No.56 サンチャゴ・ベルナベウ陥落

今回の話題は、いよいよ佳境に入ってきたチャンピオンズリーグ1次リーグ第5節、見た試合はレアル・マドリーVSローマ、舞台はマドリーのホームサンチャゴ・ベルナベウ。
前回の対戦でローマは、マドリーをホームオリンピコに迎えながら0-3と完敗。舞台をベルナベウに移しての試合のため、マドリーの圧勝かという雰囲気も。
しかしローマも、AEKアテネがホームでゲンク相手に勝ち点3を取ることが予想されたため、アウェーとはいえ生き残りのためには勝ち点3が必要な試合。他のグループでは早々と勝ち抜けが決まる中、グループC最大の大一番を迎えました。

さて、ホームのマドリーはついに夢の布陣が現実のものとなりました。GKカシージャス以下、DFラインは右からミチェル・サルガド、イエロ、エルゲラ、ロベルト・カルロスと不動のメンバー。中盤の底にはこちらも不動のマケレレとカンビアッソ、そして前4人はフィーゴ、ジダン、ラウール、ロナウド。4-2-3-1とも4-2-4とも言える感じで前4人は基本的にフリーにやっているように見えました。ジャマイカ戦で日本の中盤が黄金のカルテットなどと騒がれましたが、あんなレベルではなく文字通りの最強のカルテット、ついに同じピッチに立ちました。

一方のローマは、GKアントニオーリ以下、3バックは右からパヌッチ、アウダイール、サムエル、カペッロ監督、この大一番に今シーズン初出場のアウダイールを起用してきました。MFは中盤の底にエメルソン、トンマージ、右カフーに左カンデラ。トップ下にトッティを配し、ツートップはバティでもカッサーノでもなくモンテッラにデルベッキオ。特にデルベッキオは先日のローマダービーでも監督の期待に応えていることもあり、カペッロはこの大一番に、慣れ親しんだ前線の3人を起用してきました。マドリーの超豪華メンバーに比べてどうしても小粒感は否めませんが、こちらも歴戦の強者が集まった布陣。

序盤はスローペースで展開されましたが、さすが大一番というように、両チームともプレッシングの厳しさはさすがの一言。

開始10分で早くもマドリーにこの日最大のチャンスが。右サイドフィーゴを追い抜いてサルガドが深くえぐりパーフェクトなセンタリング。ほんとに完璧で、このレベルのセンタリングが日本代表にも欲しいです・・・。毎回とはいいませんが、3本に1本でもこのレベルのセンタリングが上がれば・・・。

そのパーフェクトなセンタリングに対し、二アサイドにドンピシャで走りこんだのがラウール。ラウールはこういった時まず間違いなく二アサイドに走りこんできて、DFより一瞬早くボールに触れヘディングで流し込むというのが得意中の得意パターン。今回も完璧なタイミングで走りこんできてヘディングもドンピシャで、スタンドの観客も“入った!”とばかりに総立ちになりましたが、惜しくも左に外れました・・・。

一方ローマも負けていません。15分、エメルソンが素晴らしい前線からのプレッシャーでボールを奪うと、モンテッラにパス。これを受けたモンテッラ、カシージャスと一対一になりましたが、あまりにも丁寧に狙いすぎて、こちらも惜しくも左に外してしまいました・・・。

その後マドリーはジダンの強烈なシュートをアントニオーリが弾いたところをラウールが決めましたが、これは本人も納得のオフサイド。直後にローマも、モンテッラが3人を引きつけトッティにパスをしトッティが強烈なシュート。両チームともディフェンスに脆さが感じられ、ともにゴールに迫る迫力は十分。一端攻め込まれるとピンチを迎えてしまう両チームでした。

迎えた27分、DFラインでボールをキープしたアウダイールから前線のモンテッラにグラウンダーの長い一本のパスが通ると、モンテッラはダイレクトでこれをはたき自らはゴール前へ。このボールを受けたエメルソンは再び前線のモンテッラへ。モンテッラはペナルティエリア内で勝負をしかけ得意の左足でシュート。これはイエロが体を張って防ぎましたが、こぼれたボールは左サイドにいたトッティの前へ。フリーのトッティは落ち着いてこれをシュート。カシージャスも遅れながらも素晴らしいジャンプを見せましたが、ボールはそのわずか先を通り抜けてゴールに突き刺さりました。

チャンピオンズリーグここまで4試合でわずかにカッサーノの1点だけと、極度の得点力不足に悩まされていたローマでしたが、前半27分で、しかも流れの中で先制。これで試合は面白くなりました。

ローマのチャンスは続き、30分、カウンターからモンテッラがフリーに!しかし、これはカシージャスが素晴らしい飛び出しで防ぎました。

直後にジダンの強烈なシュート!これはDFにあたり惜しくも左に外れました。さらにマドリーは攻勢を強め、ラウールが落としてのロナウドのシュート、さらに右コーナーからのボールが目の前にこぼれてきたところをまたしてもロナウドのシュート。しかし、ともに力強さが感じられませんでした。
そのまま前半は0-1とローマリードで終了。

後半に入っても、マドリーが同点ゴールを狙い攻勢に出て、ローマもただ守るだけではなくカウンターから追加点を狙うという展開。

そんな中後半7分、ロナウドがついに輝きを見せ、アウダイールをかわしてのグラウンダーのシュート、ボールはゴール右隅を確実にとらえていましたが、アントニオーリが体を倒して素晴らしいセーブでコーナーに逃れました。
しかし、キーパーがきちんとコーナーに逃れたとはいえ、キーパーの目の前にはラウールが当然のように詰めていました。ラウールのここらへんの抜け目のなさは恐ろしいほどで、キーパーが前に弾こうものならたちまちゴールできる位置に間違いなくいます。ここらへんの抜け目なさでは、ロナウドも敵ではありません。

その後ローマはトッティがらしいループシュートを放ったりしましたが、基本的にはマドリーの猛攻。ラウールがフリーでヘッドを放つ場面もありましたが、これはアントニオーリの正面・・・。いいシュートが正面にいく場面がいくつか見られ、マドリーはこの日はツキもありませんでした。

マドリーの猛攻はペナルティエリア内に少なくとも3人はいるという迫力十分の攻めなんですが、いかんせんローマの中央、サムエルとアウダイールが高くて強い!この試合に限っては文字通り鉄壁。

さらに猛攻をしかけるマドリーは右サイドフィーゴの柔らかいクロスかゴール前のラウールが倒されたように見えましたがPKはなし。
さらに、延々とマドリーの猛攻は続きます・・・。

しかし、素晴らしいのはローマの戦い方で、一方的に攻められているとはいえ、決してゴール前に張り付いて守っているだけというふうにはなりません。マドリー相手にゴール前に張り付いてもいつかは入れられるもので、守るだけでは耐えられません。

その点、この日のローマは守るだけではありませんでした。一方的に攻められながらも、いったんボールを奪うや否や、試合終盤にも関わらず運動量十分なカフーやカンデラが猛然と攻め上がります。しかもむやみやたらと上がるというものではなく、十分に得点の予感を感じさせる攻め上がり。このため、マドリーも全員攻撃とまではいけません。

少しでも隙を見せれば一気に攻め込むぞというローマの睨みがきいているのです。ここらへんは歴戦の強者が集まっているローマならではで、さすがカペッロと思わせる戦いぶりでした。

そして85分、ジダンに代わって入ったソラーリが左サイドで開いてボールをキープし、それに対してロベルト・カルロスが斜めに猛烈な勢いで走りこんできましたが、これはアントニオーリが素晴らしい飛び出しでシャットアウト!アントニオーリ今日は冴えていました。

さらにロスタイムも残り少ない試合終了直前、ロベルト・カルロスが前線に放り込んだボールを、たぶんモリエンテスだと思いますが、ヘディングでつないで、最後はソラーリのヘディング!最後の最後に完璧にくずしましたが、惜しくも外れました。

マドリーの猛攻を耐えに耐えて、試合は0-1でローマの勝利。

この試合のMVPは、放送中にはわかりませんでしたが、たぶんトッティでしょう。
それでも、影のMVPは間違いなくアウダイール。とても今シーズン初出場とは思えません。ロナウド、ラウールを敵に回し、完璧な仕事。まさに必殺仕事人とでも言いたくなるような黙々と“潰す”彼でした。

両サイドカフーとカンデラも素晴らしい出来でした。カフーはロベルト・カルロスのことを熟知していることもあり、彼の攻め上がりを完全にシャットアウト。しかもただ守るだけでなく、自らもゴール前に攻め上がるという、文字通り縦横無尽の働き。
さらに左サイドのカンデラも、フィーゴの縦への突破を最小限に抑えただけでなく、自らも無尽蔵の運動量で、試合終盤まで何度もマドリーゴールに攻め込みました。

カフーにしろ、カンデラにしろ、マドリーのメンバーと比べれば小粒なんですが、仕事ぶりは完璧で、個々がこのようにしっかりと仕事をこなせば、マドリー相手にこういう試合もできるんだということを見せてくれたローマ。今シーズン立ち上がり絶不調だったローマでしたが、強い頃のローマが戻ってきました。

一方問題はマドリーで、これでリーグ戦も含めて5試合勝ちなしの2敗3分。仕方ないことですが、ロナウドと周りのコンビネーションがいまいちで、この試合でも終盤ロナウドに代わってモリエンテスが入りましたが、ラウールとモリエンテスはさすがというコンビネーションを見せてくれました。

この試合、ボールポゼッションはマドリー60%に対しローマ40%。コーナーキックの数に至ってはマドリー15本にローマ1本。数字の上だけではマドリーが圧勝しておかしくない試合ですが、それだけではないのがサッカー。
今日のローマはサッカーは、豪華メンバーを揃えるだけがサッカーではないと、そして久しぶりにイタリア人が理想とする、美しい“1-0”を見せてもらいました。

この勝利は歴史的勝利で、マドリーがサンチャゴ・ベルナベウでイタリアのチームに負けるのはなんと35年ぶり。オリンピコで0-3という醜態をさらしたローマの、意地、そして底力を見せつけられた一戦でした。

他の試合ですが、グループCもう1試合はAEKアテネがホームでゲンク相手に勝ち点3を取りきれずこれでなんと5戦5分。これで負けながらもマドリーの2次リーグ進出が決定。ローマは起死回生の勝ち点3でAEKアテネ相手に引き分けで十分と、一気に有利に立ちました。

他のグループはまずは2日目から。
グループAではアーセナルがまたしても敗れドルトムント2-1アーセナル。さらにPSVはオーゼールを3-0と一蹴したものの、ドルトムントが勝ってしまったため、2次リーグ進出はドルトムントとアーセナル。

グループBではバレンシアがアウェーにも関わらずリヴァプールに0-1で勝利。これでバレンシアは勝ち点13、さらに得失点差+10は出場32チーム中最高。安定感に破壊力も加わったバレンシア、文句なしに強いです。もう1試合は延期されています。

グループDではインテルがホームでローゼンボリに3-0で快勝。もう1試合はリヨンがなんとホームでアヤックスに0-2で敗戦。これでインテル、アヤックスが勝ち点8で並び、リヨンが勝ち点7。8つあるグループの中で唯一ここだけが勝ち抜けチームが決まっていません。最終節のアヤックスVSインテルの大一番は必見です!

1日目にいって、まずはグループEのユベントスはホームでフェイエノールトをディ・バイオの2ゴールで2-0と下し2次リーグ進出決定。一方フェイエノールトは最下位に転落してしまいました。
もう1試合、ニューカッスルは3連敗の後2連勝で最終節に希望をつなぎました。

グループFでは調子を取り戻してきたレヴァークーゼンがホームでオリンピアコスにしっかりと2-0で勝利を収め、勝ち点を9に伸ばし2次リーグ進出決定。
もう1試合マンUはいかにメンバーを温存したとはいえマッカビ・ハイファに3-0と完敗。まぁこれはご愛嬌ということで・・・。

そして、グループGの大一番デポルティボvSバイエルン・ミュンヘンは2-1でデポルティボの勝利。これでバイエルンはダントツの最下位決定で、2次リーグ進出はおろか、UEFA杯にもまわれなくなってしまいました。バラック、ゼ・ロベルト、ダイスラーを補強し優勝候補にも挙がっていたバイエルンの、あまりにも早い敗退でした。
もう1試合、ミランもメンバーを落としてランス相手にチャンピオンズリーグ初黒星を喫しましたが、何の問題もないでしょう。セリエAでもついに負けたミランですが、負け癖がつかないかだけが唯一の心配でしょう。この試合では復活したシェフチェンコがゴールを決めています。

最後にグループHですが、バルセロナはアウェーでリケルメのゴールでクラブ・ブルージュに0-1の勝利。唯一の5連勝チームです。リーガでも圧勝して見せたバルセロナ、ようやくエンジンがかかってきたんでしょうか。
もう1試合は、ガラタサライがなんとホームでロコモティフ・モスクワに1-2と敗戦。これでクラブ・ブルージュが勝ち点5、ガラタサライとロコモティフが勝ち点4と、残り一つの枠を争う形に。

これで2次リーグに進む16チームのうち、9チームが決定。残り7つの枠は最終戦までもつれ込むこととなりました。なかでも、1チームも決まっていないのがグループD、頑張れインテル!

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