『ザ・サムライ/荒野の珍道中』(セルジオ・コルブッチ)

ザ・サムライ 荒野の珍道中

今回は、セルジオ・コルブッチ渾身の迷作『ザ・サムライ/荒野の珍道中』です。

日本の将軍様からアメリカ大統領に献上される名馬“シンミ様”がインディアンに奪われ、お目付役“グレートサムライ”も殺されてしまう。
残されたのは、“シンミ様”の世話係の足軽の“サクラ”。

馬代金受け渡しの役目を引き受けたのが、泣く子も黙る(実は結構マヌケ、さらに大の恐妻家)保安官“ブラック・ジャック”。

そこに、ブラック・ジャックの給料を盗んだ詐欺師の“スイス”も馬代金目当てに加わり、3人の奇妙な珍道中が始まる…。

自分で書いていて悲しくなってきましたが、もう無茶苦茶です(笑)

とても、セルジオ・レオーネと双璧と讃えられるセルジオ・コルブッチが撮るような映画ではありません。

一言で言えば、以前UPした『レッド・サン』のB級バージョンといったところでしょうか。

『レッド・サン』といえば、三船敏郎、チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロンという日米欧のスーパースターの夢の共演でした。

それに比べ今回の3人は…。

それがどっこい!さすがに上の3人にはかないませんが、何気に超豪華。

足軽“サクラ”に、『ガンマン大連合』に続いて登場のトーマス・ミリアン、保安官“ブラック・ジャック”に『続・夕陽のガンマン』では完全にイーストウッドを喰っていたイーライ・ウォラック、さらに詐欺師“スイス”にはマカロニウエスタンのスーパーアイドル、ジュリアーノ・ジェンマ!

どうです、何気に豪華なこのメンバー(笑)

ザ・サムライ 荒野の珍道中

3人とも我を捨ててアホなことをやってますが、一番の見所は怪しい日本人(正確にはアメリカ人男性と日本のコール・ガールの間の子供という設定)に扮したトーマス・ミリアン。

彼は本来は凄く美男子ですが、変な鬘(ちょんまげとは微妙に違う)をかぶり、おかしな日本語と英語を使い、とにかくハチャメチャ。

例えば、日本語字幕でですが、“全てがオジャン”と言いたいところを、“全てがオバン”となってしまうなど、毎回イーライ・ウォラックにつっこまれています。

ザ・サムライ 荒野の珍道中 トーマス・ミリアン

さらに、3人が酒場を襲う時に女装して敵を欺くんですが、残り2人は元々顔がいいのでまあなんとかいけますが(トーマス・ミリアンの芸者みたいな白塗りはかなり微妙ですが…)、誰も見たくないのがイーライ・ウォラックの女装。
はっきり言って、見てはいけないものを見てしまったというのはこのことでしょう(笑)

他にもつっこみ出せばきりがありませんが、問題の“シンミ様”。
“サクラ”はいつもお辞儀して丁寧に接していますが、要はただのポニー(笑)
どこからどう見てもアメリカ大統領に献上するような名馬には見えません。

散々言いたい放題言ってますが、じぁつまらない映画かというと、とんでもない!むちゃくちゃ面白い!

一応ストーリーに一捻りありますが、そんなことはどうでもよくて、『レッド・サン』が遙か彼方に霞んでしまうこのハチャメチャな世界を楽しんだ者勝ち。
ただ、全体に流れるゆる~い空気を受けつけない方には、つらい映画かもしれません。

数々の傑作マカロニウエスタンを残したセルジオ・コルブッチの、愛すべき珍作。

 

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[原題]Il bianco, il giallo, il nero
1975/イタリア/105分
[監督]セルジオ・コルブッチ
[出演]ジュリアーノ・ジェンマ/トーマス・ミリアン/イーライ・ウォラック

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