そりゃ今時これはヒットしないはずだわ。
表面的なものにとどまらず、心の底からセルジオ・レオーネの『ウエスタン』を愛している者にしか作れない映画。
最高。
もう少し具体的に書くと、『ウエスタン』の本当の主人公は序盤であっさりと殺されたジルの夫であると、そのことがわかっている者にしか作れない映画。
回想部分の本編は、『ウエスタン』のラストシーンから、鉄道の線路を作っている労働者たちの姿から始まる。
という本質部分はもちろん、ほんとにどんだけ『ウエスタン』が大好きなんだよ!っていうくらい、隅から隅まで『ウエスタン』なんですけどね(笑)
ラストシーンの後はオープニング。駅で列車の到着を待つ男たち、給水塔!
男たちの顔がちゃんと埃にまみれてるのがいいですねぇ。
映画が『ウエスタン』なので、音楽のハンス・ジマーももちろんエンニオ・モリコーネ愛炸裂。
しかし、全編に渡ってモリコーネというわけではなく、あくまでも今風の音楽の中に、さりげなく、でも、しつこいくらいに、“あの”メロディーをこれでもかと挿入してくる!
それでも、『ウエスタン』そのまんまなら別にこの映画を観なくても『ウエスタン』を観ればいいわけで、今の時代にしかできないこともちゃんとやっています。
そのスイッチを入れるのが「ウィリアム・テル序曲」!
ここからはレオーネというより、ジェリー・ブラッカイマー節全開。
序盤には古典的な「西部劇における列車襲撃」シーンもちゃんとありますが、クライマックスは2本の線路、前後に切り離された列車による、今の時代にしかできないスピードと迫力による大活劇。
そのBGMに大音量で「ウィリアム・テル序曲」を流すというセンスが素晴らしい!
さらにこの映画は、故郷を愛する、故郷に帰る者たちの物語でもある。
エンドクレジットが流れ始めた後に延々と映し出されるジョニー・デップの背中、あれは別にサービスカットでも何でもない。
あそこまで歩いてきた彼の、あの後も歩き続ける彼の、“帰る”姿で映画は幕を閉じる。
[原題]The Lone Ranger
2013/アメリカ/149分
[監督]ゴア・ヴァービンスキー
[音楽]ハンス・ジマー
[出演]ジョニー・デップ/アーミー・ハマー/トム・ウィルキンソン/ウィリアム・フィクトナー/バリー・ペッパー/ヘレナ・ボナム=カーター/ジェームズ・バッジ・デール/ルース・ウィルソン
今回は、セルジオ・レオーネの最高傑作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』です。 西部の駅に現れたならず者3人組が、ある男の到着を待ちます。 列車が2時間も遅れているため、時間をもてあます3人。 ジャック・イーラムは顔[…]