『牡蠣の王女』(エルンスト・ルビッチ)

牡蠣の王女

エルンスト・ルビッチ第13弾。

『男になったら』『花嫁人形』に続いてオッシ・オスヴァルダ主演。
男装、人形ときて、今度は牡蠣長者の一人娘オッシ。

そのお金持ちぶりがとんでもなく、ただお風呂に入るだけで、召使が20人がかりくらいで体を洗ってくれるという凄まじさ。
いったい家の中に何人の召使がいるんだという凄すぎるお金持ち。

『アパートの鍵貸します』の冒頭で信じられないくらい広いオフィスの映像で一発でジャック・レモンの状況をわからせたように、この“目で見て一発でわかる”というのはさすがお師匠さんですね。

そんな家の一人娘なので、自由奔放ぶりも半端ではなく、気に入らないことがあったら家中の家具を壊しまくり、ヘタしたら家さえ壊しかねない勢い(笑)
まずはこのオッシ・オスヴァルダの暴れっぷりが凄まじく、ルビッチの演出というより彼女の独壇場。

牡蠣の王女 オッシ・オスヴァルダ

そんな彼女、新聞で結婚の話題を見つけるや、私も結婚したい!
お父さんに仲介業者を紹介してもらうと、仲介業者が選んだのはプリンス・ヌッキという男。
プリンスとは名ばかりで、ボロボロの家に済み食べるものにも困るような状況ですが、美男子ではあります。

とりあえず友人のジョセフを召使のふりをさせて彼女の家に行かせてみたものの、彼が「ヌッキ」という名刺を見せてしまったため、とにかく結婚したい一心のオッシは即座に結婚。盛大な結婚披露パーティーが開かれます。

このパーティーがまた凄く、とにかく、画面中、人、人、人。
料理を盛る人と、それにソースをかける人が別で、ワインも色ごとに当然別。
次から次へと溢れるように現れる給仕。

牡蠣の王女 ルビッチ

そのバックでは、チャップリンも顔負けのとんでも指揮者の指揮による、オーケストラの演奏が。
しかもただの演奏ではなく、楽器が“顔”というありえない演奏も(笑)
要は、頬を叩く音が演奏の一部になっているということ。
叩かれている方も最初はすましていますが、やがてぶち切れて殴り返すことに。

こんな感じで、もう何から何まで無茶苦茶。

肝心のジョゼフはというと、名前だけのプリンスの友人ということで、こんな豪勢な食事は初めてなんでしょう、とにかく食べる、ひたすら食べる。そして、ひたすら飲む。彼女も父親も構わず、とにかく食べ続けます。
しかも、禿頭で見た目もイケてません(笑)
さらにもう無茶苦茶。

そんなこんなで盛り上がっているところに、ついに本物のプリンスが現れます。
お金には困っているプリンスですが、美男子ではあるので、オッシも、周りの若い女性たちも、たちまち虜に。
さすがは一応プリンス、さっきのジョゼフとはレベルが違います(笑)

ここで何が始まるかというと、プリンスを巡っての、大ボクシング大会!

牡蠣の王女 ボクシング

もうルビッチ、やりたい放題。
そのボクシングですが、家すら壊しかねないオッシなので、他の女性たちに負けるはずもなく、当然のように圧勝(笑)
今度こそ二人は結ばれるのか!?

こんな感じで、文章だけ読んでいるとかなり無茶苦茶なように思われるかもしれませんが、実際無茶苦茶です(笑)

ただ、後の“ルビッチ・タッチ”の片鱗が全く見えないかというとそんなこともなく、必殺の“ドア”は早くも炸裂していますね。

圧倒的テンションで最後まで突っ走る圧巻の1時間。
必見。

 

LUBITSCH IN BERLIN Six films by Ernst Lubitsch, 1918-1921 [Masters Of Cinema] (DVD)

[原題]Die Austernprinzessin
1919/ドイツ/60分
[監督]エルンスト・ルビッチ
[出演]オッシ・オスヴァルダ/ビクター・ジャンセン/ハリー・リートケ

→予告編 →他の映画の感想も読む

関連記事

エルンスト・ルビッチ第11弾。今回はドイツ時代のサイレント作品です。 真昼間から酒に煙草に男たちとのポーカー、そんなお転婆娘のお嬢様が主人公。 厳格な叔父さん、口うるさい住み込みの家庭教師の女性。 ああ、なんで男に生まれなかっ[…]

関連記事

エルンスト・ルビッチ第12弾。 この前の『男になったら』に続いてオッシ・オスヴァルダ主演。 前回は男装でしたが、今回は人形(笑) 女性恐怖症の男が、結婚したら跡継ぎにしてやると叔父の男爵に言われるも、数十人の押し寄せる花嫁候補[…]