『フラガール』(李相日)

フラガール

炭坑ものに外れなし。

『ブラス!』『リトル・ダンサー』『わが谷は緑なりき』『遠い空の向こうに』、当ブログでも常連の炭坑もの、新たな名作がまた一つ。

日本アカデミー賞受賞記念に1000円で凱旋上映をやっていたので、劇場まで行って来ました。
1000円ということもあるでしょうが、超満員。

上記作品の感想を読んでいただければわかるように、どれもパターンは同じなんです。
今回も全く予想通りの展開。
でも、それがどうした!という王道の素晴らしさ。
そして、実話という説得力。

どの話も、一言で言えば“変化”。

お父さんも、おじいちゃんも、近所のおじさんも、誰もがみんな炭坑夫。
当然のように自らも炭坑夫。

今回は初めて主役が女性なので、実際に炭坑で働きはしませんが、“炭坑以外に何もない町の住人”であることに変わりはなく、それが“当たり前”の世界。

そこに現れた“変化”、ブラスバンドやロケットの代わりに、今回はフラダンス。

フラガール 蒼井優

早苗に「今まで生きてきた中で一番楽しかったです!」なんてクサい台詞喋らせるなよ、などの不満はあるものの、紀美子の踊りを目の当たりにした母親に一言も喋らせないなど、最低限の“節度”は保っています。

役者陣も素晴らしく、『遠い空の向こうに』のクリス・クーパー並に“頑固な旧世代”を演じきった富司純子。

フラガール 富司純子

“新”と“旧”の間で飄々と振る舞う豊川悦司。
蒼井優の兄というのは年齢的に苦しくないですか?(笑)

フラガール 豊川悦司

ラム・シューばりに笑いを誘うしずちゃん。トゥシューズが入らないシーンなど全編笑わせてくれますが、何より名前が小百合だし(笑)

フラガール 山崎静代

出てくるだけで美味しい寺島兄貴。

抜群のプロポーションによる踊りのかっこよさ(初めに一人で踊るシーン!)だけでなく、行き場のなさもしっかり滲ませ、銭湯の男湯に殴り込みに行くシーンでは劇場中の爆笑を誘うなど、圧倒的な存在感の松雪泰子。

フラガール 松雪泰子

しか~~~し。

これだけの演技をしておきながらもっていかれる松雪泰子に心底同情しますが、圧倒的に蒼井優が素晴らしい。
日本中の賞を総なめにするのも納得ですね。

フラガール 蒼井優

先ほどから何度も“説得力”という言葉を使ってますが、この映画に説得力が出るかどうかは、全ては蒼井優のフラダンスにかかっているわけですが、過去の作品で主人公が成し遂げたどのことよりも、この蒼井優のフラダンスが凄い。
バレエをやっていたようなので基本はあるでしょうが、やっぱりバレエとフラダンスでは違うところも少なくないと思うので。
彼女のフラダンスだけでも劇場に出かける価値あり。

ラストのステージのソロも圧巻ですが、母親の前で踊るシーンが絶品。
官能的ですらあります。

あと、この手の映画のいいところは、恋愛が絡んでこないところですね。

そして、最後に出る「平山まどかは、70歳を超えた今でも、かの地で踊りを教えている」(不正確でしょうがこんなニュアンス)というような字幕には思わず落涙。

『墨攻』のラストの字幕にもじ~んときましたが、泣けはしなかったので、この字幕にこれだけの力が込められるのも、松雪泰子の演技の素晴らしさでしょう。
田口トモロヲ氏の声で読まれ、続いて「ヘッドライト・テールライト」が流れようものなら、号泣する自信あります(笑)

そんな素晴らしい松雪泰子すら霞む蒼井優。
恥ずかしながら観るのは1本目ですが、1本目にして完落ち(笑)

“炭坑ものに外れなし”の神話はまだまだ続きます。

2006/日本/120分
[監督]李相日
[出演]松雪泰子/豊川悦司/蒼井優/山崎静代/徳永えり/寺島進/高橋克実/岸部一徳/富司純子

→予告編 →他の映画の感想も読む

【関連記事】
『ブラス!』(マーク・ハーマン)
『リトル・ダンサー』(スティーヴン・ダルドリー)
『わが谷は緑なりき』(ジョン・フォード)
『遠い空の向こうに』(ジョー・ジョンストン)