『運命じゃない人』(内田けんじ)

運命じゃない人

「タイミングなんてないよ、お前が作るんだよ、タイミングを」

今回は、久々に“皆様のお薦め映画”から、hi-chan様に“爆笑!”、にじばぶ様に“衝撃のラスト!”に投稿していただいた『運命じゃない人』です。

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一言で言えば、『パルプ・フィクション』のように、時間軸を自在に操った映画。
見方を変えるだけで、実はこうだったんだ!と、次々とパズルのピースがはまっていく快感という意味では、『愛してる、愛してない…』でもあります。

今時珍しくないといえば珍しくないですが、脚本の練られ方という点だけでいえば、上記2本よりも上ではないでしょうか。

運命じゃない人 内田けんじ

DVDのチャプターには、いわゆる普通のチャプターである「ストーリーチャプター」とは別に、「時間軸チャプター」なるものもついていて、主要人物5人の時系列からもシーンに飛べて面白いです。

少し前にUPした『キサラギ』もそうでしたが、オリジナル脚本のこういう映画はほんとに嬉しい。

特典映像の中で監督が、ビリー・ワイルダーが好きとおっしゃってましたが、納得できすぎるくらい納得。
そういえば、出だしはもろに『アパートの鍵貸します』ですもんね。

予備知識ゼロでご覧になっていただきたいので、未見の方は、ただ一言、騙されと思ってご覧になってみて下さい。

運命じゃない人 ベッド

絶対に予告編を観てはいけません。

『愛してる、愛してない…』的楽しみをことごとく奪っていて、予告編としては最低の予告編です。(最後の三池崇史監督の言葉を除く)

内容には触れませんが、一つだけ、とても印象的だった台詞を。

いい歳をした男にはあまりにも耳が痛い台詞ですが(笑)、自戒の意味も込めて、以下、全文掲載。

「いやあ、なんかタイミングがなくってさ」と、女の子に電話番号を聞けなかった宮田に、友人神田が一言。

「タイミングなんてないよ、お前が作るんだよ、タイミングを。
いいかお前、電話番号をなめんなよ。あの11桁の数字を、知ってるか知ってないかだけが、赤の他人と、そうじゃない人を分けてるんだからな。
お前はタイミングがないっていう理由だけで、全ての可能性を捨てちゃったんだからな」

さらにたたみかけます。

「お前はいまだに人生に期待しちゃってるんだよ。これからも普通に生活してれば、いつか誰かと出会うだろう、素敵な女の子が現れるんじゃないかなぁ、まさかず~と一人ってことはないだろうなぁってな、漠然と、高校生みたいに。
いいか、はっきり言っとくぞ。30過ぎたら、もう運命の出会いとか、自然な出会いとか、友達から始まって徐々に惹かれ合ってラブラブとか、一切ないからな。
もうクラス替えとか、文化祭とかないんだよ。自分でなんとかしないと、ず~っと一人ぼっちだぞ、絶対に、ず~っと」

「もうクラス替えとか、文化祭とかないんだよ」が妙にツボでした(笑)

この映画、コメディでもありサスペンスでもありラブストーリーでもあるわけですが、上の会話にもあるように、根本にあるのは男同士の友情。そこがいい。
ぐっとくるのも、神田があゆみに言った「あいつがこれ以上傷つくの、見たくないんだ」だったりするわけで。

それにしても内田監督、これだけの脚本をデビュー作で書いてしまうと2本目が大変ですが、いつもお世話になっている5011様が試写会でご覧になったところによると、2本目も素晴らしい出来のようで、今から楽しみです。

→5011しねま・のーと<極上のジグソー・ムービー「アフタースクール」>

 

運命じゃない人 [DVD]

2004/日本/98分
[監督・脚本]内田けんじ
[出演]中村靖日/霧島れいか/山中聡/山下規介/板谷由夏

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