「復讐の相手すら覚えていないのに、何の意味があるんだ?」
「彼は覚えてないかもしれないが、俺はやる、さあ行くぞ」
シャンゼリゼ通りにある“兄弟”という名のレストランを夢見て、組織の掟よりも友との約束を選んだ男たちは、たった3人で敵うはずもない相手に戦いを挑む。
2010年第1弾はこれしかないでしょう、ジョニー・トー監督最新作『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』です。
まだDVDが出たばかりですし、未見の方も多いと思いますので、今回は簡潔に。
話的には目新しいことは何もありません、みんなが英語を喋っていてジョニー・アリディが主演ということ以外、いつものトーさん映画です。
特に、『エグザイル/絆』とは役者も設定も映像もかなり被っているので、新鮮味はありません。
でも、いいんだなぁこれが。
復讐の手伝いを頼んできた男の記憶はどんどん薄れ、復讐の相手はおろか、殺された家族のことすら覚えていない有様。
損得勘定でいけば、彼らが約束を守る必要なんかどこにもありません。
でも、力になると約束した、パリのレストランと大きな家を夢見させてくれた、共に命を懸けて戦った、美味しい料理とワインを振舞ってくれた、兄弟と呼んでくれた。
それだけだ。でも、それ以上何がいる?
子供たちと無邪気に戯れるジョニー・アリディ。
歩き出すアンソニー・ウォンの横で、微かに微笑むラム・カートン。
『ワイルドバンチ』なら「Let’s go.」「Why not?」でしょうが、それすら必要ありません。言葉はいらない。
ここまでは素晴らしかったんですが、この後がちょっと微妙。
アンソニー・ウォンと比べちゃうとジョニー・アリディがいまいち弱いというのもありますが、“説明”しすぎでしょうワイ・カーファイ。今回は脚本はワイ・カーファイの単独クレジット。
ジョニー・アリディとヤムヤムの“すれ違い”は素晴らしいですが、その後のジャケットのくだりが…。
先ほど、映像的に『エグザイル/絆』と被っているという話をしましたが、ちょっと新しい映像も。
メルヴィルの名前を口に出していただけのことはあり、“メルヴィル・ブルー”が見れましたね。
序盤のハイライトの一つ、地下道での緊迫した一触即発の場面。
あと、“ただいま、男だらけの放課後”は今回は、“自転車撃ち”。
『夕陽のガンマン』で帽子を撃ち続けて地面に落ちないように宙を舞わせるというのがありましたが、あれの自転車バージョン。
先ほども書きましたが、メインがジョニー・アリディになってからは、正直弱い。これがアラン・ドロンだったらというのは、言わぬが花でしょう。
ただ、アンソニー・ウォンたちが活躍する前半は文句なしに素晴らしい。
脇役にいつものメンバーが勢ぞろいなのも嬉しいですね。敵のヒットマンだったり、闇医者だったり、トーさん映画を見慣れている方には、ニヤリとする顔ぶれです。
なんかいまいち感想の歯切れが悪いのは、先に『エグザイル/絆』を観てしまっているのが大きいと思います。
あの映画を観ずにこれを観ていればもっと絶賛していると思うんですが、あれを観てしまっている今となっては、もっと凄いものを求めてしまうんですよね。
他の多くの映画よりは十分素晴らしいので、贅沢な話ではあるわけですが。
ただ、冒頭に書いた3人の殴りこみあたりまでは、今回も痺れまくりですね。
先日から邦題案の募集をしていますが(→こちらからどうぞ)、管理人としては『ヴェンジェンス/復仇』というのを候補に挙げさせていただきましたが、映画を観た上でもう一度挙げるなら、『ヴェンジェンス/約束の記憶』というのはいかがでしょうか?
確かに“復讐”がメインの映画ではありますが、“ヴェンジェンス”“復仇”と同じ意味を二つ重ねるよりも、大きなキーワードの一つ“記憶”はぜひ入れたいところ。
娘との約束、“兄弟”との約束、その記憶も次第に薄れていく。その先に男が見たものとは…。
そんなわけで、映画をご覧になった上での、さらなる邦題案の応募もぜひお願い致します。
[原題]復仇
2009/香港・フランス/108分
[監督]ジョニー・トー
[脚本]ワイ・カーファイ
[出演]ジョニー・アリディ/アンソニー・ウォン/ラム・カートン/ラム・シュー/シルヴィー・テステュー/サイモン・ヤム/チョン・シウファイ/マギー・シュー/ロー・ウィンチョン
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