No.5 風になった男ライアン・ギグス

今回も大好きな選手紹介。ロベルト・バッジョの回に、敬意を込めて単独登場と書いておきながら前回のルイ・コスタも結局単独での登場となってしまいました。予想外にルイ・コスタの話が長くなってしまったからでした。今回も単独になりそうな予感です。

今回の主役はマンチェスター・ユナイテッドの回にも登場した、ウェールズ代表ライアン・ギグス。「世界最高のドリブラー」、この言葉を聞いてみなさんは誰を想像なさるでしょうか。恐らく多くの方がルイス・フィーゴの名前を挙げると思います。多くのマスコミにおいてもそうです。確かに、彼が最高のドリブラーであることには何の異論もないし、嫌いでもありません(顔を除く)。

しかし、誰が何と言おうと「世界最高のドリブラー」はライアン・ギグス、彼をおいて他にはありえません。先日、雑誌Sportiva7月号において彼のことを「世界最高のドリブラー」と書いてありました。それだけでこれからもこの雑誌を応援します。

フィーゴとギグス、好みの問題かもしれません。同じドリブラーでもタイプが全く異なるからです。一言で言えば「技」のフィーゴ、「スピード」のギグスと言った感じでしょうか。

フィーゴの抜き方は、ボールを持った状態で相手と向き合い、ボールをその場に置いたままステップでフェイントをかけ、相手を動かしておいて「かわす」というもの。「抜く」というより、まさに「かわす」という言葉が当てはまります。そして、かわすという言葉からもわかるように、フィーゴが抜く方向は多くの場合横。

それに対してギグス、彼の場合相手と向き合った状態では、多くの場合すでに勝負はついています。すでにボールは彼の足元にはありません。そして彼の場合「かわす」のではなく「置き去りにする」、この言葉がまさにぴったり。まるで一陣の風が吹いたかのような刹那の勝負。そして、抜く方向はまず間違いなく縦。

このように両者はまったくタイプが異なります。ここからは好みの問題ですが、自分はギグスの抜き方の方が圧倒的に好きです。見ていて気持ちがいいですし、DFとしても横に抜かれても急いで戻れば追いつく時もありますが、ギグスに置き去りにされたDFは追いつくことはあり得ませんし、戻った頃にはもうシュートかクロスが放たれています・・・。

そしてもう一つ、ギグスに肩入れする理由は、父の祖国イングランドを選ばず、あえてウェールズ代表を選択したこと。イングランドを選べばW杯にも出場できたのにです。

アル中だった父を嫌いウェールズを選択したとのことですが、イングランド代表に入っても文句なくスタメンをはれます。世間がW杯で騒いでいる時、彼はいつもW杯とは無縁です。マンチェスターのチームメイトがみんなW杯に行っている間彼だけはその舞台に立つことすらできません。今回はファン・ニステルローイ(同じく出場できないオランダ代表)という仲間ができて少しうれしそう(笑)。

しかし、前述のSportivaに「イングランドの優勝が一番うれしい」「ウェールズを選んだことに少しも後悔してないし、生涯ずっと誇りに感じて生きていける」という彼の言葉が載っていました。

それでこそ男の中の男。プレーだけでなく、一人の人間としてもほんとうに尊敬に値する素晴らしい選手です。みなさんでギグスを応援しましょう!

サッカー日記の最新記事4件