『荒野の用心棒』(セルジオ・レオーネ)

荒野の用心棒

午前十時の映画祭で観て来ました。
先々週『ダーティハリー』を見逃すという大失態をやらかしたので、今回は意地でも鑑賞。

結構なお客さんの入りで、年齢層もいつもよりずっと上。いいですねーこの客層。
自分なんか公開時全然生まれてすらいないので、新入り気分で肩身狭く鑑賞。

よくファーストカットからやばいなんてことを言いますが、ファーストカットどころか、「第一音」からやばい。
マカロニの代名詞、エンニオ・モリコーネのあのテーマ曲、第一音から一気に別の世界に持っていかれます。

そこへ、銃声と共に「CLINT EASTWOOD」の文字。
その後もシルエットのかっこいいオープニングクレジットが続き、最後に「DERECTED BY SERGIO LEONE」。
この時点ですでに半分失神(笑)

この映画も含め何度もリメイクされていて、そのどれもが一応面白いことからもわかりますように、やっぱり基本は「設定」の面白さ。
それでも、『用心棒』を超えたとは言いませんが、負けず劣らず面白いのは、やっぱりイースウッド、レオーネ、モリコーネという、超ビッグネームの力。

モリコーネは先ほど触れましたが、イーストウッド、もう存在感が違います。
同じような格好(メキシコ編のポンチョを着た場合)でも、某ゲームの主人公とは次元の違う、有無を言わせぬ圧倒的な存在感。

もう彼がそこに立っているだけで、無言で睨みを効かせているだけで、凡百の台詞何億個分の価値がそこにある。
決して無口ではなく結構喋りますが、さすがはレオーネ、喋るところと黙らせるところのさじ加減も完璧。

そしてレオーネ。顔すら全部映らない、額から鼻くらいまでしか映らない、必殺の超クローズアップが今回も炸裂。
ビデオやDVDで何度も観ている映画ではありますが、この超クローズアップも、映画館だとやっぱり迫力が全然違います。
イーストウッドも、ジャン・マリア・ヴォロンテも、映画館での超クローズアップに耐えうる、ほんとにいい表情をしてるよなぁ。

そこまでアップにならないまでも、クローズアップは多用されていて、クライマックスはやはり人質交換のシークエンスですかね。
人質の二人、二人の横につく護衛、対峙する両陣営の面々、横から見物するイーストウッド、台詞なんか一切なしで、表情のクローズアップだけで状況とそれぞれの思いを語りきる。

歩き始める人質、母親の姿を見つけ泣き始める子供、たまらず出てくる父親、想定外の事態に一瞬固まる空気、駆け寄る母親と子供。
表情のアップの繋ぎからの、子供を登場させての「変化」、そして一気に動き出す空気、もう最高の緊迫感。

そして、やはりもう一つ触れないといけないのが、イーストウッドの「再登場」シーンでしょう。
立ち上る煙の中、うっすらと姿を表すイーストウッド。
まだやや遠景で、表情ははっきりとはわかりません。
画面中央ではなく、左から1/4くらい位置。この構図が完璧。

中央でももちろんだめで、もう少し右でも、もう少し左でもだめ。ここしかありません。
この位置にイーストウッドを「置ける」のがレオーネのレオーネたる所以でしょう。
もう1回言いますが、構図が完璧。

待ちかねたイーストウッドの登場に、ニヤリと不敵な笑みを浮かべるジャン・マリア・ヴォロンテ。
そして、煙が少しずつ晴れ、もう少し近くになったイーストウッドの姿が画面に現れます。

今度は画面中央。同じ中央でのズームの違いではなく、左1/4くらいからの中央へのズームアップ。
何度観てもかっこよすぎ。こういうのを「センス」と言うんでしょう。

その後は、おなじみの「鉄板」ネタですね。
「心臓を狙え」と散々挑発してますが、確かに頭を狙われたら終わりですからね(笑)

今回改めて思ったのは、酒場の親父はやはり只者ではない(笑)
あれだけの拷問にも一切口を割らないだけでなく、窓の所に隠れていた敵に気づいただけでも凄いのに、一発で仕留めてますしね。

この酒場の親父だけでなく、葬儀屋のじいさんや、ロホ三兄弟、バクスターの奥さんなど、脇もちゃんとキャラが立っていていいですね。

何度も観ている映画ではありますが、やっぱり映画館で観ると全然違います。
映画館で観た『ブラック・サンデー』も最高でしたが、これもまた絶品。

ああ、こうなるとますます『ダーティハリー』を見逃したのが悔やまれます…。
午前十時の映画祭、自分の所では次回は『荒野の七人』。
マックィーンやブロンソンやコバーンに会いに行かなければ!

 

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[原題]Per un pugno di dollari
1964/イタリア・スペイン・西ドイツ/99分
[監督]セルジオ・レオーネ
[音楽]エンニオ・モリコーネ
[出演]クリント・イーストウッド/ジャン・マリア・ヴォロンテ/マリアンネ・コッホ

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