し走り込む、とリネカーは言った。そこへボールが来て、相手DFの前で受けられれば、難なくゴールに押し込める。
「当たり前の話に聞こえるだろ?」と、リネカーは言った。でも、それをやっているストライカーはほとんどいないとも彼は言った。たいていはボールだけを見てしまう。相手選手も同じことをしているから、そうなるとスペースを見つけられない。
「ゴールを決められたのは、いいタイミングでいいポジションにいたからだって、みんな言うよね」とリネカーは語った。「でも、そうじゃない。いつもいいポジションにいたからなんだ」
そしてこれについてのクーパー氏のコメントがこちら。
リネカーがスペースに20回走り込み、相手DFを振り切っても、ボールが彼のところに来るのはそのうち1回くらい。それを決めれば「いいタイミングでいいポジションにいた」を周りは言う。だがリネカーは、実は20回とも「いいポジション」にいたわけだ。
リネカーの方法論は、本能や嗅覚とはなんの関係もない。
このやり方があらゆるストライカーに適しているわけではないとも指摘し、違うタイプとしてハカン・シュクルのことを紹介しているように、すべてのFWに当てはまるわけではありません。
しかし、この方法論は、ロナウドの相手を一瞬にして置き去りにする跨ぎフェイントや、アンリやオーウェンのような爆発的なスピードもなく、クレスポやトレゼゲのような空中戦の強さもない日本人にとっては、まさに唯一の点を決める方法ではないでしょうか。
もちろん日本のFWたちも、そんなこと言われなくてもわかっていて当然やっているつもりでしょうが、リネカーに言わせればやっていないということになるでしょう。
それは見ていて圧倒的に運動量が少ないことからもわかります。最近の高原、大久保コンビにはまだ動きがありますが、あれでもまだまだ足りません。中山、鈴木コンビなど最悪でした。
試合を通してひたすらスペースに走り込む。何も90分間ひたすら走り続けろというのではありません。ファン・バステンについても紹介されていましたが、ファン・バステンをマークしたクーパー氏の友人によると、「驚いたのは、彼が短いダッシュをずっと繰り返していたこと。ダッシュして、少し休み、またダッシュする」。何十回、何百回と繰り返すスペースへの走り込み。それに対して1回のミスもなく完璧にマークし続けることなど、ネスタ、カンナヴァーロ、マルディーニクラスが絶好調の時くらいでしょう。50億を超える移籍金のファーディナンドでさえ、試合中にマークがずれているのを見かけることは珍しいことではありません。となれば、ひたすらスペースへの走り込みを繰り返していれば、DFは必ずミスをします。これをやらない手はないでしょう。
問題は日本代表にはガスコインがいないことですが、そこは俊輔に期待しましょう。