今回は、後の映画に絶大な影響を与えたと言われる、ジム・ジャームッシュ監督の名を一躍有名にした作品。
ニューヨーク、競馬や博打で稼ぎながらぶらぶらした毎日を過ごすウィリーとエディ。
そこへ、ブタペストからウィリーのいとこエヴァが訪ねて来た。
ただそれだけの話。これといったことは何も起こりません。
これは、好き嫌いがすごく分かれる作品だと思います。
100点をつけるか0点か、その世界にどっぷりとはまるか10分で寝てしまうか。
もちろん好みは人それぞれなので何とも言えませんが、自分は圧倒的に前者。
まずは、全編モノクロで撮られた映像、どのシーンを切り取ってもポスターになるかっこよさ。
台詞は、あるにはあります。でも、たいして意味はありません。
ストーリーもあってないようなものでしょう。
くだらないテレビ番組を眺めるウィリーとエヴァ。
エヴァがクリーブランドに行った後、部屋で無言でビールを飲むウィリーとエディ。
エヴァのボーイフレンドも一緒に4人横並び(並ぶ順番が絶妙)で映画館で観るカンフー映画。
猛吹雪の中、凍ったエリー湖の前で佇む3人。
マイアミ到着後、サングラスで“観光客”になる3人。
そんな何でもない時間を、ワンシーンワンショットのフェイドアウト→フェイドインでつないだ90分。
しかも、普通のフェイドアウト→フェイドインは一瞬で切り替わりますが、その間に必ず真っ黒の画面が挟まります。
一瞬よりは長く数秒よりは短い間です。
この間(ま)が傑作で、うまく言葉にできませんが、その場に存在した空気、雰囲気を、次の場面に移る前にふっと観る者の心に残してくれるのです。
何もおかしなことはしてないのに、思わずクスっと笑ってしまうくだらない日常。
何も起こらないことの素晴らしさ。
余韻の美学。
先ほども書いたように、観る人を選ぶ映画でしょうが、気に入る方はたまらなく好きな作品になるのではないかと思います。
[原題]Stranger Than Paradise
1984/アメリカ・西ドイツ/90分
[監督・脚本]ジム・ジャームッシュ
[音楽]ジョン・ルーリー
[出演]ジョン・ルーリー/エスター・バリント/リチャード・エドソン
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