『キック・アス』(マシュー・ヴォーン)

キック・アス

ブログ復帰後最初の感想はこの映画から。
地元でもようやく公開されたので、久々に映画館に駆けつけました。

恐るべしマシュー・ヴォーン。
しょっちゅう使っているタランティーノのどの使い方よりも凄い、完璧なエンニオ・モリコーネの使い方。

『夕陽のガンマン』のメインテーマをバックに殴り込みをかけるヒット・ガールに、痺れるを超えて震え、あまりのかっこよさに涙まで出る始末。
かっこよくて涙が出るなんて、『ストリート・オブ・ファイヤー』のオープニングの、シルエットのレイヴン以来。

しかも、この殴り込みのシーンが凄いのは、単に『夕陽のガンマン』のテーマがかっこよくて、ヒット・ガールのかっこよさと相まって最高!なんていうレベルじゃないところ。
ちゃんと意味までわかって使っているところが凄い。

この映画、序盤から主役のキック・アスは情けない奴で、脇役の一人に過ぎないヒット・ガールの方が遥かにかっこよく、美味しいところは全部彼女が持って行っていますが、それでも、一応主人公はキック・アスです。

それが、物語も終盤、あることがあって、話的にも、完全に彼女の話に切り替わります。キック・アスはその手伝いをするだけです。
脇役である彼女が文字通り主役になり、彼女の“復讐”の物語が幕を開けます。

キック・アス クロエ・グレース・モレッツ

ここで、『夕陽のガンマン』をご覧になった方はおわかりかと思いますが、あの映画、主役はもちろんイーストウッドです。
ですが、最後に決闘を行うのはリー・ヴァン・クリーフとジャン・マリア・ヴォロンテであり、イーストウッドは横でただそれを観ているだけです。
あの映画は、一応イーストウッドが主役の映画でありながら、リー・ヴァン・クリーフの“復讐”の物語であり、美味しいところも全部彼がもっていきました。

この構図を完璧に理解した上での、『夕陽のガンマン』のメインテーマの起用。
あまりの完璧さに、心から脱帽。
このシーンだけで、今年のベストワン確定。

他では、Gnarls Barkleyの「Crazy」の使い方も素晴らしかった。あのシーンのために書かれたかと思うくらい、歌詞が完璧に合ってましたね。

それにしても、クロエ・グレース・モレッツ。『(500)日のサマー』で観た時もタダものじゃない感はありましたが、タダものじゃないどころかとんでもなかった!

こんな感想をお読みになっている時間があったら、未見の方はぜひ映画館に。
『夕陽のガンマン』をバックに殴り込みをかけるヒット・ガールだけでも、見逃したら一生後悔します。
必見。

 

キック・アス [Blu-ray]キック・アス [Blu-ray]

[原題]Kick-Ass
2010/イギリス・アメリカ/117分
[監督]マシュー・ヴォーン
[出演]アーロン・ジョンソン/クリストファー・ミンツ=プラッセ/マーク・ストロング/クロエ・グレース・モレッツ/ニコラス・ケイジ

→予告編 →他の映画の感想も読む

関連記事

この前UPしたエントリーで、『夕陽のガンマン』の使われ方が凄すぎるという話を書きましたが、そのことで頭がいっぱいすぎて、もう一つの大ネタを忘れていました。 先ほどGnarls Barkleyの「Crazy」についてtwitterで[…]

関連記事

セルジオ・レオーネ監督とクリント・イーストウッドが『荒野の用心棒』に続いてコンビを組んだ、マカロニ・ウエスタンの代表作。 葉巻にポンチョのイーストウッドは相変わらずかっこいいですが、今回はさすがのイーストウッドも、“大佐”に扮した[…]

関連記事

今回の1本は、とにかくかっこよくて痺れる作品。 久々に街に戻った流れ者のトム・コーディは、暴走族に誘拐されたかつての恋人でロックの女王であるエレンを救出するため、二人の仲間と敵地に乗り込んでいく…。 冒頭のダイアン・レイン扮する[…]