今回は、監督作品としては『情婦』『アパートの鍵貸します』に続いて3本目となるビリー・ワイルダー作品から、『皇帝円舞曲』です。
始まりは、犬同士の喧嘩だった。
20世紀初頭のオーストリアはウイーン、フランツ・ヨーゼフ1世の元に、蓄音機を売りにアメリカ人のセールスマンスミス(クロスビー)が現れる…。
スミスが連れているのが、テリアのバトンズ。
バトンズに喧嘩で怪我をさせたのが、由緒正しき血統を持つ黒いフレンチ・プードルのシェヘラザード。
シェヘラザードには皇帝の愛犬ルイ(こちらも黒のフレンチ・プードル)との婚約の話が。
しかしシェヘラザードは、バトンズとの一件以来犬を見てはひたすら吠え、このままではお嫁に行けない状態。
医者からバトンズへの恐怖が原因と言われ、バトンズと対面させることに。
このシェヘラザードの飼い主が、伯爵令嬢ジョハンナ(フォンテーン)。
ずっと社交界で生きてきたジョハンナには、無礼きわまりないスミスはまさに“違う世界の人”。
しかし、シェヘラザードがバトンズに恋をしたように、ジョハンナもスミスの魅力に少しずつ惹かれていきます。
二人のことは、社交界中の噂の的。
そんな外野の声をよそに、二匹と二人の恋は進んでいきます。
しかし、どちらも許されぬ恋。
シェヘラザードはルイとの子供を生むことになり、スミスは皇帝に結婚の許しを請うために直談判に。
この皇帝も良い人で、スミスとジョハンナがほんとに愛し合っていることはちゃんとわかっています。
でも、過去にあった同じような話はどうなったか、皆不幸な結末を迎えているではないか。
週給22ドル50セントの男がほんとに彼女を幸せにできるのか。
君の生活を馬鹿にしているわけじゃない、殻に閉じこもった我々より君の方がずっと幸せかもしれない。
でも、ずっと殻の中にいた人間は、殻の外では生きてはいけない。
決して自分たち貴族が上で、君たち庶民が下というのではない。
ただ、“違う”というだけなのだ。
そうして皇帝はスミスに提案します。
ジョハンナを諦めるなら蓄音機を買う。
泣く泣くその提案を飲んだスミス、初めから商売だけが目的で君を利用しただけだ、心にもない言葉をジョハンナに浴びせ去っていくスミス。
その頃ついにシェヘラザードが出産。
その子供は…。
宮殿での大舞踏会にはヨハン・シュトラウスの「皇帝円舞曲」が鳴り響き、皇帝の狩りを追いかけ山に出掛けた折には、“アメリカの声”ビング・クロスビーの歌声が山々にこだまする。
オーストリア生まれのビリー・ワイルダーが、母国を舞台に、歌に踊りに恋。
犬同士の微笑ましい恋も相まって、観ているだけで幸せな気分になれる映画です。
[原題]The Emperor Waltz
1948/アメリカ/106分
[監督]ビリー・ワイルダー
[脚本]チャールズ・ブラケット/ビリー・ワイルダー
[出演]ビング・クロスビー/ジョーン・フォンテーン/ローランド・カルヴァー
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