No.73 インテリスタ至福の時

今回は、いよいよ開幕したチャンピオンズリーグの第1節から、屈指の好カードアーセナルVSインテル。舞台は、イタリア勢が過去に一度も勝ったことがないハイベリー。

まずは、試合の話に入る前に、今までチャンピオンズリーグといえばWOWOWで放送されていましたが、今年からはスカパーに。しかし今年はスカパーとは契約していません。サッカーセットを契約したところで、とても数千円の元を取れるほどは見れないのでこれはこれでいいんですが、それでもどうしても観たい試合というのもあるわけで、これはUEFA.comのハイライトしかないなと諦めていたわけですが、なんとなんと、UEFA.comやってくれました!

月額300円基本料金を払えば、試合単位で1試合100円(通信速度を上げた高画質だと300円。でも100円ので十分)で視聴可能。Windowsメディアプレーヤーのため、画面最大化をするとぼけてしまうため、テレビに比べれば遥かに小さいですが、選手の識別はもちろん可能で、十分なレベル。なんせ100円なので文句も言えません。ちなみに初期手数料みたいなのが1000円かかりますが、今月末までは無料です。

というわけで、早速契約。そしてアーセナルVSインテル戦を購入。ここまでなんと420円(税込)。UEFA万歳!!時間があればもちろん多くの試合を観たいですが、それはとても無理な状況ですし、かといって1試合観るために数千円のスカパーを契約するのもばかばかしい話で、そんななか、毎月300円だけ払っておけば、どうしても観たい試合がある時だけ100円で購入。なんと素晴らしいんでしょう!

というわけで、前置きが長くなりましたが、試合の方を。

スタメンまずはアーセナルの方からは、GKは、今シーズンついにシーマンを諦め補強に乗り出して獲得したレーマン、DFラインは、ローレン、トゥーレ、キャンベル、アシュリー・コール。中盤は中央にヴィエラとジウベルト・シウバ、そしてサイドにピレスとリュングベリ。そして前線はアンリとヴィルトール。ヴィルトールとベルカンプの選択は時と場合にもよりますが、ベストの布陣と言っていいでしょう。試合前、インテル時代のことについて「僕のインテルでの経験はくだらないもの」と挑発的な発言をしていたベルカンプは、ベンチからのスタートとなりました。

そして我等がインテルは、GKに守護神トルド。彼が神懸れば勝ちはなくとも負けはありません。そしてDFラインは右からサネッティ、カンナヴァーロ、マテラッツィ、コルドバ。コルドバが左サイドバックをやっているというのは、一時的なものとも思われますが、この4人なら安心して観ていられます。

そして中盤は中央にザネッティとエムレ、そしてサイドには、クーペルサッカーの真髄ながらなぜか今まで弱体で、今シーズンやっとスペシャリストの補強がなった2人、右ファン・デル・メイデ、左キリ・ゴンザレス。今シーズンはこの二人のクロスからヴィエリがゴールを量産してくれることでしょう。

そして前線はヴィエリとクレスポ、ではありません。クレスポはロンドンに去って行ってしまいました・・・。ヴィエリも今回の遠征には来ていません。そしてお気に入りレコバも・・・。というわけで、アンリとヴィルトールに比べると遥かに名前負けしてしまう二人、今シーズンボローニャから獲得したフリオ・クルスと、こちらはインテリスタ期待の星マルティンス。特にマルティンスは、昨シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝のミラン戦の鮮烈なゴールが今も目に焼きついています。あの時、インテルのFWはこれであと10年は大丈夫と言わしめたマルティンス、なんとまだ18歳です。彼の存在があったからこそ、クレスポをああもあっさりと放出したと言われているくらい、全インテリスタ期待の星。というわけで、新加入と10代という、フレッシュなこの2人に期待です。

しかし、期待とは言ってみても、いくらアーセナルがチャンピオンズリーグに弱いとはいえ、先ほども書いたように舞台がイタリア勢の鬼門ハイベリー、そしてアーセナルはプレミアで首位を走りメンバーもベスト。対するインテルは昨シーズンのインテルのチャンピオンズリーグを支えたクレスポが去り、ヴィエリとレコバも欠場。正直インテルにプラスに働く要素は見当たらず、インテル必殺のスコアレスドローに持ち込めればいいところかというのが戦前の予想でした。

そしていよいよ選手入場。やっぱりイングランドのスタジアムは臨場感が違います。オールド・トラフォードもそうですが、ピッチと観客席が手の届く距離にあるイングランドのスタジアム。歓声の押し寄せ方がイタリアではこうはいきません。Windowsメディアプレーヤーの小さな画面で観ていても十分に臨場感が伝わってきます。

そして、キックオフ。ショートパスをつなぐサッカーのアーセナル、基本的にはカテナチオからの個人技頼みのインテル、そのチームカラーからも当然のように序盤は完全にアーセナルのペース。個人個人のテクニックは、素人目に見てもインテルの選手のそれとはレベルが違います。

何度もシュートまで持ち込んだアーセナルでしたが、トルドと1対1になったリュングベリが一番決定的。それでもさすがトルド、涼しい顔で止めてくれました。

そしてアーセナル攻勢の中、前半22分、左サイドのスローインをマルティンスが直接頭で前に流すと、走りこんだクルスがレーマンと1対1に。自分の中ではポストプレーヤーのイメージが強かったクルス、そんなこともできるの!?とびっくりの、角度のないところからのループシュート。力のないボールはアーセナルゴールに吸い込まれていきました。ゴ~~~~~ル!!インテルこの試合初めてのシュートでしょう。いきなりのチャンスを決めたクルスは見事としか言いようがありませんが、これぞインテルのサッカー。カテナチオからの2人or3人での攻め。今回もスローワーを除けばマルティンスとクルスの2人だけで取った得点。

そして、このゴールの興奮も冷めやらぬわずか2分後、トルドのゴールキックをクルスが競ると、ボールはキリ・ゴンザレスへ。彼の正確なクロスをキャンベルがヘディングでクリアすると、そのボールをダイレクトでファン・デル・メイデがボレーで突き刺してくれました。ここまでトルドのキックからわずか10秒ほど。というと聞こえはいいですが、確かに見事なボレーでしたが、これはレーマンの反応が鈍過ぎ。ブッフォンなら涼しい顔をして弾いていたでしょう。といっても今回の相手はブッフォンではなくレーマン。前半24分で早くも2-0。

この時点で負けはなし。いくらハイベリーといえど、いくらアーセナルといえど、インテルが専守防衛に入れば、2点差はひっくり返せません。ひっくり返せるとすれば、マドリーというよりはロナウド個人だけでしょう。どんなに凄いパス回しをされても、8-1-1(昨シーズンのチャンピオンズリーグのバレンシア戦のようなフォーメーション)を布けば、最後の最後で跳ね返すことができます。W杯でイングランドやスウェーデンがアルゼンチンの猛攻を最後の最後で跳ね返し続けたような感じです。ただ、W杯の時にも、10人でも破れなかった壁をアンリ・カマラがたった一人で破ったと書きましたが、どうしようもないのは有無を言わせぬ個人技。そしてその最高峰がロナウドでしょう。昨シーズンのマンUも見事にハットトリックを決められました・・・。

しかし、30分にはインテルにもピンチが。ペナルティーエリア内でマテラッツィがリュングベリを倒しPK。“一言多い”ならぬ“一動作多い”マテラッツィ、またまたやっちゃってくれました。それでも、マテラッツィのアカデミー賞ものの演技は必見の価値があります。彼が痛がって倒れている時の、8割方は演技です。

しかし、ユーベにはブッフォンがいますが、我等がインテルにはトルドがいます。ボールをセットするアンリの眼前に仁王立ち。これは多分反則だと思うんですが(笑)。それでもアンリがびびったことは間違いありません。アンリのびびった表情、そしてゴールマウスにどっしりと構えたトルド、観ていて入る気がしませんでした。そして案の定左手1本でシャットアウト。このPKが入っていれば試合はまた違った流れになっていたでしょうが、トルドのおかげでインテルのペースは続きます。

2点目のゴールが決まったあたりからは、ハイベリーだというのに、インテルサポーターの歌声しか聞こえてきません。ハイベリーに響き渡る“オレ~オレオレオレ~♪インテ~ル、インテ~ル♪”。ミラノから駆けつけたサポーターも、わざわざ来た甲斐があったというものでしょう。そしてアーセナルサポーターからは、不甲斐ないアーセナルイレブンにブーイングが・・・。

そして、トルドがPKを止めてくれたおかげで、2点でも十分だったんですが、前半41分におまけが。トドメの一撃はマルティンス。中盤で長々とボールをキープしたエムレ、ペナルティエリア手前まで迫ると、タイミングを計って前線のマルティンスへショートパス。マルティンス、キャンベルのタックルを振り切ると、至近距離から強烈な弾丸シュート。これはブッフォンでも止められないでしょう。というわけで、前半で3-0。しかも3本のシュートで3点。効率のいいことこの上ありません。

そして後半は必殺の“8枚の青い壁”。アウェーで3点もあればこれで十分。アーセナルは65分にベルカンプとカヌーと投入するも時すでに遅し。一度カヌーに1対1の決定機がありましたが、またまたトルドが涼しい顔で止めてくれました。

インテルの方はラムーシ、ヘルヴェグ、カロンを投入する余裕の采配。そして試合はそのまま3-0で終了。なんとハイベリーで3-0。どんな楽観的なインテリスタですら想像さえしなかった結果でしょう。

というわけで、当然選手や監督のコメントもご機嫌なもの。

まずはクーペル、「ほぼパーフェクト。アーセナルが悪かったのではなく、インテルが本当に素晴らしかったのだ。」「最高のレベルの試合でした。誰もが今夜のインテルの姿を気に入ってくれるはず。」。はい、気に入りました。

そして2点目のボレーを決めたファン・デル・メイデも「ここは簡単な場所じゃないけど、終わってみれば楽勝だったね。3度のチャンスで3点取って、あとはよく守った。」。アーセナル相手に“楽勝”という言葉が口から出てしまうほどの完勝。

そして笑えたのがキャプテンのサネッティ、「この素晴らしい芝の上なら、質のいいチームが勝つのは当然。」。これはサンシーロのあの最悪な芝に比べれば、今回のハイベリーの芝は、インテルの選手たちにとってはまるで夢心地だったということでしょう。それにしてもサンシーロの芝はほんとに最悪で、毎年何人もの選手がその芝の犠牲になっています。いい加減なんとかならないんでしょうか。

そして最後は、試合後更衣室に直行して選手たちを祝福したというモラッティ会長、「孫の代まで語り継ぐべき午後だ。」。ほんとにその通りでしょう。自分が見た今までのインテルの試合の中でもベストゲームでしょう。

今までは、カテナチオで耐えてもそこから前戦にただ放り込むだけでしたが、今シーズンはきちんとサイドに起点がつくれます。ファン・デル・メイデとキリ・ゴンザレス、2人のスペシャリストの補強はほんとに功を奏しそうです。

とはいっても、浮かれてばかりもいられません。今日のサッカーでユーベに勝てる保証はどこにもありません。少なくとも最初の2点はブッフォンなら軽く止めていたでしょう。そして中盤のプレッシャーも含めたユーベのDFラインの強固さはアーセナルの比ではありません。もっともっとサイドからの攻めの質を上げていく必要があるでしょう。そしてやっぱり全開のヴィエリが必要です。

それでも、今はただこの勝利に酔いしれましょう。モラッティをして「孫の代まで語り継ぐべき午後だ。」と言わしめた試合です。インテリスタにとっては、ほんとに至福の90分でした。

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