劇場で見逃したのが悔やまれた1本でしたが、やっぱり素晴らしかった…。映画館で観たかったなぁ。
というわけで今回は、ジョージ・クルーニー主演『ラスト・ターゲット』です。
派手にドンパチやっているだけで一度観れば十分なハリウッドアクション映画の対極にある、静かな、ほんとに静かな映画。
劇中でセルジオ・レオーネの『ウエスタン』を引用しているだけのことはあり、レオーネ必殺の“引っ張りの美学”が炸裂。
静かに、少しずつ高まる緊張、いざ事が起これば一瞬で全ては終わる。これだよこれ。
この手の映画の“静”から“動”への空気の変化としては、近年では屈指の出来。
そして、いつも書いている、ノワールの出来の物差しの一つ「濡れた石畳」、これ一つとっても、さすがはアントン・コービン、レベルが違う。
ロケ地がどこも素晴らしく、特に、迷路のように入り組んだ坂道や階段だらけのカステル・デル・モンテの街、1対1の銃撃戦の舞台としてこれほど相応しい場所もそうはないでしょう。
この手の映画ではお約束の“試し撃ち”のシーンの川べりの美しさも特筆もの。
余計な説明台詞がまったくといっていいほどないのも素晴らしい。
一人部屋で筋トレをし、銃を改造し、蝶についての本を読む。
その体が、所作が、蝶の刺青が、彼の過去と人となりを浮かび上がらせます。
手を見ただけで“芸術家”ではなく“職人”だと見ぬいた神父、最後の仕事として銃を手渡すことになる美しき殺し屋、そして、若き娼婦との出会い。
見知らぬ土地、新たな人々との出会い、孤独な殺し屋が初めて新しい一歩を踏み出そうとする、そして…。
派手なことはほとんど何も起きない、それでも、だれるどころか素晴らしい緊迫感が続く至福の105分。
静かな名作。
[原題]The American
2010/アメリカ/105分
[監督]アントン・コービン
[出演]ジョージ・クルーニー/ヴィオランテ・プラシド/テクラ・ルーテン
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