『グエムル -漢江の怪物-』(ポン・ジュノ)

グエムル -漢江の怪物-

グエムルの小ささがいい。

普段あまり新作の感想は書きませんが、これは書かないわけにはいかないでしょう。
『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督の最新作、『グエムル -漢江の怪物-』です。

まだ公開されたばかりですので、軽く書きます。

グエムル -漢江の怪物-

社会への風刺もこの人の映画の特徴ですが、今回はかなり露骨。
オープニングからモロですし、それだけアメリカへの怒りが大きかったんでしょうね。

のどかな河岸の風景が一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、警察も、役人も、軍隊も、アメリカも頼りにならない中、さらわれた娘を救いに立ち向かうのは、ポン・ジュノ組のオールスターキャスト。

『殺人の追憶』とは逆にドロップキックを食らう側のソン・ガンホ、『殺人の追憶』の無機質な表情から一転、ちょっと太って感情豊かなパク・ヘイル、監督の並々ならぬこだわりのせいで、『ほえる犬は噛まない』に続いて今回もジャージ姿のペ・ドゥナ、いくら人の良さそうなお父さんを演じても、絶対に何かやらかすと思わせる『ほえる犬は噛まない』の怪しい警備員ピョン・ヒボン。
ポン・ジュノ組四天王見参。

グエムル -漢江の怪物- ソン・ガンホ ピョン・ヒボン パク・ヘイル ペ・ドゥナ

クストリッツァ映画はもはや“クストリッツァ映画”としかジャンル分けできないように、ポン・ジュノの映画もこの人だけのもの。
喜劇と悲劇がごちゃまぜになりながら、時に肩すかしを食らわしながら(ここは好みが分かれるところかも)、最後までぐいぐいと観客を引っ張っていく。

グエムルに立ち向かう武器が、JINROの空き瓶を改造した火炎瓶とアーチェリーというのもいい。
冒頭に書いたグエムルの小ささ(これがもっと大きかったら印象はまるで違う)と相まって、あくまでも日常の中の非日常なところがいい。

グエムル -漢江の怪物- ペ・ドゥナ

細かいところでは、お父さんが凄くいい話をしてるのに、ナミルとナムジュが全然聞いてなくて眠りこけてるシーンなんかいいですね。

ラストシーンは、解釈の分かれるところだと思いますが、劇中のあるシーンを思いだし、ぐっとくるものがあります。

そして、エンドクレジットが流れている間の、心の中に一発パンチをもらったような感覚。
あれこそがまさにポン・ジュノ印。

怪獣映画を撮ろうが、ポン・ジュノはポン・ジュノでした。

 

グエムル 漢江の怪物 HDエディション [Blu-ray]グエムル 漢江の怪物 HDエディション [Blu-ray]

[原題]괴물
2006/韓国/119分
[監督・脚本]ポン・ジュノ
[出演]ソン・ガンホ/ピョン・ヒボン/パク・ヘイル/ペ・ドゥナ/コ・アソン/オ・ダルス

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