珍しく、場内が明るくなるまで誰一人席を立たなかった。これは立てないでしょう。
ハイライトの交差点を挟んでのやりとりを筆頭に、ここぞという場面では一言の台詞もない。
人が目を合わせるだけで、自転車に二人乗りしているだけで、撮る人が撮ればそれだけで“映画”になる。
夜明けの日常で幕を開けた物語は、再び日常へと回帰してゆく。
松たか子が圧倒的。
『ゆれる』の香川照之と同じように、松たか子の“顔力”も、『サブウェイ・パニック』のウォルター・マッソーや『殺人の追憶』のソン・ガンホにだって負けていない。
あっさりと香川照之を使い捨てておきながら、鶴瓶をそうできなかったのは、存在感がありすぎるためか、彼だけ浮いている気がしないでもない。
昔『ゆれる』の感想で「2点を除いて、完璧。」と書きましたが、その一つはこれ以上ない形で解消されており、いよいよ凄いところまできた。
傑作。
2012/日本/137分
[監督・脚本]西川美和
[撮影]柳島克己
[出演]松たか子/阿部サダヲ/田中麗奈/鈴木砂羽/安藤玉恵/江原由夏/木村多江/中村靖日/ヤン・イクチュン/伊勢谷友介/香川照之/笑福亭鶴瓶
「俺はいつも逃げてばかりだ」 「つまらない人生から、だろ?」 アンコール上映をやっていたので、今さらながら『ゆれる』観て来ました。 2点を除いて、完璧。 うだうだ語るのが野暮というものでしょう。 ここまで素晴らしいと、何も書く[…]
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