『過ぎゆく時の中で』(ジョニー・トー)

過ぎゆく時の中で

ジョニー・トー第7弾。ラブ・ストーリーは初体験。

『暗戦 デッドエンド』でのアンディ・ラウとヨーヨー・モンのやりとりが素晴らしかったので、ジョニー・トーはラブ・ストーリーも凄いんじゃないかと期待していたんですが、いやぁ素晴らしい!

一人息子のポーキーとつつましく暮らしているアロン(チョウ・ユンファ)。

雑踏、そして二人が暮らす安アパートへとカメラが寄るオープニングで一気に二人が暮らす世界に引き込むと、二人のやりとりがまずはいい。

8年間ずっと二人だけで生きてきたアロンとポーキー、親子というより仲の良い悪ガキ二人といった感じ。
アロンが仕事に出かけても、仕事仲間からもからかわれ人気者のポーキー。
ポーキーをバイクの後ろに乗せて二人で走るシーンだけでも十分に魅せます。

そんなポーキーにCM出演の話が。オーディションに合格し、二人で会社に出かけると、そこで待っていたのはディレクターのシルヴィア(シルヴィア・チャン)。

10年前恋人同士だった二人。
しかし当時は滅茶苦茶だったアロン、シルヴィアの母親は生まれてきた二人の子供を孤児院に預け、子供は死んだと親に騙されたシルヴィアはアメリカに。
2年後出所したアロンはポーキーを引き取り、8年間二人だけど暮らしてきたのです、ポーキーには母親は死んだと嘘をついて。

そんな二人の10年ぶりの再会。

過ぎゆく時の中で チョウ・ユンファ シルヴィア・チャン

ポーポーと昔のように呼ぶアロン、ヤンさんとよそよそしく呼ぶシルヴィア。
この時点ではまだシルヴィアはポーキーが自分の子だとは知りません。

ここから、男と女の、母と子の、そして父と子の物語が始まります。
ただ、ここから先のストーリーは観てのお楽しみということで。

ふとしたシーンが素晴らしいのがジョニー・トーですが、この映画でも、二人が昔行きつけだった店に行くくだりや、アロンのバイクの後ろに乗ったシルヴィアがつかまるのをためらっていると、アロンが急発進させ思わずしがみつくところ、シルヴィアとポーキーが二人で遊園地に行き、ジェットコースターで吐いてしまったシルビアにポーキーがそっとティッシュを差し出した時のシルヴィアの表情、ポーキーが家出する時にアロンにお金を要求するシーン、お子様ランチが2つ出てきた時の可笑しさ、運動会での三人四脚などなど、挙げ出したらキリがない素晴らしいシーンの数々。

一番好きなのは、オートバイレースに復帰したアロンがスタートを待っているとギリギリで駆けつけたポーポー、その姿を見つけた時のアロンのなんともいえない笑顔。

さらにポーポーの腕に自分がプレゼントしたブレスレットが巻かれていることを見つけると、親指を立てて合図し、そして駆け出していきます。ベタですが、こういうのに弱いんです(笑)

ラストについてもほんとは書きたいんですが、やはり伏せておきます。
ただ一言、涙、涙、涙…。

今まで観たのは痺れる男の映画かB級映画かどちらかだったジョニー・トーですが、こんな素晴らしいラブ・ストーリーも撮っていたなんて!
まだまだ楽しませてくれそうです。

 

過ぎゆく時の中で デジタル・リマスター版 [DVD]

過ぎゆく時の中で (阿郎的故事) (Blu-ray) (香港版)

[原題]阿郎的故事
1989/香港/100分
[監督]ジョニー・トー
[原案]チョウ・ユンファ/シルヴィア・チャン
[出演]チョウ・ユンファ/シルヴィア・チャン/ウォン・コンユン/ン・マンタ/ウォン・ティンラム

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