『ファイヤーライン』(ジョニー・トー)

ファイヤーライン

ジョニー・トー第23弾。
今回の舞台は、黒社会ではなく消防士。

火災現場に駆けつける消防車の隊列に、感情を徐々に高ぶらせるような音楽が被さっただけで、もう震えがくるくらいたまりませんね。

『PTU』の時に、「夜の街を歩き回るPTU、それだけでもう十分に素晴らしい」と書きましたが、こういう何でもないシーンで痺れさせるトーさん、これだからやめられません。

そして、ラウ・チンワンかっこよすぎ…。
署長ではありませんが、みんなの信頼が厚いリーダー格。
『タワーリング・インフェルノ』のマックィーンにはさすがにかなわないものの、痺れまくりです…。

負傷した署長(『ヒーロー・ネバー・ダイ』のマスター)の代わりに、新たに上司としてやってきたのがアレックス・フォン。

ラウ・チンワンとは意見の相違がありますが、徐々に心を通わせていき、後半の大火災では、絶体絶命の窮地に、共に力を合わせます。

炎の中に取り残された仲間を助けるため、炎の中に消えていくアレックス・フォン。
放水で援護しながら固唾を飲んで待つラウ・チンワン以下メンバーたち。
燃えさかる炎の中から、部下を背負い現われるアレックス・フォン!

しかし、炎の勢いは止まることを知らず、次々と起こる爆発。

隊員の中では紅一点の、トー組の常連ルビー・ウォン。
今まで観た中で一番かっこいい。

さらに、同じくトー組の常連レイモンド・ウォンはこれがデビュー作。

初めは消防署の滑り棒を降りることもできなかった男が、アレックス・フォンやラウ・チンワンと修羅場をくぐり抜けていくうちに、徐々にたくましくなっていきます。

ラウ・チンワンとキスシーンまである女性には、『パラダイス!』で金城武相手にヒロインを演じたカルメン・リー。

そして、ラム・シューファンにとっては、この作品は記念碑的作品。
雑用係から映画界に入り、その後トー組の運転手をしていたというラム・シュー。
すでに俳優としても映画に出ていたもののまったくぱっとしなかったところを、トーさんにこの作品で起用されたことをきっかけに、一躍ジョニー・トー作品の常連、そして香港映画を代表する名バイプレイヤーに。
この作品では出番はほんの数秒ですが、インパクトは十分。

ラウ・チンワン、アレックス・フォン、そして若手たち。
文字通り命を懸け、助けを呼ぶ声が聞こえれば迷わず炎の中へ飛び込んでいく隊員たち。

消防署への視察の際に、一言物申したラウ・チンワンを快く思っていなかったお偉方の、ボロボロになって還ってきたラウ・チンワンを見る目つきが違います。
その視線を涼しい顔で受け止めるラウ・チンワン。

ファイヤーライン アレックス・フォン ラウ・チンワン

体を洗い飲み物を飲んで一息ついたのも束の間、またすぐにヘルメットをかぶり命懸けの任務に向かいます。
アレックス・フォンとラウ・チンワンを先頭に、新たな任務へと歩き出す隊員たち。
むちゃくちゃかっこいい。

この後すぐ『ヒーロー・ネバー・ダイ』『ザ・ミッション/非情の掟』を撮ることになるトーさん。
その先駆けとして十分な、痺れる一作。

 

ファイヤーライン [DVD]

[原題]十萬火急
1997/香港/104分
[監督]ジョニー・トー
[脚本]ヤウ・ナイホイ
[出演]ラウ・チンワン/アレックス・フォン/レイモンド・ウォン/ラム・シュー/カルメン・リー/ルビー・ウォン/ダミアン・ラウ

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