前回の『生活の設計』に続いて、エルンスト・ルビッチ第7弾。
主演は、前回と同じゲイリー・クーパー。相手は、今回はお気に入りのミリアム・ホプキンスでないのは残念ですが、補って余りある『或る夜の出来事』のクローデット・コルベール。
ラストが有名な映画は、それこそ数え切れないほどありますが、この映画は、オープニングが有名ですよね。
フランスに滞在中のアメリカ人の大富豪ブランドン(ゲイリー・クーパー)は、不眠症に悩まされ、パジャマのせいだと考えた彼は、デパートにパジャマを買いに行きます。
しかし、パジャマは上しか着ない彼は、下はいらない、上だけくれと店員に言います。
そんなことはできないと店員、男の90%はパジャマの下なんか着ない(ほんとかいな)、あくどい商売するなと譲らないブランドン。
いまだかつてそんな客は聞いたことがないので、店員は大慌て、上司に相談、その上司もさらに上司に相談、結局社長に電話します。
寝室で電話に出た社長、そんなことは絶対にだめだ!と叫ぶものの、そんな社長も上しか着ていなかった…。
ブランドンと店員が相変わらず揉めていると、そこへ現れたニコル(クローデット・コルベール)という女性、なんと、私が下だけもらうわと一言。
彼女の方は下だけ欲しくて、上はいらないのです。
こうして出会った、パジャマの上だけが欲しい男と、パジャマの下だけが欲しい女。
映画史上屈指の出会いの名場面でしょう。
この見事な脚本を書いたのは、ご存じチャールズ・ブラケットとビリー・ワイルダー。
一目でニコルに惚れたブランドンは、探りを入れます。なんといっても男もののパジャマの、しかも下だけを買ったわけですから。
しかし実はニコルは貧乏貴族の娘で、上はまだ着れるから下だけ買ったわけです、お父さんのために。
この貧乏貴族のお父さんが、ルビッチ作品といえばこの人エドワード・エヴェレット・ホートン。
お父さんは借金地獄から抜け出すために、ブランドンとニコルを結婚させようとします。
しかし、ニコルにはアルバート(デヴィッド・ニーヴン)という旧友がいて、あまりブランドンに気はありません(実はそうでもないんですが)。
でも、ニコル自身も借金のため街に出ては冷たい視線を浴びていたため、お金のために結婚を決意。
しかし、結婚式のいざ写真撮影という段階になって、ブランドンに結婚歴があることが発覚。しかも7回!
それでタイトルが『青髭八人目の妻』。
そこで、今度また離婚したら、年に10万ドルずつ払うという“契約”を結びます。
そして、ニコルはブランドンを挑発し、思惑通りに離婚ということになり、しかし…。
この先は観てのお楽しみとしておきましょう。
監督エルンスト・ルビッチ、脚本チャールズ・ブラケット&ビリー・ワイルダー、主演ゲイリー・クーパー、クローデット・コルベールとくれば、面白くないわけがありませんが、今回も“ルビッチ・タッチ”を存分に堪能できます。
ゲイリー・クーパーは、『生活の設計』に続いて、ビシッと決めた時とはまた違う、ロマンティック・コメディの彼が観れます。
今回も主導権を握っているのは女性の方で、クローデット・コルベールに見事に翻弄されています(笑)
“脚本家”ビリー・ワイルダー初のヒット作として、さらに映画史に残るオープニングの出会いのシーンだけでも、一見の価値があると思います。
[原題]Bluebeard’s Eighth Wife
1938/アメリカ/85分
[監督]エルンスト・ルビッチ
[脚本]チャールズ・ブラケット/ビリー・ワイルダー
[出演]ゲイリー・クーパー/クローデット・コルベール/デヴィッド・ニーヴン/エドワード・エヴェレット・ホートン
エルンスト・ルビッチ第6弾。 列車の個室で並んで居眠りをしている二人の男、画家のジョージ(ゲイリー・クーパー)と劇作家トム(フレデリック・マーチ)。 向かいの席に乗り合わせた広告代理店に勤務するジルダ(ミリアム・ホプキンス)は、[…]