No.58 “フォルハ・セカ”炸裂!

今回の話題は、ついに終了したチャンピオンズリーグ1次リーグの最終節と、組み合わせが決まった2次リーグの展望について。

しかし、それよりもまず書かなければいけないのは、なんといってもベティスのMFマルコス・アスンソン。サッカー日記No.51『世界最高峰の闘い』で“フォルハ・セカ”と“スコーピオン”の使い手として紹介したあのアスンソンです。

そのアスンソン、必殺のFK“フォルハ・セカ”のボールの落ち具合はいつも完璧だったんですが、運だけがなく散々バーやポストを直撃していました。
しかし、ついにその時がやってきました。

この前のアウェーでのバレンシア戦の70分、アジャラの相変わらずのえぐいタックルで味方が倒されて得たゴール正面やや左の直接FK(アジャラは当然のごとくイエローカードですが、あのアジャラがなんと今シーズン1枚目のイエロー、これは奇跡です!)、距離は23メートルくらいでしょうか。
バレンシアの選手たちもアスンソンのFKの恐ろしさは百も承知で壁はずらりと7枚、その壁で自らの右側を切って自らは左に寄って待ち構えたのはスペイン代表の正ゴールキーパーカニサレス、舞台は整いました。
そして、スタジアムには一瞬の静寂が…。

いつものごとくたった2歩の助走から蹴ったアスンソン、ボールは壁の一番高いところ左から3人目の上を通過したかと思った途端、ゴールに向かうその直前で急激に落下、さすがカニサレスも素晴らしいジャンプを見せましたが、ボールは彼の手に触れることもなくゴールに突き刺さりました。

“フォルハ・セカ”炸裂!あれだけの壁を作り、そしてあのカニサレスをもってしても止められなかったわけで、決められた方にはなんの非もないでしょう。決めた方を褒めるしかないとはまさにこのことです。さすがにバレンシアのホームゲームということもあり、スタジアムは熱狂というわけにはいきませんでしたが、これがベティスのホームゲームだったらとんでもない騒ぎになっていたことでしょう。

“枯れ葉のように舞う”という意味の“フォルハ・セカ”、名前に恥じない芸術的な弾道でした。まだ彼のFKを見たことのない方はぜひご覧になってみてください。必見です!何もFKはベッカムだけではありません。

さて、アスンソンの話はこれくらいで、チャンピオンズリーグの話に。見た試合はもちろんアヤックスvsインテル、まだ1チームも進出チームが決まっていないDグループの大一番です。

カンナヴァーロを欠くインテルですが、2トップにはいつものようにクレスポにヴィエリ、攻撃的な中盤にはセルジオ・コンセイソンにモルフェオ、「勝ちに行く」と言っていたクーペル監督の言葉はただの情報戦ではありませんでした。

一方のアヤックスは、キャプテンのキヴを欠くだけでも痛いですが、イブラヒモヴィッチまで欠いてやや苦しい布陣。

しかし、それを補ったのがスタンドの大歓声。試合前から大量の発煙筒、信じられないほどの紙ふぶきと、雰囲気は最高潮。

それにしてもアヤックスの選手若すぎです!DFラインなんか平均年齢20歳にも満たないでしょう。それでも選手育成にかけては世界に名高いアヤックス、若い頃から徹底的に鍛えられています。とても10代とは思えない見事なプレーぶりで、ヴィエリ、クレスポといった世界的スター相手になんら臆するところがありません。

先に決定機を迎えたのはアヤックス、前半8分、右サイドから上がったクロスボールに対してなぜか完全にフリーになっていたミドがドンピシャのヘディング。我等が守護神トルドがまたもや奇跡的なセーブでこれを弾きましたが、詰めていたファン・デル・ファールトにこぼれ球を押し込まれアヤックス先制!

のはずが、完璧なゴールでしたが、ラインズマンの判定はなぜかオフサイド。オフサイドでもなんでもなく完璧なゴールでした。ユヴェントス戦でもコリーナさんに助けられたインテルですが、この日もツキがありました。ラインズマンありがとう!

前半は若さに溢れるアヤックスが圧倒し、シュート数は11:3。ハイライトシーンもすべてアヤックスの攻撃シーンでした。それにしても、インテルDF陣はサイドからのクロスボールに対してあまりにもフリーで撃たせすぎ。アヤックスのFWに決定力がなかったから助かったものの、インザーギ相手だったらことごとく決められています。マテラッツィ頼りなさすぎ…。

圧倒的に押されていたインテルでしたが、後半に入った50分、機を見て中央を攻めあがったディ・ビアージョから前線のクレスポへパーフェクトなフィード。これまで若きDF陣に封じ込められていたクレスポでしたが、ここは格の違いを見せつけるかのように一瞬にしてマークを外すと、ゴール左隅にワールドクラスのヘディングを叩き込みインテル先制!

そのわずか2分後、この試合まったくといっていいほどボールがつながらなかったインテルが初めて素晴らしいつなぎを見せ、クレスポ→モルフェオ→クレスポ→ヴィエリとほとんどダイレクトでつなぎ、ヴィエリのクロスボールをまたもやクレスポがヘディングでゲット!

あんなに圧倒していたアヤックスでしたが、この立て続けの2失点に動揺したのか、そこからはインテルを脅かすような反撃は見られませんでした。あとはインテルは時間を潰すだけ。

それでも、80分にディ・ビアージョが素晴らしいシュートを放ち、ボールはクロスバーを直撃。跳ね返ったボールがGKの背中に。普通はこれで背中に当たって入るんですが、背中に当たったボールはなぜかクロスバーを越えていきました。ちょっとあり得ない軌道で、ディ・ビアージョにとっては運がありませんでした。

終了直前に不運な失点を喫したものの、何の問題もなく2-1でインテル勝利。終わってみれば、インテル1位通過です。セリエAではサンシーロでウディネーゼ相手に今シーズン初の黒星を喫したインテルでしたが、その次の試合としては十分な結果。確かに内容は相変わらず問題ありですが、この試合に限っては結果が全て。

Dグループのもう1試合ローゼンボリvsリヨンがなんと引き分けだったおかげで、アヤックスも負けながらも2次リーグ進出決定。大健闘を見せていたリヨンでしたが、最後の最後に力尽きました…。

さて、他のグループですが、Aグループは前節の段階ですでに勝ち抜けを決めたいたアーセナルとドルトムントにとってはただの消化試合。PSVはなんと最下位に沈みUEFAカップにも回れなくなってしまいました。

Bグループでは、FCバーゼルとリヴァプールの大一番。引き分けではバーゼルが勝ち抜けでリヴァプールにとっては勝つしかない試合。ところが、ホームのバーゼルが立ち上がりから攻勢をかけ、前半30分までになんと3-0。しかし、このままでは終われないリヴァプール。後半鬼気迫る反撃を開始し、マーフィー、スミチェルが立て続けに決めると、最後はオーウェンが決めてなんと追いついてしまいました。それでも、リヴァプールの反撃もここまでで、3-3で試合は終了。リヴァプールはイングランド勢では唯一の敗退、UEFAカップに回ることになりました。

もう1試合は、メンバーを落としながあらもバレンシアがスパルタク・モスクワを3-0で一蹴。バレンシア、なんと勝ち点を16にまで伸ばしダントツの1位。イギリスのブックメーカーのオッズでも錚々たる顔ぶれを抑えマドリーについで2位につけているバレンシア、文句なしに強いです。
守備が鉄壁なため、まず大崩れすることがありません。先ほど登場しましたアジャラをはじめ、ペジェグリーノ、さらに“フィーゴの天敵”カルボーニと、酸いも甘いも噛み分けた百戦錬磨のDFライン。
それだけでも十分に強いですが、中盤の底を支えるのがスペイン代表でもコンビを組むバラハとアルベルダ、さらにベティスのホアキンとスペイン代表の両翼と担う左サイドの快速ウイングビセンテ、アイマールがトップ下に君臨し、トップにはここにきて一気に評価急上昇のノルウェー代表カリュウ、ベンチにはあのキリ・ゴンザレス。2年連続でチャンピオンズリーグのファイナルに出ただけのことはあります。
決勝のような大一番では得点力に欠けるためあと一歩届かないバレンシアですが、他のチームにとって、決勝までは一番当たりたくない相手でしょう。

次にグループCでは、モチベーションゼロのマドリーがゲンクと1-1のドロー。そしてここまで5引き分けと脅威の粘りを見せてきたAEKアテネ。オリンピコでのローマ戦、これに勝てば2次リーグ進出でしたが、ローマはなんとかこれを1-1のドローで退けました。結果AEKアテネはなんと無敗にも関わらず敗退…。

グループDは先ほど書きましたので、続いて2日目にいってまずはグループE。3連敗からの2連勝で奇跡に夢をつないだニューカッスル。勝ちぬけの条件はアウェーでフェイエノールトを撃破し、さらにすでに勝ち抜けを決めているユヴェントスがメンバーを落としながらもディナモ・キエフ相手にアウェーにも関わらず負けないこと。しかし、まずはユヴェントスが主力を完全に休ませながらもアウェーでディナモ・キエフに1-2で勝利。さらにニューカッスル自身もロスタイムにゴールを決めるという劇的な試合を2-3で制し、3連敗から奇跡の復活!そして小野のフェイエノールトは最下位に沈み、UEFAカップにも回れなくなってしまいました。

グループFではマンU、レヴァークーゼンが順当に勝ち抜けを決めましたが、驚くべきはイスラエルのマッカビ・ハイファがチャンピオンズリーグの常連ギリシャのオリンピアコスを抑えて3位に入りUEFAカップ行きの切符をゲットしたこと。これは、イスラエルにとっては記念すべきことでしょう。

続いてグループGでは、デポルティボがサンシーロで先制されながらもディエゴ・トリスタン、マカーイのゴールで逆転勝ちをおさめ2次リーグ進出決定。バイエルンの最下位はすでに決定していたのでランスがUEFAカップに回ることとなりました。

最後にグループHでは、バルセロナがカンプ・ノウでガラタサライを3-1で破りなんと6戦6勝の勝ち点18。これは史上4チーム目の快挙らしいです。もう1試合は前節まで最下位だったロコモティフ・モスクワがホームでクラブ・ブルージュを破り一気に2位に入り土壇場で2次リーグ進出決定。2位は堅いと言われていたガラタサライはなんと最下位に沈んでしまいました。

そして昨日、注目の2次リーグの組み合わせが決まりました。どのグループも豪華な顔ぶれで、2次リーグで当たるのがもったいないような好カードの連続です。

まずはグループA。バルセロナ、インテル、レヴァークーゼン、ニューカッスル。インテリスタにとって楽なグループではありませんが、あとで他のグループを見てもらえばわかりますが、これでもまだマシな方。それだけのメンバーがどこのグループにも揃っています。ここは順当に行けばバルセロナとインテルでしょうが、両チームとも波が激しいだけに、他の2チームもつけ入る可能性は大いにあるでしょう。

続いてグループBはバレンシア、アーセナル、ローマ、アヤックス。ここは厳しいです。バルセロナやインテルのように、強い時はとことん強いが駄目な時はとことん駄目というチームと違って、バレンシアもアーセナルもローマも、安定感という意味では各国リーグでもトップクラスです。あのアーセナルが第1シードでないだけでもすごいことですが、ここはどの試合も手に汗握る接戦でしょう。その中でもバレンシアの安定感は一つ抜けているような気がします。

次にグループCはレアル・マドリー、ACミラン、ボルシア・ドルトムント、ロコモティフ・モスクワ。マドリーとミランは早くも激突です。そしてこの両チームはんと初戦の26日にいきなりサンシーロでぶつかります。いきなりの頂上対決必見です!それでも、両チームにとってグループBに比べればまだましな方でしょう。

最後にグループDはマンチェスター・ユナイテッド、ユヴェントス、デポルティボ・ラ・コルーニャ、FCバーゼル。ここも厳しい。応援するのはもちろんマンUですが、インテルが来てくれた方がはるかにましで、ユヴェントスはバレンシアと並んでもっとも当たりたくなかった相手。さらにデポルティボもバレロンが帰ってくるだけにまったく互角。オールド・トラフォードで確実に勝ち点3が取れるか、そこが鍵でしょう。さらに初戦のFCバーゼルとのアウェーゲームでもなんとか勝ち点3を取ってきたいところです。

それにしても、どのグループも錚々たる顔ぶれ。イタリアとスペインは両国とも4チームとも残っており、イングランドもリヴァプールだけは敗退してしまいましたが、3チームが残っています。バイエルンが敗退したことを除けば、久々に豪華なメンバーが揃いました。もし順当に第1シード、第2シードが勝ち抜いたとしたら、ベスト8はとんでもなく豪華なメンバーになり、準々決勝からどの試合も決勝戦並の試合になりそうです。

応援するのはインテルとマンU。もし両チームが対戦するようなことになれば、その時はもちろんマンUを応援します。頑張れギグス、そしてスコールズ。役者が揃った2次リーグ、本当の勝負はここからです。

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