No.55 This is スルーパス

今回の話題は、折り返しの第4節が行われたチャンピオンズリーグ1次リーグ。
見た試合は、サンシーロでの大一番、ACミランVSバイエルン・ミュンヘン。

デポルティボがランスに勝ってしまうと、バイエルンはここで負けたらその時点で終わり。チャンピオンズリーグの常連にして最低でも毎年ベスト8にはいっていたバイエルンですが、早くも追い詰められました。

追い詰められた時のバイエルンはほんとに凄まじく、よく言う“ゲルマン魂”なのかどうかはわかりませんが、数々の逆境を跳ね返してきたバイエルン、今回も立ち上がりからの死に物狂いの猛攻を期待して試合開始!

試合が開始して、あれっ!?勝つしかないバイエルン、なのに・・・。もちろん真剣にやってるに決まってるんですが、伝わってくるものがありません。

技術うんぬんを抜きにして、“何が何でも”という気迫というのは、見ているこっちにまで伝わってくるものです。いい意味でイッちゃってる状態です。例えばこの前書きましたベティスVSマドリーのあの死闘。あの試合のベティスの選手たちからは、見ているこっちまで熱くなるくらい、伝わってくるものがありました。

バイエルンの選手からはそれが伝わってきません。立ち上がりからなりふり構わぬ猛攻をしかけてくるかと思われましたが、サンシーロで先制されることの意味を知ってるといえばそれまでなんですが、1点取りにいくというよりも、先に取られたくないというそういう試合運びでした。

しかし、今シーズン1試合平均の得点で欧州最強を誇るミランの攻撃です、守って耐えられるものではありません。今のミラン相手に受けに回ったら一方的にボールを支配された末にインザーギの決定力の前に大量失点をくらうのがオチです。

案の定、ミランは開始わずか11分でセルジーニョが先制。セードルフの見事なパスから、これまた左足アウトサイドでの柔らなタッチの見事なシュートでした。

これでミランの一方的な展開かと思われましたが、エウベルが中央を凄まじいスピードでドリブルで駆け上がり、マルディーニをあっさり置き去りにするとシュート!ジーダがいつものように?前にこぼしたところにバラックが襲いかかります!
しかし、これはジーダが自らのミスから失点するわけにはいかないと何とかクリア。

前半23分、エウベルがまたもや中央を突破しDFをひきつけると、左サイドにいたタルナトにパス。
そして、パワー系キックならワールドクラスのタルナトの左足が火を吹きました。ロベルト・カルロスも顔負けの、文字通り“弾丸”シュートがミランのゴールネットに突き刺さりました!

この後、バイエルンは徐々にペースをつかみかけていきましたが、それでも遠目からシュートを放つだけで、ジーダを脅かすまでには至りませんでした。

後半、アンチェロッティ監督はイマイチ調子の悪いアンブロジーニに代えガットゥーゾを投入。このガットゥーゾの投入は大正解で、バイエルンの突破を抑えてミランが少しずつボールをキープできるようになっていきました。

そして、64分、前に『針の穴を通す男ルイ・コスタ』の時に書きましたが、ルイ・コスタの目がキラ☆っと光ったかわかりませんが、ルイ・コスタがペナルティーエリアやや手前で前を向いてボールをキープすると、彼の目には一本の細い道が見えたことでしょう。ボールは、その上を寸分の狂いもなく転がっていきました。タイトルの通り、『This is スルーパス』。

スルーパスというものが何たるかを知りたい方は、このルイ・コスタのパスをこそ見るべきでしょう。コース、速さ、タイミング、すべて完璧。これ以上のパスはありません。まさにパーフェクトでした。

そのパーフェクトなパスに走りこんだのが、今シーズンは神をも味方につけたかのようにゴールを量産するピッポことフィリッポ・インザーギ。彼に残された仕事はボールをただゴールに流し込むだけでした。

確かにインザーギのシュートも一流でした。セルジーニョと同じようにアウトサイドで柔らかく流し込むシュート。あれを強く打って外してしまうFWはいくらでもいますから、インザーギのシュートも十分に一流です。

しかし、インザーギレベルともなればあそこまでくれば外しません。ルイ・コスタのパスの時点ですでに勝負はついていました。

今はもう存在自体していないフィオレンティーナで、バティストゥータにゴールを量産させていたルイ・コスタ。ミランに期待を一心に浴びて移籍したものの怪我に泣き、W杯でも残念な結果に終わり、リバウド、セードルフが移籍してくることにより、放出リストにも挙がっていたルイ・コスタ。

しかし、そんなことをすべて過去のことにしてしまったかのように、今ルイ・コスタは全盛期の輝きを取り戻しています。

彼が前を向いてボールをキープしたら、パスの選択肢は無限にあります。その中から瞬時にして最高の選択をし、引かれた線の上を転がるように、ボールはパーフェクトなコースを転がります。

ルイ・コスタも出していてほんとに楽しいでしょうし、受けるインザーギもこれほど楽しいことはないでしょう。
きっと凡人にはわからない一筋の光が、彼等2人にはピッチの上に見えていることでしょう。ルイ・コスタとインザーギの2人を目で追っているだけで十二分に楽しめます。

屈強なDFラインにできる一瞬の隙を常に狙っているインザーギ、そんな彼の動きを常に視野に入れながら彼を最高に生かすパスコースを模索し続けるルイ・コスタ。

そんな2人の呼吸があった瞬間にはもうDFはどうすることもできません、すべてが手遅れです。
ルイ・コスタはもちろんDFが追いついてクリアできるようなやわなパスは出しませんし、気づいてから追いつけるほどインザーギのスピードは遅くはありません。

常に先手をとっているのはルイ・コスタとインザーギであって、後手を踏んだDFに残された道は、GKのミラクルセーブを祈ることくらいでしょう。

これを防ぐ手段は、インザーギが動こうとする場所をピンポイントでカバーすることくらいですが、これができるのはネスタ、カンナヴァーロ、マルディーニなどの超一流だけです。
マルディーニは限界説も囁かれていますが、確かにスピードの衰えは否めませんが、読みは相変わらず超一流です。

その後ついに、というかやっとバイエルンの猛攻が始まりました。相変わらず鬼気迫るものは感じられませんでしたが、ジーダを脅かすには十分な攻撃でした。70分前後にはピサロ、クフォーがあわや同点という決定機を迎えましたが、共に惜しくも外れました。

バイエルンこの試合最大の決定機だったのは、75分前後に訪れたエウベルのヘディングシュート。惜しくもクロスバーを叩き、そこに確かピサロに代わって入ったサンタクルスだったと思いますが、クロスバーから跳ね返ってきたボールが彼の目の前に来ましたが、ジャストミートできずこのドフリーを決めることができませんでした。

その後も完全にバイエルンのペースでしたが、ミランはなんとか耐え抜いて試合はこのまま2-1で終了。死のグループで3番手と見られていたミランがなんと4連勝で早くも1次リーグ突破。文句なしの強さです。

バイエルンもここまでかと思われましたが、なんとランスが3-1でデポルティボに完勝。バレロンが離脱してから一気に調子が狂ったデポルティボ。各チームには代えのきかない選手というのがいるものです。デポルティボにバレロンの代わりはいません。彼が帰ってくるまでデポルティボは粘れるでしょうか。

ランスのおかげでバイエルンは首の皮1枚残りました。それでも、バイエルンは4試合を終わってわずかに勝ち点1、ランスにも勝ち点3差をつけられ最下位です、崖っぷちなことに変わりはありません。

さて、グループGの話をしたところで、ついでに2日目から他の組の結果について。

まずグループEでは小野の所属するフェイエノールトは一番大事だったディナモ・キエフとのアウェーゲームで0-2と完敗。ユーべとはアウェーでやるだけに苦しくなりました。

そのユーベは、ニューカッスルの意地の前にチャンピオンズリーグ初黒星。ニューカッスルも夢をつなぎました。
1位から最下位までの勝ち点差は4。すべてのチームに可能性が残っています。

続いてグループFでは、ようやく調子が出てきたレバークーゼンがマッカビ・ハイファを2-1で下し、勝ち点を6に伸ばし2位に浮上。
マンチェスターUはオリンピアコス相手に2点をリードするも、ファーガソンさすがに相手をなめたのか、ベッカムとギグスを下げチャドウィックとフォーチュンを投入。しかし、こういったなめた真似をすると大概バチが当たるものです。立て続けに2点を取られ同点に。

しかし、最後はスコールズが伝家の宝刀ミドルを叩き込みなんとか2-3で勝利。勝ち点を12に伸ばし、2次リーグ進出を決めました。
リーグ戦ではイマイチのマンUですが、チャンピオンズリーグでは4試合で14得点と大爆発しています。

続いてグループGは先ほど書きましたので、グループH。まずはクラブ・ブルージュがホームでガラタサライ相手に先制、いったん追いつかれたもののその後2点取って3-1で快勝。ガラタサライを抑えてなんと2位につけています。

今シーズンこそはと思わせながらも相変わらず寒い内容のバルセロナは、勝ち点3を取ったことがすべてという試合ながらも、ロコモティフ・モスクワを1-0で下し、こちらも4連勝。2次リーグ進出を早くも決めましたが、このままの内容では結果は見えています。

そして遡って1日目。

まずはグループAでは、なんとオーゼールがアウェーでアーセナルに勝利。2点を先行し、そのあとアーセナルの猛攻を受けながらもカヌの1点のみに反撃を抑え、なんとそのまま勝ってしまいました。ルーニーにプレミアリーグでの無敗神話を止められたアーセナル、ここらで少し一息といったところでしょうか。それでも、すでに勝ち点9をゲットしており何の問題もありません。

もう1試合は、ドルトムントがホームでPSVと1-1のドロー。ここで勝って勝ち点を9に伸ばしたかったドルトムントでしたが、勝ち点は7にとどまっています。それでも、ドルトムント2位抜けの可能性は高いでしょう。

続いてグループB。トップバレンシアはアイマール、ビセンテなど主力を休ませながらもアウェーでしっかりと勝ち点1をゲット。終了間際に追いつかれる悔やまれる内容でしたが、本気で粉砕しにいくならベストメンバーで挑んだでしょうし納得の勝ち点1、勝ち点を10に伸ばしています。

もう1試合は、リヴァプールがアウェーでスパルタク・モスクワを0-3で粉砕。しかも、オーウェンのハットトリックです!リヴァプールもなんとか2位抜けできそうです。

続いてグループC。ホームでマドリーと3-3で引き分けたAEKアテネ、今度はなんとサンチャゴ・ベルナベウで2-2の引き分け。4試合で4分。文句なしに一番しぶといチームはこのチームでしょう。

ローマはなんとオリンピコでゲンクにスコアレスドローとファンからもブーイングが飛ぶ最悪の試合をし、気がついてみたらローマとAEKアテネの勝ち点差はわずか1。ローマはこのしぶといAEKアテネを振り切れるでしょうか。

最後にグループDでは、インテルがアウェーでリヨンと3-3のドロー。リヨンの攻撃力は本物です。それにしても、インテルはとんでもない試合が続きます。3失点とはなんとかならないんでしょうか・・・。カンナヴァーロを遠征に連れていかなかったのが大きく響きました。

もう1試合アヤックスVSローゼンボリも1-1のドロー。この結果勝ち点7のリヨンがトップに立ち、勝ち点5のインテルとアヤックスが続き、最下位ローゼンボリも勝ち点3。

インテル圧勝と言われていたグループDでしたが、一番の激戦区となってしまいました。チャンピオンズリーグでは孤軍奮闘のクレスポがこの日も2得点と一人気を吐いていますが、どうもチャンピオンズリーグではスクデットに比べてモチベーションが低いような・・・。確かに寸前で逃したスクデット奪取が至上命令ですが、チャンピオンズリーグもせめてベスト8くらいにはいってほしいものです。

今回は何をおいてもルイ・コスタのスルーパス。パーフェクトでした・・・。

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