『フロント・ページ』(ビリー・ワイルダー)

フロント・ページ

ビリー・ワイルダー×ジャック・レモン×ウォルター・マッソー、つまらないわけはない、そして、十分面白い。
いつもリメイクについて散々文句を言っていますが、これならかなりましな方でしょう。これで文句を言ったら罰が当たるというもの。

でも、不幸なことに先に『ヒズ・ガール・フライデー』を観てしまってるんだよなぁ。

あの大傑作と比べてはいけないんでしょうが、最強トリオならやっぱり期待しちゃうじゃないですか。
予想通りではありましたが、残念ながら数段落ちる。

フロント・ページ ウォルター・マッソー ジャック・レモン

まずは、105分という時間。今時の映画に比べたら十分上手くまとめていますが、それでも長い。
『ヒズ・ガール・フライデー』は92分ですからね。
しかも、向こうはヒルディが女性なので、さらに二人の恋愛まで絡んでいます。

さらに『ヒズ・ガール・フライデー』がとんでもないのは、体感時間が92分のさらに半分くらいなこと。
この映画は、途中で時計を見るようなことはありませんが、105分よりは長く感じましたね。

スピード感が圧倒的に違う。確かにジャック・レモンもウォルター・マッソーも喋りまくってますが、悲しいかな二人ともこの時点ではちょっと歳を取り過ぎていて、ジャック・レモンなんかこの時49歳ですからね、この設定ではちょっと苦しい。
むしろ、編集長のウォルター・マッソーの方がいい感じ。

フロント・ページ ウォルター・マッソー

そして、そりゃこのジャック・レモン×ウォルター・マッソーのやりとりは一般レベルからしたら十分凄いですが、ケイリー・グラント×ロザリンド・ラッセルはこれの比じゃない。

あのイーストウッドをして「早い会話の手本なら『ヒズ・ガール・フライデー』だ。ハワード・ホークス監督の最高傑作だ。」と言わしめただけのことはあります。

コメディをやらせたら天下一品のケイリー・グラント相手に、互角以上のロザリンド・ラッセル。

でも、あの映画はとんでもない大傑作なので、やっぱり比べてはいけないんでしょうね。

それでも、ビリー・ワイルダー&I・A・L・ダイアモンドの脚本はさすがな部分もあって、ラストに登場人物のその後が脇役も含めて紹介されますが、細かい伏線がちゃんと回収されてましたね。

もし『ヒズ・ガール・フライデー』が未見でしたら、十分に楽しめると思います。
今の目からすると、ちょっと古くさい感じはするかもしれませんが。

ですが、この映画よりもぜひ『ヒズ・ガール・フライデー』を。
別の映画をお薦めするのもどうかと思いますが、文句なしでお薦めです。

 

フロント・ページ [DVD]

[原題]The Front Page
1974/アメリカ/105分
[監督]ビリー・ワイルダー
[脚本]ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
[出演]ジャック・レモン/ウォルター・マッソー/スーザン・サランドン

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