TVの放映権問題で揺れに揺れていたセリエAもついに開幕。放映権料が決まらないのは今年に限った話ではなく、それがここまでこじれた背景にあったのは、ガッリアーニ(リーグ連盟会長兼ミラン副会長)VSフランコ・センシ(ローマ会長)という構図。
開幕が遅れるなどということは、ファン離れが進むだけでいいことは何もありませんが、ワイドショー的見方をすればこの問題は結構おもしろい話でもあります。まずは、その話題について少し。
放映権料でペイTVと合意額に達しなかったのは、“プロヴィンチャ”と呼ばれるローカルクラブたち。バッジョの属するブレシアなどです。彼らにとってはファン数も少ないため、TV放映権料は死活問題でもあります。
しかし、ペイTV側にとれば彼らは「おいしい」存在ではありません。そこで揉めに揉めるわけです。
いつもならプロヴィンチャの側が泣き寝入りして終わるだけなのですが、「この問題が解決しない限り、9月1日開幕を断固拒否する」と、助っ人を名乗り出たのがセンシ。
とはいっても、転んでもただでは起きないというのが顔にも現れているセンシのこと、同情からこのようなことをしているのでは決してありません。理由はただ一つ、リーグ連盟への嫌がらせ。その連盟の会長が宿敵ガッリアーニなわけです。
ここらへんでワイドショー的な構図が見えてきます。ガッリアーニはユヴェントスとも組んで、連盟の主導権を握ってきたのです。このミラン、ユヴェントスの「北イタリア連合」のことを、「南イタリア」ローマのセンシが面白く思うはずがありません。
そこで、自分も連盟に入り込もうとセンシの暗躍が始まりました。そして、前述のプロヴィンチャを味方につけ自ら先の新会長選に立候補したのです。
しかし、善戦空しくミラン、ユーヴェ連合の前に敗れ去りました。
そこで、「ここでいっちょイジワルでもしてやるか、フフフ・・・。」と思ったかどうかはわかりませんが、今回プロヴィンチャの放映権料問題に口を出し、開幕を遅らせて連盟に失態を演じさせるというある意味での逆襲に成功したわけです。
センシにとっては満面の笑みでしょうが、ただでさえセリエAの権威が失墜しつつある中で、こんなことではますますセリエAの価値が下がるというもの。ワイドショー的ネタはこれくらいで止めてもらって、サッカーの内容で勝負して欲しいです。
それでも、この“北”と“南”というのは、実際にイタリアに行ったことがあるだけに肌で感じられました。
ローマとミラノは両方とも訪れましたが、ローマの人たちは、「Ciao!」の一言と、笑顔さえあればすべてが通じてしまうような陽気な人々でした。
それに対し、ミラノは街自体がビルが立ち並ぶ東京みたいな感じでしたが、街を歩いている人々もまじめなサラリーマンという感じでした。
これは、イタリアが一つの国家になったのがそう遠い話ではないということからは、不思議ではないのかもしれませんが、両者とも、独立を叫んでいるほどの地域としてのライバル意識を持っているようです。
それが、サッカーのこととなったらさらに火がつくというのもわかるにはわかります。
さて、話がだいふ脇道にそれたところで、肝心のサッカーの試合ですが、我がインテルは順調なスタートを切れました。
スタメンは、まずDF陣はなんとカンナヴァーロが右サイドバックでの出場。それでも右からカンナヴァーロ、コルドバ、マテラッツィ、ココと並ぶDFラインは一時のざるのようなDFラインを思えば錚々たる顔ぶれ。カンナヴァーロはもちろんのこと、なんといってもココの加入が大きいです。これでようやく左サイドも安泰です。これでさらにガマーラもいるわけで、リーグトップクラスのDFラインがついに完成しました!
中盤は右からサネッティ、ダルマ、ディ・ビアージョ、レコバ。アルメイダを使ってくるかとも思われましたが、クーペルの選択はお気に入りダルマでした。この試合でのダルマは抜群の動きを見せてくれました。攻撃の起点はほとんどダルマからでした。
2トップは、ヴィエリに獲得したばかりのクレスポ。ロナウド問題で散々に揺れましたが、結果的にはロナウドを出してクレスポを取れたなんて、十分におつりがきます。時に人間離れしたプレーを見せるロナウドですが、コンスタントなレベルという意味ではクレスポの方が間違いなく上。“迫力”という点でも、今の2トップの方があるように思えます。
これでレコバがベンチだったらどうしようと思っていましたが、クーペルは「3人は共存できる」と、3人同時にピッチに立たせてくれました。ヴィエリ、クレスポ、レコバ、このコンビの破壊力はほんとに世界レベルです。
ロナウド、ラウル、ジダンと比べても何の遜色もありませんが、3対3なら互角でしょうが、向こうはさらにフィーゴにロベルト・カルロスまでいるので、チームとしての破壊力では譲らざるを得ません。
それでも、この3人でゴールを量産して欲しいです。
そして、今シーズンのインテルの幕を開けたのは、“重戦車”ヴィエリでした。誰が初めに“重戦車”と言ったのかわかりませんが、ほんとにぴったりの表現です。ダルマのクロスもロベルト・カルロス顔負けの弾丸クロスでした。まさにブラボ~!なゴールでした!
一方、宿敵ミランはアウェーにも関わらず3-0での圧勝。インテリスタとしてはやばいです。ミラン強すぎます・・・。シェフチェンコを欠き、チャンピオンズリーグに向けてリヴァウドをベンチスタートさせながらも、攻撃陣には、インザーギ、トマソン、ルイ・コスタ、セードルフ、ピルロ、反則です・・・。これでシェフチェンコが帰ってきてリヴァウドが頭から出たらどうなってしまうんでしょうか?インテルはどうしても例の3人だけという感があるので、ミランのこの攻撃陣はインテルでもかないません。
ネスタが加入したことにより、安心して攻撃できるという強みもあります。インテル以上に、ミランはほんとにパーフェクトな補強をしました。
これで、サンシーロでのミラノダービーはほんとに必見の試合になりました。
しかし、確かにミランは黄金時代再来を予感させるくらいのメンバーが揃ってますが、インテルだって負けません。今年こそスクデットを取ります!
セリエA自体も、「世界最強リーグ」の肩書きを取り戻すためにも、もっともっとレベルの高い試合を見せてくれないと困ります。この前、リーガ・エスパニョーラの方がはるかに面白いと書きましたが、確かにその通りなんですが、イタリア勢が強くないとヨーロッパのサッカーシーンは面白くなりません。チャンピオンズリーグではここ数年早々と敗退しているイタリア勢ですが、インテル、ミランは、攻撃で他の国を圧倒できるだけの陣容を揃えています。ここらへんでそろそろ、“負けない”サッカーから、“勝つ”サッカーへの変貌を遂げて欲しいものです。