『恐怖のメロディ』(クリント・イーストウッド)

恐怖のメロディ

今回は、前回の『続・夕陽のガンマン』からイーストウッドつながりで、彼の監督デビュー作『恐怖のメロディ』です。

セルジオ・レオーネのマカロニ・ウエスタンで一躍国際的スターになったイーストウッド、その初監督作品はなんとストーカーもの。当時ストーカーという概念はまだなかったみたいですが、ジェシカ・ウォルター怖すぎ…。

サスペンスなのでこれ以上内容には触れませんが、原題でもあるイブリンの台詞、「Play 『MISTY』 for me」。
この映画を観たことがある人にだけ通じる恐怖の電話。無言電話なんかより100倍怖い。ある日電話に出て相手がこう囁いた日には背筋が凍ります(笑)

あと、余分だと言われるロバータ・フラックの『愛は面影の中に』をバックに延々と続くトビーとのラブシーンですが、個人的にはブルース・サーティースの美しい映像を堪能できて大好きです。
映像といえば、オープニングとエンディングで対をなす空撮も溜息ものの美しさ。

しかし、この映画はなんといってもジェシカ・ウォルター。デイブとトビーを遠くから見つめる彼女の目線のカメラワークの怖さ、静から動へ切り換わった瞬間の狂気。滅茶苦茶怖い…。

恐怖のメロディ

内容に触れられなくて短い分、あとはイーストウッドとドン・シーゲルに語ってもらいましょう。
師匠ドン・シーゲルがバーテン役で登場するのはあまりにも有名ですが、イーストウッドにとって自らの監督としてのスタートである撮影初日の、しかも初めて撮るシーンが、演技経験ゼロの彼のシーンだったとか。

「自分より緊張している人に初日の撮影現場にいてほしいのだ」(クリント・イーストウッド)

「クリントは監督としては何の手助けもいらなかったが、あの役に私を起用した点だけは愚かだったね」(ドン・シーゲル)

愚かだなんてとんでもない、とっても良い味出しています。

あと、この映画はDVDの特典映像が凄く豪華で、30年後のイーストウッドやジェシカ・ウォルターやドナ・ミルズ(今でも可愛い!)などがたくさん語っていて、中でもイーストウッドが撮影現場でのドン・シーゲルとのやりとり(小さく切った台詞を書いた紙をそこらじゅうに貼ってカンニングしようとするドン・シーゲルを注意してやめさせたなど)を語るくだりは必見!

さらに、最近はまっているジョン・カサヴェテスですが、イーストウッドが笑いながらこう話していました。
「観に来てくれたカサヴェテスは言った、“ヒッチコックの名前が入ってないよ”と。彼は続けて言った、“名前さえ入っていれば大ヒットだ”とね」
これには笑いました(笑)

とても初監督作品とは思えない、一級品のサスペンス。

 

恐怖のメロディ ユニバーサル思い出の復刻版 ブルーレイ [Blu-ray]

[原題]Play Misty for Me
1971/アメリカ/108分
[監督]クリント・イーストウッド
[撮影]ブルース・サーティース
[出演]クリント・イーストウッド/ジェシカ・ウォルター/ドナ・ミルズ/ドン・シーゲル

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