『奇跡の海』(ラース・フォン・トリアー)

奇跡の海

事故によって全身麻痺となった夫から、“もうお前を抱くことはできない。愛人を見つけて、その時のことを話してくれ”と言われ、それを実行に移し悲劇へと突き進んでいく女性の話。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー監督作。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を見に行った時には劇場は満員でしたが、この頃はまだ空席ばかり…。

両作品とも、無垢で一途なヒロインが主人公、そして基本的に両作品とも暗いです。
そして、共に物語は悲劇へと突き進んでいきます…。

奇跡の海 エミリー・ワトソン

それでも、ラストに救いがある分本作の方が好きです。
ラストは、そんなのないよと言ってしまえばお終いですが、この悲劇的な愛の物語を締めくくるには、このラストでよかったと、思わずほっとため息がこぼれるそんなラストシーン。

この監督の作品がどこか暗く不安定な感じが常にするのは、前編手持ちカメラで撮られていることによるところが大きいと思います。
常に登場人物の視点により近いところで、しかもぶれながら揺れるような映像は、悲劇的な物語の、行き場のない感情を観る者に共感させます。

宗教的なこともあり、無宗教の日本人にはどこかついていけないところもある主人公ですが、ここまで一途に人を愛するその姿には、理屈抜きに心打たれます。

それにしても、この映画はなんといってもエミリー・ワトソン。あまりの凄さに脱帽。
鬼気迫るその演技は怖いくらいで、神との対話のシーンなど凄すぎ!
この作品以来、ずっと彼女の虜です。

 

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[原題]Breaking the Waves
1996/デンマーク/158分
[監督]ラース・フォン・トリアー
[撮影]ロビー・ミューラー
[出演]エミリー・ワトソン/ステラン・スカルスガルド/カトリン・カートリッジ

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