今回は、“男ならこれを観ろ!”(まだまだ募集中です!)へ投稿していただいた中から、laughingcow様ご推薦、『北国の帝王』です。
laughingcow様ありがとうございます!
監督は、『ロンゲスト・ヤード』『ヴェラクルス』『特攻大作戦』に続いてロバート・アルドリッチ。
大不況真っ直中の1933年アメリカ、列車にタダ乗りし各地を転々とする失業者たちは“ホーボー”と呼ばれていたが、そんなホーボーを絶対に許さないのがオレゴン州19号貨物列車の鬼車掌シャック。
その列車に乗ることは死をも意味していた。
今、ホーボーたちの間で“北国の帝王”と呼ばれる男が、ついにシャックに挑戦状を叩きつける…。
いやあ、もうたまりませんねこれは。
何が凄いって、列車にタダ乗りしようとする男と、それを許すまいとする鬼車掌が、列車の上で壮絶な死闘を繰り広げるという、要はそれだけの話。
よくこれで2時間持つなというくらい、話としてはほんとにそれだけの話。
ただ、タダ乗りする方(Aナンバーワン)がリー・マーヴィンで、鬼車掌シャックがアーネスト・ボーグナインとくれば、事情は違ってきます。
ボクシングヘビー級タイトルマッチも顔負けの、これ以上ない濃い対決。熱い、熱すぎる…。
男では字が違います、まさに漢と漢の闘い。
大不況という時代背景もちゃんとあって、シャックの方も明日は我が身というわけで、簡単にタダ乗りを許すわけにはいかないのはわかります。
でも、もはやそれを通り越して、ホーボー退治が生き甲斐となっているシャック、タダ乗りするホーボーを見つけては、ニヤリと笑みを浮かべ、トンカチや鎖で殺してしまいます。
トンカチで殴ったり鎖で首を絞めるにとどまらず、オリジナルな武器も考案。
車両の下に隠れるホーボー用に、ロープの先に鉄の棒をつけて地面に垂らし、走る列車の勢いでそれが隠れるホーボーに当たるという武器、これがなかなかに強力(笑)
痛がるホーボーの声を聞いた時の、シャックの笑顔も怖すぎ…。
片やAナンバーワン、こちらはタダ乗りの名人で、ホーボーたちの間でもシャックを破れるとしたら彼しかいないと思われているような男。
貨車内で火事を起こしたり、線路に脂を塗って列車を止めたり、ポイントを切り替えてあらぬ方向に列車を行かせたりと、こちらも“プロの技”を駆使してシャックに挑戦。
誰からも見える駅の給水塔に挑戦状を書くというのもいいですねぇ。
こっそりとタダ乗りするのではなく、挑戦状を叩きつけてタダ乗り、それを見たシャックも、かかってこんかいとばかりに不敵な笑みを浮かべます。
周りでは二人の対決が賭けの対象になってたりもするわけで、いざタダ乗りする時も、他のホーボーたちが周りで見ていて、シャックにヤジを飛ばしていたりします。
一度はAナンバーワンを列車から振り落としたシャック、再び挑戦してきたAナンバーワンを見つけた時の表情がいい。
懲りずにまたやってきたなではなく、おぬしなかなかやるな。
もう一人の主要人物が、キース・キャラダイン扮するシガレット。
口だけが達者な生意気な若者で、Aナンバーワンにいつもくっついていて、Aナンバーワンを利用して自分が“北国の帝王”になろうとしているような男。
Aナンバーワンとシャックは、命のやりとりをしながらもどこか通じるところがあって、列車から突き落とそうすればできるところをあえてひっぱり起こして正々堂々戦いを続けるようなところもあるわけですが、シガレットにはそんな“心”がありません。
死闘の末シャックを列車から突き落としたAナンバーワンに、俺たちで組めばできないことは何もないぜみたいに、相変わらず口だけが達者なシガレット。
そんなシガレットを「まだまだ青いよ」と軽く川に投げ捨てると、遠ざかる列車の上からAナンバーワンが叫びます。
「お前は向こうっ気だけで心がねえ!」
くうぅ~!!痺れます…。
ふと考えてみれば列車にタダで乗るか乗せないかだけの話ながら、リー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナインという最強のキャストを得て、どんな西部劇の決闘も真っ青な、漢と漢の意地とプライドだけの死闘を堪能できます。
観ているだけで体温が2度は上がりそうな、必見の大傑作。
[原題]Emperor of the North
1973/アメリカ/122分
[監督]ロバート・アルドリッチ
[出演]リー・マーヴィン/アーネスト・ボーグナイン/キース・キャラダイン
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