鎗火徒然vol.2~字幕でこうも違うのか・・・~

『ザ・ミッション/非情の掟』は特典映像も凄い!というタイトルの日記を少し前に書いたんですが、この映画についてはまだまだ語りたいことが出てきそうなので、鎗火徒然としてシリーズ化することにしました。
いつまで続くかは未定ですが。

“鎗火”と聞いて何のことかが瞬時にわかる同士の方々、気軽に読んでいただけたら幸いです。

鎗火って何?という方は、まずは『ザ・ミッション/非情の掟』という映画をご覧になって、もし気に入っていただけたら、再度この記事に戻ってきていただけたら嬉しく思います。

さて、録画したビデオでもうかなりの回数観て、レンタルでDVDを借りて特典映像も観たのに、ついにDVD買っちゃいました。(DVDはレンタルもセル版も同じものだと思いますが、セル版には特典映像の銃の解説の文章の方のが紙でも付いています)

まず観たのは、例の銃マニアの方の解説。いやあ、何回聞いてもあまりのマニアぶりにたまげます。
これを観てから本編を観るとさらに面白くなるので、未見の方はぜひ。

次に、初めてDVDで本編を観たわけですが、愕然としました、字幕のひどさに…。

初めからこの字幕で観ていたらこれはこれでよかったのかもしれませんが、すでに次の台詞が想像できるくらいまで前の字幕が染み着いているので、勘弁してよというくらいひどい。

挙げだしたらキリがないですが、一つ良い例を。

オープニングでマイクが、客の社長にホテルとホステスを手配して、社長からチップをもらうシーンがあります。
その時のマイクの表情には、社長に対する軽蔑の思いと、こんなことをしている自分への情けなさと苛立ちが出ています。

そして、ボスの護衛5人のうちの一人としてお呼びがかかり、ボスに久々に会えた時の、光栄ですという表情。

さらに、命に別状はなかったものの、ボスが撃たれるという失態を演じた後、5人が責任を痛感し沈んでいると、ボスは言います。
「昨夜殺されても、運が悪かっただけだ。皆に責任はない。上に立つ者なら覚悟はできている」
それを聞いた時のマイクの尊敬の眼差し。
命を懸けて守る価値がある人なんだと、そんな人の護衛に選ばれたことへの喜び。

これらのシーンから、かつてボスのために働き、足を洗った後は不本意な毎日を送り、またボスから声がかかって自らの“居場所”に戻ってきた、そんなマイクの過去と現在が浮かび上がります。

さて、そこで問題の字幕。
護衛に選ばれた後、ボスの家で監視カメラの映像が映ったテレビを観ていると、例の社長からホテルとホステスを手配してくれと携帯に電話があります。

NHKの字幕では、「辞めたんでね、失礼」と電話を切り、その後「ヘイコラできるか」と呟きます。

それに対しDVDでは、「お断りします、では」と電話を切り、「あきれた好色ジジイだ」と呟きます。

この差はとてつもなく大きいと思うんですが、いかがでしょうか?
というより、同じ原文を訳しているはずなのに、どうしてこうも違うんでしょうか?

こういう何気ない台詞が、人物像を形成する上で重要だと思うんですが、「ヘイコラできるか」の一言には、先ほど書いたマイクの過去と現在が見事に反映されているのに対し、「あきれた好色ジジイだ」からはそのかけらもうかがえません。
広東語はまったくわかりませんが、原文ではどう言っているのか、大変気になります。

もう一つ印象的なのを。
“最後の晩餐”でグァイとロイが銃を突きつけあった時に、駆け込んできたフェイがロイに銃を向けたのに対し、マイクがフェイに銃を向けて一言。

NHKでは「ややこしくするな」
これはこの映画の中でも痺れる台詞の一つです。

それがDVDだと、「フェイ、早く言え」

この違いもとてつもなく大きい。

状況からして、ひょっとしたら原文はDVDの方に近いのかもしれませんが、だとしたらそれを「ややこしくするな」と意訳した金丸美南子氏は素晴らしいとしか言いようがありません。

こんな感じで、NHKの方が素晴らしすぎるのか、DVDの方がひどすぎるのか、それは広東語がわからないので何とも言えませんが、両者の差は、映画の印象が変わってしまうほど、とてつもなく大きいと思います。

自分は劇場では観れてないんですが、劇場でご覧になった方は、今挙げた例はどちらの字幕でしたか?
どちらとも違って第三のバージョンでしょうか?
もし覚えていらっしゃったら、教えていただけたらと思います。

こんな感じで、これからも不定期でこの映画についてのいろんな思いを書いていきたいと思います。

同じく“鎗火”を心から愛する同士の方、ぜひコメント欄に熱い思いをお寄せ下さい。お待ちしています。

 

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