No.59 ミラノダービー~第1幕~

今回の話題はついにやってきましたミラノダービー第1戦。舞台はもちろんジュゼッッペ・メアッツァ、通称サンシーロ。天候は雨。両チームともサンシーロをホームスタジアムにしていますが、今回はミランの方がホーム扱い。8万枚近いチケットは当然のごとく完売で、スタンドは文字通りの超満員。試合開始の2時間も前から両チームサポーターの応援合戦が繰り広げられていたようです。

そして放送が始まってからも、両ゴール裏にはミランの真っ赤の応援団とインテルの真っ青の応援団が陣取り、雰囲気は最高潮。特にミランサポーターによる大量の真っ赤な発煙筒は、あまり褒められたものではないのかもしれませんが、これぞ発煙筒という見事な燃やしぶり。普段のサンシーロでこれだけの真っ赤な発煙筒が焚かれることはありませんが、そこはさすがダービー。なんと253回目というミラノダービーいよいよ開演です。

まず何よりも目についたのが、ピッチ上での色の鮮やかさ。ピッチの芝の美しい緑の上に、赤ミランに青インテル。この緑と赤と青の競演はほんとに見事でした。

さて、問題のスターティングメンバーなんですが、これには先日のアルゼンチン代表と日本代表の試合の影響が明らかに出ていて残念なことに。

応援しているということでまずはインテルからですが、インテルからは3人の選手が日本戦に出場しましたが、その3人ともが何とスタメンから外れることに。

まず、セリエA、チャンピオンズリーグともフル出場を果たしていた鉄人サネッティもついにお休み、ベンチからのスタートとなりました。さらにアルメイダもお休みで、一番痛いのは今インテルで一番頼りになる男クレスポがベンチにすら入っていないという悲しいことに。

なんでこんな時期に親善試合なんかやってしかもベストメンバーを揃える必要があるんだと、インテル関係者はアルゼンチンサッカー協会に猛抗議をしたようですが、アルゼンチンにはアルゼンチンの事情があるでしょうが、一ファンの立場からすればインテルの抗議はもっともで、ただ疲れにいくだけの日本遠征と、大一番ミラノダービー、いくらなんでも重みが違います。

ただ、ヨーロッパの選手は代表に呼ばれても仮病まがいのことをして平気で辞退しますが、ブラジルにしてもアルゼンチンにしても代表への思いは皆すごいものがあって、馳せ参じる選手たちには頭が下がります。

それでも上記3選手を欠く結果になり、スタメンはGKは我等が守護神トルド、DFラインはココ、コルドバ、カンナヴァーロ、ビバス、中盤はモルフェオ、ファリノス、ディ・ビアージョ、S・コンセイソン、そしてツートップはレコバにヴィエリ。

一方のミランも、GKジーダ以下、ネスタを欠くDFラインは左からカラーゼ、マルディーニ、コスタクルタ、シミッチ。バレージと共にセンターバックを組んでミランの黄金期を支えたベテランコスタクルタ健在です。

そしてなんとルイ・コスタがベンチにすら入らずいつもの4-3-1-2ではなく4-3-3。中盤は底にピルロ、そして怪我しておりダービーに間に合うか心配されたガットゥーゾが元気に帰ってきて右サイドに入り、左サイドはいつものようにセードルフ。

そして前線はダービーに強いシェフチェンコをインザーギと並べて使ってくるかと思われましたが、シェフチェンコはこの日もベンチスタートで、インザーギにリバウドにセルジーニョ。

そして試合開始直後から両チームとも激しい動きでしたが、どちらかといえばパス中心にゲームを支配するミランと、インテルはクーペルお得意の堅守からのカウンターで、レコバ、ヴィエリが一瞬の隙を窺うという展開。

しかし先にチャンスをつかんだのではインテルで、前半5分あたり、S・コンセイソンの右からのクロスボールにゴール前に詰めたのは“重戦車”ヴィエリ。2人に挟まれるようにマークにつかれていましたが、なんとその場立ちの垂直跳びで二人に頭一つ勝つと強烈なヘッド!しかしこれは惜しくもジーダの正面でした。

ミランも負けていなく直後にリヴァウドが反撃の口火を切るシュートをやや遠目から放ちましたが、これはクロスバーの上に大きく外しました。

そしてこの試合鍵を握ったのが前線左サイドに張ったセルジーニョ。インテルがサネッティを外しビバスを入れてきてイマイチ不安の右サイドに、抜群のテクニックと圧倒的なスピードで何度も襲い掛かりました。このセルジーニョ、今シーズン何度もインザーギのゴールをアシストしている速いクロスボールが印象に残っていますが、リバウド顔負けのテクニックに、インザーギ顔負けのスピード。ほんとに素晴らしい選手です。

そして先制点を叩きだしたのもこのセルジーニョでした。前半12分過ぎ、センターサークル内でボールを持ち前を向いたリバウド、彼から前線左サイドに走りこんだセルジーニョに素晴らしいスルーパスが。かなり長い距離でしたが、雨に濡れたピッチ上を素晴らしい軌跡を描いて転がったボールは、DFの伸ばした足の先をすり抜けセルジーニョの足元に。そしてこのボールに対して見事にワントラップでコントロールしたセルジーニョ、その時点で勝負ありでした。このトラップによって飛び出したトルドは完全に振られ、あとはセルジーニョはただゴールにボールを流し込むだけ。コルドバも懸命に戻ってきていましたが、一瞬早くセルジーニョがボールを流し込みました、ミラン先制。

インテルも15分過ぎ、レコバの右コーナーからコルドバが完全にフリーでしたが、これは惜しくも左に外してしまいました・・・。

そして20分過ぎには、中盤左サイドのモルフェオから前線のレコバにパーフェクトなクロスボール。レコバもきっちり合わせましたがこれはジーダに防がれました。モルフェオのクロスはほんとに完璧でしたが、惜しむらくはヘディングシュートを放ったのがレコバだったこと。イマイチ力強さに欠けるヘディングでした。あれがヴィエリだったらもう少しジーダを冷やりとさせられたかもしれません。

25分過ぎあたりにもセルジーニョとインザーギの必殺コンビがインテルゴールに襲い掛かりましたが追加点には至りませんでした。

そしてその後も一進一退の攻防が続きましたが、ハーフタイム直前、先制点のセルジーニョがまたもや才能の片鱗を見せ、彼の放った完璧なループシュートはトルドの頭上を越えていきました。トルドもスタンドのインテリスタも、そして同じくインテリスタの自分も“やられた!”と思いましたが、ボールはほんのわずかにクロスバーの上を越えていきました。しかし十分に冷やりとさせられるシーンでした。

そして後半、クーペルはセルジーニョにいいようにやられていたビバスに代え、キャプテンサネッティを投入。日本戦の疲れはもちろんあるでしょうが、このままビバスに任せていたのでは傷口は広がるばかりと考えたのでしょう、当然の交代でした。

そして後半開始早々インテルはレコバがゴール正面から強烈なミドルシュートを放ちましたが、ゴール右に外れました。

そしてここから、このまま負けるわけにはいかないインテルは攻勢を強めていきます。そして55分過ぎ、左サイドから上がったボールがゴール前やや右にいたドフリーのS・コンセイソンの足元に。これを右足でコントロールしたかったS・コンセイソンでしたが、左足でシュート体勢に入った時には飛び出したジーダがすでにシュートコースを消していて、彼の体にボールは弾かれてしまいました。

インテルはここらへんからやや押し気味に試合を進め始めましたが、一方のミランも絶好調セルジーニョとインザーギらによるカウンターは、インテリスタを冷やりとさせるには十分でした。

そして押され始めたミランのアンチェロッティ監督は疲れの見え始めたピルロに代え、やや守備を強化するためにアンブロジーニを投入。さらに、絶好調セルジーニョとは違いイマイチ調子の出ないインザーギに代え、いよいよシェフチェンコを投入。しかし、シェフチェンコは相変わらず本人には不満大の起用法で、相変わらず彼の移籍の噂は途絶えません。

最近よく耳にするのはフィーゴとの交換トレードや、アトレティコからのレンタルの申し出ですが、我がマンUの1月の移籍市場でのストライカー獲得の第一候補もシェフチェンコだと言われています。ミランもこの騒ぎに“シェフチェンコは出さない”と公式のコメントを発表しましたが、彼が今の起用法に不満を抱いているのは間違いないので、自ら移籍を希望するかもしれません。ぜひマンUに来て欲しいものです。

さて話はそれましたが、70分過ぎ、この試合最大のチャンスがインテルに訪れました。FKからレコバがゴール前に放り込んだボールはゴール正面ドフリーのヴィエリの真ん前に。ゴールとの距離もわずかで、ただ足を振りぬけばゴールという絶好機に、“来た!”と思わず叫びましたが、浮き球に窮屈になってしまったヴィエリ、なんとゴール目の前にも関わらず、そのわずかな距離の中ボールはバーの上に消えていきました。もう1回やったら今度は外す方が難しいというようなシーンでしたが、この試合最大の決定機もインテルは生かすことができませんでした。

さらにクーペル監督はS・コンセイソンに代えオカン、ファリノスに代えカロンを投入し全力で攻撃態勢に入りました。一方ミランは大活躍のセルジーニョがお役御免でチャモと交代。

そして80分過ぎにはシェフチェンコがようやく本来の輝きを見せ、ペナルティエリアに入るか入らないかのあたりだったでしょうか、ボールを持って前を向くと、下手な小細工をすることなくスピードで一瞬にしてコルドバを振り切ると左足でグラウンダーの強烈なシュート。これは入ってもおかしくないシュートでしたが、わずかにゴール右に外れました。

シェフチェンコは素晴らしいところをたくさん持ったストライカーで、スルーパスへの走りこみなどももちろん素晴らしいものがありますが、この、ボールを持った状態からの1対1で、下手な小細工をすることなく一瞬でDFを置き去りにできるところが彼ならではです。こんな素晴らしい選手がベンチスタートを強いられているわけですから、多くのチームが狙うのも当たり前です。ミランにとっては贅沢な悩みですが、シェフチェンコははたしてこのままミランに残るんでしょうか・・・。

そして試合終了直前、インテルは左からのコーナーキックのチャンス。ここでイタリアダービーの奇跡の再現を狙ったトルドがまたもや攻め上がりました。しかし奇跡はそう何度も起こるわけはなく試合はそのまま1-0でミランの勝利。

インテルも悪い試合ではありませんでしたが、ヴィエリもレコバもどうも孤立しがちで、もう1枚攻めの駒が足りません。やっぱりクレスポの欠場があまりにも響きました。試合を決めてしまう仕事をできる選手がミランの方が多くいるのは明らかで、インテルはレコバとヴィエリ以外にそれが期待できそうにありませんでした。

しかしそのミランも先日ユベントスには完敗しています。ユベントスもミランに比べれば1人で試合を決めてしまえる選手が多くはありません。

しかしインテルとユーベが違うのはここからで、チームとしての完成度、チームとしてのスピードがユーベの方が一枚も二枚も上手です。

今のミランの攻撃を支えているのは紛れもなくピルロ。守備的MFでもゲームを作れるという新しい可能性を見せているピルロですが、守備的な位置に入っているのも確かで、その割には守備力はそれほど特筆するほどでもありません。いつもはそこをカバーしてくれるガットゥーゾがユーべ戦は欠けていたというのもミランにはついてませんでしたが、そのミランを粉砕するには、ピルロが攻めあがってきた時に彼を一気に囲んでボールを奪い、ミランの選手たちが戻りきる前に圧倒的なスピードで一気のカウンターで勝負を決めてしまうこと。頭ではわかっていてもこれを今のミラン相手に実践するのは容易なことではありません。しかしそれをいとも簡単にやってのけたユーベはカウンターから2得点、1点ミランも返しスコアは2-1でしたが、点差以上の完成度の差を見せつける完勝でした。

しかし同じことをインテルができるかというと悲しいかな現段階では無理で、チームとしてのスピードに乗った攻めというのはインテルにはできません。ヴィエリ、レコバ、そして今日はいませんでしたがクレスポ、完全に彼らの個人技頼みです。格下相手ならそれも通用しますが、セリエAでも上位相手、そしてこれから始まるチャンピオンズリーグの2次リーグあたりからはそうもいきません。インテルの苦しい戦いは続きます・・・。

イタリアミラノでは、ダービーに負けた方、例えば今回はインテリスタは、次回のダービーまで半年間はミラニスタに毎日のようになじられるといいます。幸いなことにここは日本ですので、インテリスタの管理人もそのような屈辱は味わわなくて済みそうですが、次回のインテルホームのミラノダービーでは、きっちり借りを返します!

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