『ウォリアーズ』(ウォルター・ヒル)

ウォリアーズ

今回は、男ならこれを観ろ!(まだまだ募集中です!)へ投稿していただいた中から、JB’s様ご推薦、『ウォリアーズ』です。
JB’s様、ありがとうございます!

NY中のストリートギャングに召集がかけられた。
各チーム9人まで、武器は無し。
そのカリスマ的演説で皆の心を掴んだリーダーが、演説中に暗殺されてしまう。
濡れ衣をかけられた“ウォリアーズ”は、リーダーがリンチにあい、残りの8人の、地元コニーアイランドへの逃避行が始まる…。

話としてはたったこれだけ。
いかにして地元まで逃げるか、たった一晩の話。

でも、召集の条件にあったため、武器がありません。
頼れるのは、己の拳骨のみ。

ウォリアーズ ウォルター・ヒル

いろんなチームの縄張りを通って、地元に帰らなければなりません。
しかも、最強の“リフス”がウォリアーズを捕まえろと号令を出し、ラジオのDJがウォリアーズのことを実況中継しているため、捕まえて名を上げようと、各チームがウォリアーズに襲い掛かります。

このラジオの女性DJもいいですね。顔は映らず、映るのは分厚い唇だけ。
そのソウルフルな声と、かける音楽ももちろんアナログレコード。

各チームのコスチュームを観ているだけでも飽きませんが、なんといっても“ベースボール・フューリーズ”でしょう。
コスチュームは野球のユニホーム、顔にはペイント、武器はバット。
ビジュアルのインパクトは最強なんですが、実力はたいしたことありません(笑)

ウォリアーズ ベースボール・フューリーズ

途中で、召集すらかけられなかった三流チームオーファンズの縄張りを通った時、男たちは情けないんですが、肝の据わった女の子がいて、ウォリアーズについてくることに。どうやらウォリアーズの代理リーダーであるスワンに気がある様子。
演じるのは、『ストリート・オブ・ファイヤー』ではマイケル・パレのお姉さんだったデボラ・ヴァン・フォルケンバーグ。

「いま、何かが欲しい、この短い一生の間に」と迫る彼女に、「君は今夜の出来事のひとつにすぎん、くだらん」と素っ気無いスワン、かっこよすぎでしょ(笑)

闘う時はとことん闘う、どう見ても無理と思えばひたすら逃げる、そのアクション部分が魅力なのは言うまでもないですが、実は一番素晴らしいのは、アクション以外の部分。

ウォリアーズの面々と女の子が地下鉄に乗っていると、スワンと彼女の向かいの座席に、セレブ風のカップル2組が座ります。
年齢的にはウォリアーズの連中と変わらないでしょうが、まったく別世界の人間です。
綺麗な衣装に身を包み、楽しそうな4人。

それに対し、散々走り暴れたスワンと彼女は、元々高い服ではない上に、薄汚れていて、彼女は髪の毛も乱れています。

ウォリアーズ ウォルター・ヒル

2人を、蔑んだ目で見つめる4人。
そんな自らを恥じた彼女が、髪を直そうと頭に手をやると、無言でその手を下ろさせるスワン。

耐えられなくて目を閉じた彼女の横で、視線をそらすこともなく、4人の方を見続けるその目、この目つきがほんとに素晴らしい。ここがこの映画のハイライトでしょう。

この一連のやりとりの間、台詞は一言もありません。
いかにもな台詞を喋らせず、6人の動作と視線だけで描ききったウォルター・ヒルはさすが。

これが、その後の台詞へと繋がるわけです。
必死の思いで辿り着いたコニーアイランド。しかし、その景色を前にして、スワンは彼女に呟きます。
「これが、必死で帰って来た所なのか。よそへ行くよ」
たった一晩の経験が、少年に言わせた一言。単なるアクション映画ではありません。

とどめは、Joe Walshの「In The City」。

少し前にUPした『ザ・ドライバー』もそうでしたが、やっぱり初期のウォルター・ヒルはいいなぁ。

 

ウォリアーズ [DVD]

[原題]The Warriors
1979/アメリカ/93分
[監督・脚本]ウォルター・ヒル
[歌]ジョー・ウォルシュ
[出演]マイケル・ベック/ジェームズ・レマー/デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ

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