『ペイルライダー』(クリント・イーストウッド)

ペイルライダー
今回は、イーストウッド入魂の西部劇。

『シェーン』のリメイクなどと言われていて、確かにそのままのシーンもありますが、やはり同じイーストウッドの『荒野のストレンジャー』のリメイクでしょう。

オープニング、荒野を馬で駆ける一団と、のどかな山あいの村に暮らす人々が、何度も交互に映ります。
躍動感たっぷりの蹄の音、片や村の人々のありふれた日常。
徐々にこの二つのかけ離れた世界がどう出会うのかの想像が膨らみます。この冒頭の数分ですでに傑作であることを確信。

散々に村を荒らされ、打ちひしがれる人々。
愛犬を殺された少女が神に祈ります、「主のご加護のあることを信じてはいますが、奇跡をお示しください」「一度だけ奇跡を」と。

ペイルライダー シドニー・ペニー

そこに、雷鳴轟く白銀の荒野に馬にまたがり“牧師”イーストウッド登場。
その姿を捉えたロングショット、あまりのかっこよさに、あまりの美しさに、あまりの神々しさに、訳もなく涙がこぼれました。

町で村の一人が無法者に襲われているのを助けた牧師。
傷一つ負わない圧倒的な強さ。

その男の家に招かれ、しばし村にとどまることに。そして、砂金の採掘権を奪われそうになっている村の人々に手を貸すことになります。
ここらへんは、『七人の侍』を感じさせました。『荒野の用心棒』で“桑畑三十郎”を演じているイーストウッドのこと、どこかにそんな影響もあることでしょう。

手下が牧師に痛い目に会わされたことを知り、この一帯を牛耳っているボスの息子が大男を連れて牧師に“挨拶”に来ます。
しかし、そのとんでもなく大きくて強そうな男をも一発で参らせてしまった牧師の姿に、もはやこの村を去るしかないと諦めていた人々の心に勇気と、そして団結力が芽生えます。

そんな状況に、ボスは1人あたり100ドルの立ち退き料で手を打とうとしますが、牧師の凄みに値段は1000ドルに釣り上がります。

さすがに1000ドルは大きく、村の人々の心は揺れますが、ここで皆に語りかけたのが先ほどの町で襲われた男、金に負けていいのか、この土地を愛していないのかと。
一人が答えます。「俺は勇者じゃないが、臆病者でもない」
真っ暗闇に焚き火の明かりだけの村の男たちの話し合い、ここも屈指の名シーン。

ペイルライダー

村の人々が金に屈しないことがわかったボスは、人を殺すことも平気と名高い保安官とその部下6人を雇います。もはや力ずくです。
この7人がまたかっこよくて、横一列にならんで銃に手をかけるシーンなど痺れます。

町で待ちかまえる7人の猛者、さらにボスの手下たち、そこに“一人で”乗り込んでいく牧師、もうたまりません。
一緒に行こうとした男を途中で置き去りにするシーンの台詞も痺れまくりですが、観てのお楽しみということで。
乗り込んでからの展開も伏せておいた方がいいでしょう。

そして、「Shane, Come buck!」ではなく「I love you! Thank you! Goodbye!」。

ペイルライダー

しかも、その時牧師の姿はすでになく、ただ荒野にこだまする少女の叫び。

完璧。

あまり書かない方がいいと思いいろいろと伏せてますが、他にも痺れる台詞やシーンのオンパレード。

それに何よりも、ただただ美しい。
馬が駆ける荒野、馬が駆け抜ける陽光差し込む林道、水圧式採掘の放射水、闇夜に人の顔を照らし出す焚き火の明かり、少女が愛犬を埋葬した小さなお墓の盛り土、人気のない殺伐とした町の往来、そしてなんといっても“One miracle”として現われる“牧師”イーストウッドの登場シーン、目を閉じれば次々と光景が浮かんできます。

圧倒的映像美と、多くを語らない男たち。

文句なしの大傑作。

[原題]Pale Rider
1985/アメリカ/105分
[監督]クリント・イーストウッド
[撮影]ブルース・サーティース
[出演]クリント・イーストウッド/マイケル・モリアーティ/キャリー・スノッドグレス/シドニー・ペニー/リチャード・キール

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