今回は、『ミリオンダラー・ベイビー』アカデミー賞受賞記念ということで、『ペイルライダー』『恐怖のメロディ』に続いて3本目のクリント・イーストウッド監督作品。
冒頭の砂嵐のシーンから、ブルース・サーティースの魅力全開。
ただ、砂嵐といってもこの映画は西部劇ではありません。
イーストウッドの手にあるのは、『ダーティーハリー』の拳銃でも、西部劇でぶっ放すライフルでもなく、1本のギター。
酒と煙草に溺れ、自らの命が長くないことを悟っているしがないカントリー・ミュージシャン、レッド。
ナッシュビルで開かれるオーディションに、人生一度の夢を賭けます。
そんな彼を敬愛する甥のホイット、故郷で死にたいと途中まで一緒に旅することになった甥の祖父。
そんな3人のロードムービー。
甥役は実子カイル・イーストウッド。俳優の道に進むことはなくジャズ・ミュージシャンの道に進んだみたいですが、自然体の演技は見事の一言。
鶏泥棒を働いたり、娼館に行ったり、ドラム缶風呂に入っているところを牛に襲われたり、帰るあてのなくなった少女を仕方なく連れて行ったり、様々なエピソードを重ねながら旅は続きます。
オーディション後、最後の力を振り絞り、甥と一緒に作った曲をレコーディングするレッド。
男の意地を賭けた、人生一度の最後の大勝負。
『ダーティハリー』で拳銃をぶっ放し、『恐怖のメロディ』でジェシカ・ウォルターを殴り飛ばしたイーストウッドが、しわがれた声でギター片手に歌うのです、しかも決して上手くはないところがいい。
他のどの映画よりも、これぞ漢イーストウッドでしょう。何度観ても泣けます…。
途中から一緒に旅をすることになった少女とホイットの二人が並んで歩く後姿。
そこに被さるレッドとホイットの作った「HONKYTONK MAN~♪」というイーストウッドの歌声、死ぬほどいい。
傑作西部劇『ペイルライダー』『許されざる者』とはジャンルが違いますが、素晴らしさではまったく劣ることのない、愛すべき傑作。
[原題]Honkytonk Man
1982/アメリカ/123分
[監督]クリント・イーストウッド
[撮影]ブルース・サーティース
[出演]クリント・イーストウッド/カイル・イーストウッド/ジョン・マッキンタイア
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