今回は、“男ならこれを観ろ!”(まだまだ募集中です!)に投稿していただいた中から、稲本作蔵様、りざふぃ様ご推薦、『要塞警察』です。
御二方、ありがとうございます!
警官による非行少年射殺、引っ越中の警察分署に一日だけ配属された警部補、おばあちゃんに一緒に住むように説得しに行く父と娘、護送中の凶悪犯。
アイスクリームが、囚人の一人の病気が、今全てを結びつける…。
ジョン・カーペンター監督が、当ブログでもUPしているハワード・ホークス監督の傑作西部劇『リオ・ブラボー』にオマージュを捧げた作品ですが、面白さで本家に負けていません。
ただ時間を潰すだけだったはずの警部補。
それが、護送中の凶悪犯を一時的に収容するはめに。
それでもまだ、これは何の問題もない事態。
しかし、この警察分署に一人の男が逃げ込んだことから、事態は一変する。
まず一言。 暗い、とにかく暗い。話がではなくて、画面がです。
時間的にも夜、しかも電気が壊れたため真っ暗。
さらに、電話も不通になったため、まさに陸の孤島。
この“閉塞感”が素晴らしく、周囲を包囲する姿なきストリートギャングたち。
様子をうかがいに外に出た警官をあっさり殺し、いよいよ襲撃を開始。
しかも、彼らの武器はサイレンサー銃なので、近隣の住民にはわからない!
警部補と婦人警官だけではとても手に負えないため、やむなく囚人にも銃を渡し一緒に戦うことに。
ここで、リッキー・ネルソンがジョン・ウェインにライフルを投げ渡したあの有名なシーンが、ちゃんと再現されてます。
ストリートギャングたちの不気味さも抜群で、人を殺すことはもちろん、自分が死ぬこともまったく恐れていないため、殺しても殺しても次から次へと溢れ出てきます、まるでゾンビ。
彼らの“個”を排除して、“姿なき襲撃者”にしたところが、この映画の最大の勝因でしょうね。
あと、最近の映画ではやたらめったら銃を撃ちまくりますが、弾に限りがあるのもいい。
いったん落ち着いた時点で、残りの弾は全員合わせてもわずか8発。
でも、8人よりはるかに多くの敵がまだこれから襲ってくるわけです、この感覚。
さらに、ジョン・カーペンター監督自身の手による、音楽の素晴らしさも触れないわけにはいきません。
テーマ音楽のように繰り返し流れる音楽のかっこよさはもちろん、その他も、静寂と緊迫の見事な対比。
徐々に警官と囚人の間に生まれる友情、男顔負け(でも可愛い!)の婦人警官と囚人との会話、閉塞空間の中での心のやりとりも見所十分。
ただ、実は、警察分署が取り囲まれていざ銃撃戦が始まる後半よりも、アクションがほとんどない前半の方が抜群に面白い。
ちょっとした運命の掛け違いがあれば、一生出会わなかったであろう人たちが、ほんのささいなことの重なり合いで一つに結びつけられていく。
この部分の脚本の巧さは舌を巻くほど。
そして、一切の感傷を排除した、暴力の突発性。
●●の射殺シーンは鳥肌もの。
最近ちょくちょく70年代のアクション映画を観るようにやりましたが、軽くないけど重すぎない、劇中に漂う空気がたまりません。
この映画も、何よりその“空気”が素晴らしく、91分という長さもちょうどいい。
スターが誰も出ていなくても、目に見えた低予算でも、脚本と演出と音楽だけで(しかも全部一人で担当)ここまで面白いものが作れるという見本のような作品。
傑作。
要塞警察 アサルト・エディション HDリマスター版 [Blu-ray]
[原題]Assault on Precinct 13
1976/アメリカ/90分
[監督・脚本・音楽]ジョン・カーペンター
[出演]オースティン・ストーカー/ダーウィン・ジョストン/ローリー・ジマー
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