初回はイタリアでのサッカー観戦についての思い出から。
1999年の12月、ツアーでイタリア旅行に行った折、ローマでの自由時間に、現地の人に今日試合があるよと教えられ、ツアーの他の人達がスペイン広場など有名な観光地に向かう中、こんなチャンスはめったにないと、一人サッカー観戦を決意。
しかし、ローマの街中に一人取り残され、唯一の頼りはJTBが出している「ひとり歩きのイタリア語自由自在」という薄っぺらい本だけ。とりあえずタクシーに乗ろうと思ったものの、ぱっと見ただけでも怪しいタクシーが半数以上と思われるほど、正規のタクシーがなかなか見つかりません。現に旅行中一度ひっかかりましたがすぐに降りました。
それでやっとタクシーを拾い、一言「スタディオ オリンピコ」。運転手はわかってくれました・・・。無言でタクシーが進むこと数十分、ようやく到着。でかい!とにかくでかい!第一印象はそれでした。
問題はここから、なんせチケットがありません。生まれて初めてダフ屋という方と話をするはめに、しかもイタリア語で。ここでさっきの本が大活躍。なんとか単語をつなぎ、10分くらいの格闘の末、チケットをゲット。どれだけぼられても絶対に見るぞ!と思っていたので1万円くらいまでは覚悟していましたが、2000円もしませんでした。Jリーグを生で見たことがないので、日本がどれくらいするのかわかりませんが、予想以上に安くてびっくり!安すぎて入れるのか不安になりましたが・・・。
なんとかスタジアムに入ったものの、困難は続き、そのチケットが自由席なのか指定席なのかもわからないため、どこに座っていいかもわかりません。ということで適当に座ることに・・・。注意されたら逃げればいいと思っていましたが、イタリア人はそこらへんは寛容なようです、とりあえずサッカーが見れれば席なんてどうでもいいということでしょうか。
次なる問題は、座った席が、ホームのラツィオサポーターの中の一角とはいえ、すぐそばにフィオレンティーナの応援団。こっちは7、8万いるといっても向こうも5000人近くいます。そして、数で勝てないから、とにかく騒ぐ、ひたすら騒ぐ。
しかし、そこはイタリア。彼ら5000人の周りには身長を遥かに超える高さの鉄条網(この表現がまさにあてはまります)がはりめぐらされ、その周りをさらに数百人の警備員がびっしりと囲んでいます。まさにカテナチオ(イタリアの鉄壁の守備を指す時よく使われる、鍵をかけるという意味の言葉です)。
しかし、彼らも黙っているわけもなく、さすがに鉄条網を乗り越えようとすると捕まるからか、人の変わりに物が飛んできます。ゴミ、食べかす、あげくの果ては発煙筒(これまた生まれて初めて見ました)。サッカーの試合自体を見ているより、観客を見ている方がはるかにおもしろい!かなりの危険と隣合わせですが・・・。
余談が長くなったところで肝心の試合の話。そうです、1999年ということは、フィオレンティーナには、バティストゥータもルイ・コスタもいます。
まずはルイ・コスタ。上手いとかいうレベルを超えています・・・。同じ人間がやっているとは思えません。ボールの扱いだけなら、ジダンの方がうまいかもしれません。でも、視野、パスを出すタイミング、そしてなんでそこが通るの?と不思議でならない針の穴を通すスルーパス。一瞬にして彼のプレーの虜になりました。
続いてバティストゥータ。彼には今の日本のFWが必要としているすべてが備わっていました。強さ、高さ、ボールを持ったらとにかくゴールに叩き込むというその姿勢、そして、何といっても彼がいるだけでゴールが入りそうな予感がするという点です。
最近の日本代表の試合を見ていて1番腹が立つのは点が入りそうな気配すらしないことです。サッカーは点を入れない限り負けはしないが勝てないスポーツ。3大会連続PK負けのイタリアがいい例ですが。日本代表についてはまた別の機会に書きます。
それで、バティストゥータ、彼こそまさしくストライカーという言葉を体現しています。昔、テレビで現ローマ監督のカペッロがACミランの黄金期(バレージがいた頃です)に、FWは点を取るためにピッチにいるんだと、中盤まで下がってきたFWに激怒していたのを見たことがありますが、相手ゴールに1番近いところにいるからこそ、誰よりもゴールを奪いやすいはずですし、点さえ取れば文句も言われません。そういう意味でバティストゥータはまさにFWです。彼の頭の中にはいかにしてボールを相手ゴールに叩き込むか、それしかないように思われます。この点はほんとに日本のFWに見習ってほしいものです。
しかし、その彼も今度のワールドカップではおそらくクレスポの控え。まああのサビオラが代表に入れないくらいのレベルなので次元の違う世界ですが。ベンチに座らせておくくらいなら日本にわけてください・・・。
フィオレンティーナ側の話ばかりしたところで、試合はラツィオの完勝。おそらくラツィオの応援歌らしき歌をスタジアム中が歌いだした時にはほんとに鳥肌が立ちました。なんといっても10万人近い人数が熱狂するというのは、この世のものとは思えないくらい異常な熱気です。そこらへんで発煙筒もたくさん煙を上げているので、温度はさらに上がっているはず。
あとでガイドさんに聞いたところ、ラツィオということはローマの人々。そしてフィオレンティーナということはフィレンツェの人々なわけですが、何で彼らがそこまで対抗心を露にするかというと、150年くらいまでは、イタリアは今みたいに一つの国家ではなかったわけで、彼らは、自らの地方に相当なプライドを持っているようです。実際イタリアに行ってみるとわかりますが、南部のローマの人達と、北部のミラノの人達ではまったくタイプが違います。そういうわけで、フィレンツェ人の魂があの発煙筒となって表れていたのでしょう・・・。
そんなこんなでずいぶんと長くなりましたが、サッカー日記コーナーの開設です!