『導火線 FLASH POINT』(ウィルソン・イップ)

導火線 FLASH POINT

「第12小節のEフラットだ」
音楽隊に異動させられて、嫌々バスドラを叩いているかと思いきや、まさかのダメ出し!

というわけで、ただの暴力刑事ではなかったドニーさん主演、ついに日本版が出た『導火線』です。

といきなり小ネタから入ってしまいましたが、笑えるシーンもちらほらあるんですよね。
砂浜でのお年寄りたちであったり、ルイス・クーが『恋する惑星』の金城武みたいに電話をかけまくるシーンだったり。

ただ、87分の映画ですが、1時間弱まではそんなにたいしたことはありません。
もちろんつまらなくはないですが、もう少しなんとかなるだろうというシーンも。

一番は、ルイス・クーが連絡を取るために戻るシーン。
あんなに冷や汗かいて、しかも携帯の通話記録を削除してないなんて、今時詰めが甘すぎ…。
チキンのくだりも、フラグ立ちすぎ…。

ですが、前半にも見所がないわけではなく、ファン・ビンビンがとにかく美しい。

導火線 ファン・ビンビン

ある意味彼女の美しさでもっている前半です。

いったいいいつになったらドニーさんの超絶アクションが炸裂するんだよ!と、そろそろ痺れが切れてきた57分過ぎに、ついに、テーブルごと吹き飛ばしてのソバットが炸裂!

導火線 ドニー・イェン

それでもまだスイッチは入らないんですが、この後敵が非道なことをしたため、ついにドニーさんのスイッチが入ります。
映画終了の30分前。ここまでが長かったんですが、この後はもう最高レベルのアクションの乱れ打ち。

以下、ネタバレ全開。ただし、ストーリーのネタバレではなく、アクションのネタバレです(笑)

まずは三男タイガー戦。
敵の飛び蹴りを余裕で見切った後、右左のパンチから左ハイ、首根っこを掴んでの膝12連発、再び攻撃を見切ってから、右ストレート、左ボディ2発、右ロー、右ハイ、さらに膝3連発。

いったん距離を取った後ひたすらパンチを叩き込み、ようやく敵がふらついてきたところを、再び距離を取って、助走をつけて素早くバックを取ると、危険な角度でのバックドロップ!しかも、今回もご丁寧に机叩き割り付(笑)
コンクリートの上でのバックドロップ、十分に殺人技です。

導火線 ドニー・イェン

これでほぼ勝負はついているんですが、タイガーもなかなかで、まだ目は死んでいません。
そこでさらに畳み掛けます。

タックルで倒すと、後はマウントポジションからの容赦ない顔面パンチ。
これは凄惨すぎて、さすがに画面には映せません(笑)

タイガーが多少は痛めつけられても仕方ない非道なことをしているので、周りの人たちも最初はドニーさんを応援していたと思いますが、さすがにドニーさんのやりすぎぶりに、皆さんドン引き(爆)

導火線 ドニー・イェン

これだけいろいろ攻防がありますが、時間にして2分半くらいなんですよね。
並の映画なら十分クライマックスなんですが、『SPL/狼よ静かに死ね』でのウー・ジン戦がサモ・ハン戦の序章に過ぎなかったように、この凄さでまだ序章です。

この後、裁判やら何やらあっていったん小休止し、結構な時間の激しい銃撃戦もありますが(谷垣さんも登場!)、銃撃戦はあえて触れるほどでもないです。

上映時間もラスト10分くらいとなったところから、いよいよ大ボス、対トニー戦です。
『SPL/狼よ静かに死ね』のサモ・ハンに比べると重量感でかなり劣るコリン・チョウですが、スピード、技の切れ味、ドニーさんに全然見劣りしません。

いくら一人が凄くても相手も凄くないと最高峰のバトルにはなりませんが、このコリン・チョウは役者十分。

先ほどのタイガー戦みたいにいちいち全部書いていくととんでもない長さになるので、一部は省略します。

序盤はむしろトニー優勢。左後回し蹴りの切れ味なんか素晴らしいですね。
この蹴りに代表されるように特に蹴りが素晴らしく、打撃だと結構互角なんですが、ドニーさんには、投げと関節技があります。

しかも、下になっても相手をちゃんと足でコントロールすればむしろ上にいる方が攻撃できないという、総合格闘技をご覧になったことがある方にはよく見かける攻防もちゃんとあります。

導火線 ドニー・イェン

三角絞めを持ち上げて叩きつけるなんていうのも定番ですね。しかも、コンクリートの地面に叩きつけるだけでなく、鉄の手すりにも。これにはさすがのドニーさんも悶絶。
さらに3発目がコンクリートの橋みたいなところで、これがエグい。
でも、これを喰らいながら三角絞めを外さずに相手も叩きつけるドニーさんは凄すぎ…。
そのまま二人とも地面に落下。さすがに二人ともしばらく動けません(笑)

導火線 ドニー・イェン

 

導火線 コリン・チョウ

立ち上がる二人。こういう時って、体はむちゃくちゃ痛いはずなのに、おぬしやるなといい表情しますよね。

もっと広いところでやろうぜとドニーさんの手招き。
構えも取り、いざ再開。

導火線 ドニー・イェン コリン・チョウ

打撃戦はやっぱり互角で、一見入っているように見えるドニーさんの攻撃もちゃんとブロックしているトニー。
中でも、タイガー戦ではドニーさん優勢の流れを作った膝。しかもドニーさん渾身の膝蹴りを右腕で完璧にブロックし、同時に左右の肘。この攻防は凄い。
ドニーさんも勢いをつけて膝蹴りを出しているため体が流れており、最初の左肘はかわすものの、2発目の右肘はかわしきれず入ります。
もうたまらないやりとり。ここだけでも繰り返して何度でも観たい。

さすがにいったん距離を取るドニーさん。
ここで必殺のソバットが出ますが、それでも止まらず飛び込んでの渾身の肘。
この肘は入ったものの、ここで懐に入られたのがトニーとしては悔やまれるところ。
そのまま掴んでタックルに出るドニーさん、このまま押し倒してまたマウントポジションからの顔面パンチラッシュか!と思いきや、なんとドニーさんのタックルを、膝を落として耐えきるトニー。これだよこれ!

導火線 ドニー・イェン コリン・チョウ

ここらへんまでくると、もう映画を観てるんだか格闘技を観てるんだかわからなくなってきていますが、もう映画の中のアクションのレベルは完全に超えています。

この時点でもまだ互角で、ドニーさんの左右のフックを完璧に見切った後、回転しながらの右肘なんか完璧にヒットさせてます。コリン・チョウすげえ!
ふらつくドニーさんにさらに左右のフックを叩き込み、とどめは勢いをつけての渾身の左ハイ!
これには思わずドニーさんも吹っ飛びます。

この段階に至っては、むしろドニーさん劣勢。あのドニーさんが劣勢。
もちろんそういう組み手にしているからなんですが、肝心なのは、ドニーさんが劣勢なことに違和感がないほど、コリン・チョウの動きが最高峰なこと。

鼻から大量に出血し、息もあがってきたドニーさん。
打撃戦では分が悪いと思ったか、ここからはより総合的な攻めに。

タイガー戦の決着をつけたバックドロップと見せかけ、一本背負い!この後さらに巴投げから、もう一発一本背負い!
打撃は凄いトニーですが、組むとやや弱く、組んでしまえばドニーさん優勢。

投げ三連発でダメージを与えると、もう一段ギアを上げ、打撃のスピードもさらにアップ。
打撃戦でも押し始めると、必殺の三段蹴りを叩き込んだ後、膝、足首と関節を締め上げ、ついにバックドロップ炸裂!

それでも起き上がってくる相手をフランケンシュタイナーで再び転ばせると、出た!チョークスリーパー!!
もう格闘技好きにはたまりません(笑)

これでもまだ決まらないので、おもむろにジャケットを脱ぎ始めるドニーさん(笑)
「覚悟しろ!」
Tシャツ姿になったドニーさんは、さらに打撃のスピードをアップ。腕の力を抜いてしならせてのパンチなんかもうたまりませんね。

事ここに至って完全にドニーさん優勢で、次々に技を叩き込むドニーさん。
もはや完全に勝負はついているんですが、ここへきて、本物同士の至高のバトルを繰り広げた男だけに許される、コリン・チョウのこの表情。

導火線 コリン・チョウ

た、たまらん…。

この後まだ少しありますが、このコリン・チョウの表情がクライマックスでしょう。

そこらへんの映画よりは十分面白いものの、最初の1時間弱は正直そうたいしたことはありません。
ですが、『リベリオン』が“ガン=カタ”以外はどうでもよかったように、『プライベート・ライアン』が最初の30分だけで十分だったように、この映画もラスト30分だけで十分でしょう。

もちろん実際の格闘技の攻防はこれよりずっと凄いですが、映画の中では、やはり“世界最高峰”でしょう。
ドニーさんが凄いのはもちろんのこと、コリン・チョウに最大限の拍手を。彼なくしてこの映画はありえません。

1本の映画自体なら傑作と呼ぶほどでもないでしょう、ですが、アクションに限って言えば、こう言うことに何の躊躇もありません、大傑作。

一番の問題は、この世界最高峰のアクションが映画館で観れないということ、今からでも遅くないので、お願いですから公開して下さいよ…。

 

導火線 FLASH POINT [Blu-ray]

[原題]導火線
2007/香港/87分
[監督]ウィルソン・イップ
[音楽]チャン・クォンウィン
[アクション監督]ドニー・イェン
[出演]ドニー・イェン/コリン・チョウ/ルイス・クー/ファン・ビンビン

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