『生きるべきか死ぬべきか』(エルンスト・ルビッチ)

生きるべきか死ぬべきか

エルンスト・ルビッチ第3弾。

以前の日記で、未見の映画の中で観たい映画の筆頭に挙げていたこの映画ですが、念願かなってようやく観れました!

「ルビンスキー、コビンスキー、ロミンスキー、ロザンスキーとポズナンスキー」というふざけた字幕で始まるこの映画。
この紛らわしい名前の数々はどれも店の看板。そんな看板が立ち並ぶ第二次大戦前夜のワルシャワ、そこにたった一人でヒトラーが現われた…。

いやぁ、何なんでしょうこの面白さは。次元が違います。
2本観た段階ではまだかすかにためらいがありましたが、今はもう確信。
お弟子さんのビリー・ワイルダー、遠く及びません…。

『ハムレット』を演じているワルシャワの劇団。
別のレパートリーには『ゲシュタポ』というのもあって、ヒトラーそっくりの役者も登場。

この時点ではまだ、『ゲシュタポ』なる劇を演じていても大丈夫だったんですが、ヒトラーがポーランドに侵攻してきたからさあ大変!

地下組織の一員となった彼らは、本物のゲシュタポ相手にヒトラーになりすましたり、とにかくもう滅茶苦茶。

生きるべきか死ぬべきか

“To be or not to be”で始まるハムレットの長台詞が始まると必ず席を立つ観客、『ベニスの商人』のシャイロックの台詞を空んじている槍持ちの役者に訪れた一世一代の晴れ舞台、あるナチの将校の真似をしてある教授と会ったと思ったら、本物の将校相手に今度はその教授の真似をして会うはめになる可笑しさ、ナチの男性がポーランド女性を口説くときの“電撃作戦に乾杯を?”“ゆっくり攻められる方が”というニヤリとするやりとり、エアハルト大佐とシュルツ大尉の罪のなすりつけあい、よくもまあこれだけ面白く作れたものです。

ラストのオチも最高。

今までの2本同様、他の追随を許さないという“ルビッチ・タッチ”、またもやその神髄を堪能させてもらいました。

シェイクスピアとナチスが絡む圧巻のストーリー展開、唸る細部の描写、ショパンの「軍隊ポロネーズ」、この映画の撮影終了直後飛行機事故によりわずか33歳で亡くなったキャロル・ロンバード、その圧倒的魅力、もう完璧な映画。こんな素敵な人が奥さんだったなんて、さすがクラーク・ゲイブル!

しかし何よりも驚愕するのは、これが1942年の作品で、ルビッチがドイツ出身だということ。

傑作という言葉では失礼でしょう、大傑作。

 

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[原題]To Be or Not to Be
1942/アメリカ/99分
[監督]エルンスト・ルビッチ
[出演]キャロル・ロンバード/ジャック・ベニー/ロバート・スタック

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