今回の1本は、フランク・キャプラの傑作コメディ『毒薬と老嬢』です。
人気演劇評論家のモーティマーは、隣家の神父の娘エレーンとの結婚の報告に、叔母姉妹を訪ねる。
そこで彼が見つけたとんでもないものとは…。
コメディなので内容に触れても構わない気もしますが、知らない方がより楽しめると思いますので内容は省略。
舞台劇の映画化なので、場面はほとんど叔母姉妹の家ですが、脚本と演出の圧倒的面白さと、とんでもない登場人物の数々。
結婚を否定する本を出しておきながら自らが結婚に踏み切ったモーティマー。
ハネムーンに出かけるはずがそれどころではなくなったモーティマーにまったく相手にされないフィアンセ。
○○を見つけて動転してるモーティマーのことを、「今日のモーティマーはなんだか落ち着かないわね」「結婚するからでしょ」などとのんきに話す、一番の曲者の“毒薬と老嬢”な叔母姉妹。
自らが“ルーズベルト大統領”だと思いこみ家の地下室に“パナマ運河”を掘っているテディ。
しばらくぶりに家に帰ってきたフランケンシュタインにそっくりな兄ジョナサン。
兄と一緒に来た外科医アインシュタイン博士(扮するのは『M』『マルタの鷹』の怪優ピーター・ローレ!)。
他にも、なぜか脚本を書いていてモーティマーに構想を聞いてもらおうとする警官、養老院の院長などなど、一筋縄ではいかないキャラのオンパレード。
中でも傑作はテディで、突撃ラッパを鳴らし、階段を昇る時には必ず「突撃!」と言いながら駆け上がります。
これには毎回爆笑。このギャグだけでもこの映画を観る価値は十二分にあります。
舞台と同じ配役もあるなど、脇をがっちり芸達者で固め、一人あたふたするのが二枚目ケイリー・グラント。
圧倒的なスピード感で突き進んでいくこれでもかというドタバタ喜劇で、こういうのを観てしまうと並のコメディでは物足りなくなってしまうのがつらいところでもありますが、オープニングからラストまで極上の笑いを提供し続けてくれる2時間。
[原題]Arsenic and Old Lace
1944/アメリカ/118分
[監督]フランク・キャプラ
[出演]ケイリー・グラント/プリシラ・レイン/ジョセフィン・ハル/ジーン・アディア/レイモンド・マッセイ/ピーター・ローレ