『新婚道中記』(レオ・マッケリー)

新婚道中記

ケイリー・グラント第4弾。
監督は『我が輩はカモである』に続いて登場のレオ・マッケリー。

『毒薬と老嬢』『ヒズ・ガール・フライデー』を観てもわかるように、ケイリー・グラントのコメディは傑作揃いですが、今回も抜群に面白い。

別居することになったジェリー(ケイリー・グラント)とルーシー(アイリーン・ダン)、お互いに新しい相手ができるが、どうもお互いのことが気になり…。

アイリーン・ダンは同じレオ・マッケリー監督の『邂逅』を観ていますが、こういうコメディもできるんだとびっくり。

ケイリー・グラントのライバルには『ヒズ・ガール・フライデー』と同じ“田舎者”ラルフ・ベラミー!
ケイリー・グラントのライバルはこの人しかいませんね。今回もいいようにあしらわれています(笑)

自ら椅子に伏せて目隠しをしておいて物を探すゲームをする二人の飼い犬“スミス君”が傑作で、見つけてほしくないものまで見つけてしまう活躍ぶり。
法廷で二人が飼育権を争う時にも現れて、呼びかけてどっちの方に行くかで飼育権を決めるシーンも笑えます。
俳優犬とのことですが、助演賞ものの名演技。

この映画、同じようなストーリーの『ヒズ・ガール・フライデー』には及ばないものの、それは比べる相手が悪いだけ。

新婚道中記 ケイリー・グラント

現れて欲しくない人が現れた時のばつの悪さが最高で、中でも一番の傑作は、ルーシーが叔母にラルフ・ベラミー親子が来た時に代わりに出てきてくれと頼んでいると、まず現れたのはルーシーの歌の先生。

この男、二人の離婚の引き金にもなったいわくつきの男。
しかし実は、ジェリーに対し疑いを晴らして欲しいと頼むため、ルーシーが呼んでいたのです。

二人が作戦を練っていると、来るはずのないジェリーが現れ慌てるルーシーと先生。
先生はルーシーの寝室に隠れます。

そこへ現れたジェリー、先生が置き忘れた帽子の使い方も絶品。

そこへ今度はラルフ・ベラミー親子が登場。
いてはまずいジェリーは寝室に隠れようとしますが、寝室に行ってもらっては困るルーシー。
ルーシーを振り切って寝室に隠れるジェリー、ふと振り返ってみると…。

ルーシーがなんとかラルフ・ベラミー親子の相手をしていると、寝室からとんでもない物音が。
大掃除だとごまかしますが、大掃除でもあんな凄い音はしません(笑)
画面には映りませんが、寝室ではもちろんジェリーと先生が乱闘中。

この一連のシーンの可笑しさといったらもうそれは凄いことになっています。

ラスト近くの“ジェリコの壁”ならぬ鍵が壊れたドアの使い方も巧い。
ドアが開いて欲しいジェリーが窓を開けて風を送ろうとすると、ドアの向こうでは猫がドアにもたれていて動かない、こういう細かいところがほんとに巧い。
鳩時計の使い方も見事の一言。

ケイリー・グラント、今回も大いに笑わせてもらいました。
椅子からずっこけるケイリー・グラント、そのずっこけ方と起き上がった時の乱れた髪形は必見です!

 

新婚道中記 [DVD]

[原題]The Awful Truth
1937/アメリカ/92分
[監督]レオ・マッケリー
[出演]ケイリー・グラント/アイリーン・ダン/ラルフ・ベラミー

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