『ホノカアボーイ』(真田敦)

ホノカアボーイ

エンドクレジットを見てびっくり。
素晴らしい映画もたくさんある一方で、そんなのドラマで十分だろ、わざわざ映画にするなよというしょうもない映画も多い近年の邦画。
その元凶ともいえる、某TV局の某プロデューサーの名前が。
ヒットドラマの映画化ばかりしてないで、もっとこういう映画も作って下さいよ、やればできるんですから。

いきなり愚痴から入ってしまいましたが、それだけこの映画が素晴らしかったということでもあります。

観に行った理由は、言うまでもなく、出演者に優ちゃんの名前があったから。
でも、最初の5分くらいであっさり退場。
しかも、全然代えがきく役で、蒼井優目当ての方は注意が必要です。

さて、この映画、主人公は映写技師見習いです。
住んでいるのも映画館。

この時点で、映画ファンとしてはもうニンマリなわけで。
ただ、『ニュー・シネマ・パラダイス』『カイロの紫のバラ』みたいな、“映画への愛に溢れた映画”というのとは少し違います。
映画館はあくまでも舞台の一つという感じです。

そして、な~んにも起きない映画です。
でも、こういう内容で2時間持たせるのが一番難しいことは、言うまでもありません。

“話”は問題ではないので、思いつくままに愛すべき物や人たちを。

割り箸と輪ゴムで作った鉄砲。

二人を繋ぐ糸電話。

ブルーベリー柄の下着。

むちゃくちゃ美味しそうなロールキャベツ。

ホノカアボーイ 岡田将生 倍賞千恵子

孫ほども歳が違う“ライバル”への嫉妬。

ちっとも気づいてもらえないお洒落。

あっけなく破れる淡い恋。

ギブスにう●ちの落書きがある、完治した日に喜び過ぎて再び骨折するドジな映写技師バズ。

今までに一つでも売ったことがあるのかと疑いたくなる、いつも寝てばかりいるポップコーン売りジェームス。

腹筋マシーンをやりながらひたすら食べ続ける映画館の女主人エデリ(松坂慶子)。

ホノカアボーイ 松坂慶子

R指定の映画に潜り込むために頑張って変装したのに、“そういう努力は好きよ”と好評ながら、結局入れてもらえない子供。

来たことを客に後悔させる髪型にするからか、いつも暇で寝てばかりいる美容院の女主人みずえ(正司照枝)。

マラサバを筆頭に料理がむちゃくちゃ上手く、“横向き”のテレビでドラマ『うざい女』ばかり観ている、ちょっと変わったおばあちゃんビーさん(倍賞千恵子)。

“特別出演”かと思ったらほんとに出てくる深津絵里。

そして天国では、87歳まで“現役”だった、日本のエロ本しか受け付けないコイチ(喜味こいし)が、マリリン・モンローと共にペネロペ・クルスが来るのを待つ。

目を瞑れば、愛すべき場面が次々と頭に浮かびます。

ただ、ほんとにな~んにも起きない映画なので、退屈な方にはむちゃくちゃ退屈な映画かもしれません。
ジャームッシュの映画が好きな方なら、まず気に入っていただけると思いますが。

あと、孫ほどの年齢のレオ(岡田将生)に敬語で話す、ビーさんの言葉遣いがちょっとしたツボでした。

先ほど、“映画への愛に溢れた映画”というのとは少し違いますと書きましたが、ビーさんの作ったマラサバをエデリから買って、ジェームスからポップコーンも買って、バズが映し出す映像で、あの映画館で映画を観たいなぁ。

 

ホノカアボーイ [DVD]ホノカアボーイ [DVD]

2008/日本/111分
[監督]真田敦
[原作]吉田玲雄 『ホノカアボーイ』
[主題歌]小泉今日子『虹が消えるまで』
[料理]高山なおみ
[出演]岡田将生/倍賞千恵子/長谷川潤/喜味こいし/正司照枝/蒼井優/深津絵里/松坂慶子

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