エルンスト・ルビッチ第6弾。
列車の個室で並んで居眠りをしている二人の男、画家のジョージ(ゲイリー・クーパー)と劇作家トム(フレデリック・マーチ)。
向かいの席に乗り合わせた広告代理店に勤務するジルダ(ミリアム・ホプキンス)は、二人のスケッチを始めます。
ジルダがスケッチしていて、ふと顔を上げるとジョージがさっきまでと寝顔が違っていて、書き直したと思ったらまた違っていてと、いつもの“目で見せる”楽しさで一気に引き込みます。
これだけでもうこの先の面白さは保証されたようなもの。
お互いに絵心があるジョージとジルダはお互いの絵を酷評、しかしあれよあれよという間に3人は意気投合。
しかし、同時にジルダを愛してしまったジョージとトム。長年の友情にひびが入り…。
やっぱり友情を取ろうと二人が仲直りしたのも束の間、二人の暮らすボロアパートにジルダが転がり込み、なんと3人の共同生活が開始。
約束事は一つ、“紳士協定”。
ルビッチ監督お得意の三角関係が、これまででも一番わかりやすい形で展開されます。
二人を完全に手玉に取るジルダ、ミリアム・ホプキンスの魅力的なこと!
同じルビッチ監督の『極楽特急』にも出ていた彼女ですが、男はこういう女性に弱いんです(笑)
小悪魔的魅力とはこのこと、管理人も完全にイチコロです…。
ジルダの陰の尽力が実り、トムは戯曲が売れロンドンに。
お約束の展開で、紳士協定は破られ、結ばれるジョージとジルダ。
トムがロンドンから帰ってくると、ジョージは旅行中。
案の定結ばれるトムとジルダ。
ジルダ恐るべし(笑)
まあこれは今では何の珍しさもない話ですが、1933年当時としては大胆なテーマだったのではないでしょうか。
結局どちらも選べないジルダは二人の元を去り、愛してもいない勤務先の社長と結婚。
この社長はルビッチ作品ではお馴染みのエドワード・エヴェレット・ホートン、今回も哀れな役を見事に演じています(笑)
今回も例によって省略による描写は冴え渡っていて、手入れを怠り壊れてしまったタイプライターでジルダの心境の変化を表したり、唯一壊れていなかったベルの使い方など、ほんとに上手い。
ジルダと社長の初夜も、部屋の中を一切見せずに、出てきた社長の姿だけで全てをわからせるなど、こんなのはルビッチ監督には朝飯前ですね。
ラストは観てのお楽しみとしておきます。
一つ思ったのがゲイリー・クーパー、3年前の『モロッコ』ではあんなに若くてハンサムだったのに、たった3年でこんなに老けるの?
3年前の『モロッコ』よりも、19年後の『真昼の決闘』の時に似ていると感じたのは、気のせいでしょうか(笑)
かっこいいことに変わりはないんですが。
ルビッチ監督が、前年の傑作『極楽特急』に続いて撮ったのがこの作品。
そして翌年には『メリィ・ウィドウ』。この時期はほんとに絶好調ですね。
本作品も十二分に“ルビッチ・タッチ”を堪能できます。
しかし、すべてはミリアム・ホプキンス。
天下のゲイリー・クーパーでさえも、彼女の前ではただの添え物。
彼女に出会うためだけでも何度でも観たい。
[原題]Design for Living
1933/アメリカ/91分
[監督]エルンスト・ルビッチ
[出演]ゲイリー・クーパー/フレデリック・マーチ/ミリアム・ホプキンス
今回は、この前の『イエスタデイ、ワンスモア』から“泥棒カップル”つながりで『極楽特急』です。 『イエスタデイ、ワンスモア』にイマイチ物足りなさを感じるのも、すでにこの映画を観てしまっているせいでしょう。 ただ、さすがのジョニー・[…]
前回の『生活の設計』に続いて、エルンスト・ルビッチ第7弾。 主演は、前回と同じゲイリー・クーパー。相手は、今回はお気に入りのミリアム・ホプキンスでないのは残念ですが、補って余りある『或る夜の出来事』のクローデット・コルベール。 […]