カウリスマキ&カーウァイ&ジャームッシュの共通点

アキ・カウリスマキウォン・カーウァイジム・ジャームッシュ、3人のINDEXをUPし終えたわけですが、ふと考えたら3人には多くの共通点があることに気づき、面白そうなので記事にしてみることにしました。

3人とも、数本を除いてほぼ全監督作を観ている大好きな監督たちです。
そんな彼らの共通点。

①自分で脚本も書いている
②名カメラマンがついている
③選曲センスが抜群
④作品の時間が短い
⑤常連俳優がいる

①については、3人ともいつも自分で脚本も書いています。
ジャームッシュはわかりませんが(映画を観る限りは彼も似たようなものだと思いますが)、カウリスマキとカーウァイはちゃんとした脚本が存在しないという点でも共通しています。カウリスマキは『浮き雲』のように細かい脚本がある映画もあるみたいですが。

②については、カウリスマキにはティモ・サルミネンが、カーウァイにはクリストファー・ドイルが、ジャームッシュにはロビー・ミューラーがいます。
この中では、世間的にはほとんど知られていないと思われるのがティモ・サルミネン。
カウリスマキの全作品で撮影を担当し、とても色盲とは思えない色彩感覚、カウリスマキも「光に関しては彼に白紙委任状を与えている」という、絶対の信頼を置くカメラマン。
カラー映像の美しさにかけては、他の二人の上をいくのではないかと思います。

③に関しては、3人とも映画のために新たに曲を依頼するのではなく、既存の曲から、まさにこれしかないという曲を引っ張ってきます。

まずはカウリスマキ。『過去のない男』でクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」が使われたことはずいぶんと話題になりましたが、『真夜中の虹』のラストには「Over the Rainbow」が見事にはまっていましたし、なんといっても最強の選曲は『ラヴィ・ド・ボエーム』の「雪の降る町を」。
去り行くマッティ・ペロンパーの背中に被さる篠原敏武氏が歌う日本語の「雪の降る町を」、あれはまさに絶品の一言でした。

続いてウォン・カーウァイ。
『恋する惑星』は「California Dreamin’」なしではありえませんし、『天使の涙』も「Only You」なしではありえません。
ピアソラとカエターノ・ヴェローゾのない『ブエノスアイレス』もありえません。

続いてジャームッシュ。
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』にはスクリーミン・ジェイ・ホーキンスの絶叫が、『ダウン・バイ・ロー』にはトム・ウェイツの「Jockey Full of Bourbon」が欠かせません。
スクリーミン・ジェイ・ホーキンスは『ミステリー・トレイン』で役者としてもいい味出してましたよね。

④については、例外はあるものの、3人ともほぼ100分以内じゃないですかね。
これはジョニー・トー監督にも言えることですが、彼もほぼ100分以内。
でも100分あればだいたいのことは描けるわけで、巷に溢れる2時間の映画でさえ、冗長な場合がほとんど。
何度か紹介している双葉十三郎氏の『外国映画ぼくの500本』によると、100分でも長いようで70~80分が妥当とありますが。

⑤に関しては、カウリスマキはなんといってもマッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンですが、脇を固めるエスコ・ニッカリやエリナ・サロなどもほとんどの映画に出ています。
ウォン・カーウァイは毎回同じというわけでもないですが、トニー・レオンやマギー・チャンやコン・リーなど、お馴染みの顔ぶれですよね。
ジャームッシュもいろいろ顔ぶれは変わりますが、ロベルト・ベニーニやトム・ウェイツは外せません。
これについては、ジョニー・トー組もいつもお馴染みの顔ぶれですよね。

毎回楽しませてくれる3人の監督、今度はどんな素敵な話を、どんな美しい映像を、どんな見事な選曲を、我々観客に披露してくれるでしょうか。