No.40 エランド・ロードの意地

プレミアリーグが開幕して約1ヶ月。早くも注目対決第1弾がやってきました。対戦カードはリーズVSマンチェスターU。舞台はリーズのホームスタジアムエランド・ロード。

今さら言うまでもない、ファーディナンドの移籍による因縁の対決です。ファンに対して「残留したい」と言ったその日にクラブへの移籍志願をしていたことが後から判明したということで、ファンは裏切られたと激怒しています。
どのレベルのブーイングを受けるのか密かに期待していましたが、ファーディナンドがボールを持つ度に、文字通りの大ブーイング、しかもそれが試合終了まで延々と続きました。一度などは、あまりのブーイングにびびったのか、DFラインでボールキープ中に相手にパスしてしまうという、信じ難いミスまでしてしまう始末。

Jリーグで移籍などがあっても、こんなことはありませんが、生活の一部となるまでチームのことを愛しているため、裏切られたという思いはなおのこと強いのでしょう。
ファーディナンドにとってはたまったものではありませんが、ここまでチームのことを愛しているリーズのファンは羨ましくもあります。ファーディナンドにとって運が悪かったのは、アンチマンUの多いイングランドにあって、リーズのファンはその中でも際立ってアンチマンUなのに、よりにもよってそのマンUに移籍してしまったということ。
しかも、ネスタやカンナヴァーロより移籍金が高いなんて明らかに高すぎで、本人にはその気はこれっぽっちもなくても、お金に目がくらんだと思われてしまうのも仕方ないかもしれません。

でも、その一方でリーズが莫大な借金を抱えていて、ファーディナンドの移籍によって、その借金がかなり減ったというのも忘れてはならない事実。チームにとっては止むを得ない選択でもあったわけです。こうなるとやっぱり、ファーディナンドのファンへの対応に問題があったというしかありません。それでも、彼にとっては最大の鬼門を早くも通過したわけで、これからはマンUのために精一杯のプレーをして欲しい、ただそれだけです。

さて、試合の方ですが、ファンはもちろんのこと、監督も選手も、そしてエランド・ロード自体が、今日だけは何がなんでも勝つという殺気に満ち溢れていました。もちろんいつも勝つつもりで試合はしているんですが、今日は「負けるわけにはいかない」という“意地”がスタジアム全体から溢れていました。

そして、そんなリーズを相手にするには、今日のマンUのスタメンでは役不足でした。たとえベッカムを欠いたとしても中盤、そしてチームはちゃんと機能しますが、キーンにスコールズまで欠いてベッカムが中央をやるようでは、もう中盤は本来の輝きを失ってしまいます。
イングランド代表のエリクソン監督はベッカムは中央の方がいいと言っているようですが、個人的にはベッカムは中央では普通の選手だと思います。レベルが低いとまでは言いませんが、決してスーパーな選手ではありません。例えば自分の大好きなルイ・コスタと比べたら、ベッカムなど問題外なレベルです、中央ならという条件付ですが。
ベッカムの武器は、サイドからのあのワールドクラスのアーリークロスであって、それを自ら封印することになってしまう中央でのプレーでは彼は活きません。今日のベッカムも、ミスを連発する最低の出来でした。

この異様なスタジアムの中では、やっぱりキーンのような気持ちでプレーする選手が不可欠です。最近は例の自伝や、プレーの面でもキャプテンらしからぬプレーもしている彼ですが、マンUで一番欠けてはならないのは、ベッカムでも他の誰でもなくキーンです。それは、チームがキーンが在籍する限りはチームでの最高年俸を払うと約束していることにも現れています。今や世界的大スターとなったベッカムよりも、給料の面でもキーンはチームからの絶大な信頼を得ているのです。ファーガソンにとっての信頼という意味でも同じです。

もう1人スコールズの欠場。スコールズも大好きな選手の1人ですが、献身的な運動量、前線への飛び出し、そしてこぼれ球を叩き込む殺人的なミドルシュート、どれをとってもまさにワールドクラスです。彼がいないだけで、チームには“勢い”というものが失われてしまいます。

この試合でも途中からフォルランが投入されましたが、正直言って彼ではまったく役不足です。スールシャールをスーパーサブとして使うためにも、やはりもう1人ワールドクラスのFWの獲得が必須です。
これでもし、ファン・二ステルローイが怪我でもしたら、一気に攻撃は壊滅です。前から言われていることですが、夢の中盤に比べて、前線はあまりにも層が薄すぎます。ファン・二ステルローイもスールシャールも文句なしのFWですが、フォルランのことを考えると、実際この2人だけなのです。どちらかが欠けた瞬間に終わりです。
ファーガソンが去年あたりからやる、ギグスを1.5列目にしての1トップも賛成できません。1トップではいかにファン・二ステルローイが凄いとはいえ、明らかに前線の枚数が足りません。1月の移籍市場ではぜひ大物FWの獲得をお願いしたいものです。

それにしても、2試合連続でのスコアレスでの敗退。かなり重症です・・・。壊滅的な守備をなんとかカバーしてきた圧倒的な攻撃力も、今シーズンはここまで6試合でわずか5点。1試合平均2点を軽く超えていたのに、1試合平均1点を割るようではもうマンUではありません。アーセナルはこの3倍の15点も取っているのにです。覇権奪回が至上命令の今シーズンですが、早くも黄色信号の点滅です・・・。

一方のリーズは、あのロビー・キーンが出番を求めて移籍したほど、攻撃陣のタレントは揃っています。ヴィドゥカ、キューウェル、スミス、ボウヤー、そして、ハートにミルズも盛んにオーバーラップを仕掛けてきます。迫力十分な攻撃陣です。
試合を決めたのは、ワールドクラスの左足を持つ男イアン・ハートが、その左足ではなく右足で上げた素晴らしいクロスボールに飛び込んだキューウェルのヘディングでした。なんであんなにフリーなの?と首を傾げたくなりますが、見事なゴールでした。

この試合は、内容的にも、気持ち的にも、マンUは完敗でした・・・。

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