『アンストッパブル』(トニー・スコット)

アンストッパブル

フーターズ最高!フーターズ最高!大事なことなので2回言いました。
本筋と何の関係もなくてすいません…。

いい加減飽きてきたトニー・スコット×デンゼル・ワシントンですが、今回は「当たり」です。無謀にも大傑作『サブウェイ・パニック』のリメイクに挑んで案の定玉砕した前作よりも、格段にいい。

オープニングはいつものあのカメラで、おいおいまたかよとうんざりするのも事実です。なんで止まってる列車撮るだけにもそんなにチャカチャカとカメラ動かさないといけないのか。
「止め」のかっこいい絵を撮る自信がないと自分で言っているようなもので、あーあと早くもため息が出ますが、これは「トレードマーク」らしいのでもう諦めましょう(笑)

ですが、列車が動き出してからは、たたみかけるカット割りと早い編集はむしろ良い方向に出ています。
結末はわかっている映画なので、いかに演出だけで緊張感を持続させらるかが勝負なわけですが、その点では十分成功しているでしょう。

そして、頼れるベテラン、生意気な新人、デキる現場指揮官、無能な上層部、美味しい脇役と、役者は揃っています。それぞれの配役もぴったりでしょう。

主役の二人よりもむしろ、ロザリオ・ドーソン演じる現場指揮官コニーと、リュー・テンプルというよく知らない役者さんが演じているネッドという溶接工のおっさんが素晴らしい。

特にこのおっさんが最高で、事の重大さにいち早く気付き、車を思いっきりぶっ飛ばしたり、しばらく消えていたなぁと思ったら、一番おいしいところで待ってましたとばかりに再登場し、結局一番おいしいところをもっていっちゃいます。
おまけに、いつの間にか背広に着替えてなぜか記者会見まで。もはや脇役の域を完全に超えています(笑)

彼と現場の職員たちとのやりとりがいい。
お互い面識はなく、警察まで総動員で警戒態勢を布いているところに、慌ただしくやってきたネッド。まあ見た目も怪しいので、誰だこのおっさん?とみんなが怪しむのももっともなんですが、「コニーに聞いてくれ」の一言に、皆の目の色が変わる。
「彼女の指示か?」「ああ、手を貸してくれ」

アンストッパブル トニー・スコット

全力で彼に力を貸すようになる職員たち。このわずかの会話で、回想も説明も何もなしで、コニーという指揮官の人物像を観客にわからせる。
やればできるじゃんトニー・スコットと感心していたら、「パパならできるわ!」なんて言わなくてもいい一言を言わせちゃうあたりがトニー・スコットなんだよなぁ(笑)
言わせてはいけない台詞の典型。TV局主導の邦画とかだとこういう台詞ばかり大声で叫んでますが(爆)

彼女たちのパパを見る目つきが変わればそれで十分で、彼女たちにその演技力があるようにも見えませんが、それをなんとかするのが監督でしょうと(笑)

でも、ウィルに電話に出させなかったのはよかったですね。あそこで電話に出てたら全てが台無しになるところでした。
というわけで、最低限のラインはさすがにわきまえているかなと。

なんか主役の二人に全く触れてませんが、一言、デンゼル・ワシントン動けすぎ(笑)
猛スピードで爆走する列車の上を軽々と走って移動するなんて、ピアース・ブロスナンのボンドより全然動きがいいんですけど!ダニエル・クレイグには勝てませんが…。

アンストッパブル デンゼル・ワシントン

そして、タイムリーなネタとしては、マスコミのヘリ寄りすぎ(笑)
まあさすがに映画だからこそで、実際の事件の時はあそこまで寄ってなかったと思いますが、どうしてこういつも「現場のお仕事」の邪魔ばかりするんですかねぇ。
あそこまで寄れる腕があるなら、なんか手助けの一つもできそうなんですが(爆)

とまあ突っ込みどころもいろいろありますが、エンドクレジットを除くと、正味93分、この短さもいいいですね、もう少し削れますが。
それでも、結末のわかってる話でこれだけ楽しませてくれたら十分でしょう。

 

アンストッパブル [Blu-ray]

[原題]Unstoppable
2010/アメリカ/98分
[監督]トニー・スコット
[出演]デンゼル・ワシントン/クリス・パイン/ロザリオ・ドーソン/リュー・テンプル

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