『エレクション 死の報復』(ジョニー・トー)

エレクション~死の報復~
『我左眼見到鬼』以来久々のジョニー・トー監督作品、第29弾、最新作『エレクション~死の報復~』です。

1以上にかなりきついとの噂は聞いていましたが、噂に違わぬきっつい展開。
R18指定をつけたとしても、日本で公開できるんですかねこれ。
もし公開されたとしても、間違ってもデートなんかで観に行かぬよう(笑)

さて、まだ1回観ただけですし、未見の方のが多いと思いますので、今回はさらっといきます。

エレクション 死の報復

ウォン・ティンラム御大が樂(サイモン・ヤム)にこうおっしゃってました。

私が会長の座に就いた時も、任期の2年を超えてその座に居続けたいと望んだ。
だが、長老衆の言葉に耳を傾け、身を引くことを決めた。
そうしなかったら、行く先は一つしかない、わかるな。(意訳が入っておりますので御了承下さい)

その言葉に耳を傾けなかった樂。
次の会長の座はお前だとジェット(ニック・チョン)をたぶらかし邪魔者を消させ、権力の座にしがみつこうとする樂。

その座に挑もうとするのは、前回の会長選挙では樂に手を貸した、若き実力者ジミー(ルイス・クー)。

樂はジミーに会長選挙に出ないように迫りますが、もう手遅れですよ、2年前あなたはこうおっしゃった、2年経ったら好きなようにしていい、あの言葉をお忘れですか?(またもや意訳。というよりまだ字幕を逐一追っていないのでだいたいの感じ)

勝ち目のないことを悟った樂は、ジミー暗殺にジェットを差し向ける…。

結末は書きませんが、ジミーとジェットの対峙のシーンがこの映画の白眉でしょう、撃ち合いも刺し合いも殴り合いもないのにこの張り詰めた空気、ゾクゾクと震えがきます。

エレクション 死の報復 ニック・チョン

前作もそうだったと思いますが、この2作が“重い”のは、アクションに銃を使っていないところ。
銃なら遠く離れた所から引き金を引くだけ。
人を殺すという結果に変わりはなくとも、ここまでどんよりした気持ちにはなりません。
『SPL/狼よ静かに死ね』で、ウー・ジンがサイモン・ヤムの部下たちを次々に切り刻んでいった時に覚えたあの感覚、あれです。

しかも、ジミーは涼しい顔をしておきながらやっていることが一番エグい。
あんな拷問を見せられたらそりゃ他の面子は落ちますよ。

あと、中心は黒社会内部の抗争なわけですが、そこに絡んでくるのが本土との関係。
本土側の中心人物は、『ブレイキング・ニュース』でリッチーと心を通わせる殺し屋を演じたユウ・ヨン。

彼とジミーとの対峙のシーンも大きな見せ場。
あんなに冷静沈着に非情に事を運んできたジミーが、初めて取り乱します。
香港の黒社会内部の血みどろの争い、しかしそれも所詮はお釈迦様の掌の中の孫悟空でしかないのか…という、ここが唸らされるところ。

エレクション 死の報復 ユウ・ヨン

ジョニー・トー監督自身も語っているように、返還から9年、香港の人々が抱いてきた期待、不安、畏れ。
一番のテーマは“香港人”としてのアイデンティティー。

多くの命が犠牲になる中、新たにこの世に生まれてこようとする命。
彼(彼女)が大きくなった時、黒社会の、そして香港の未来は…。

今まではどの作品も80分~100分だったところを、今回は前後編合わせて3時間の渾身の一作。
ジョニー・トー監督、恐れ入りました。
そして、ぐったり疲れました(笑)

いずれほとぼりが冷めた頃、前後編合わせてもう1回じっくり書けたらなと思います。

 

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[原題]黑社會以和為貴
2006/香港/92分
[監督]ジョニー・トー
[製作]デニス・ロー/ジョニー・トー
[執行導演]ロー・ウィンチョン
[出演]ルイス・クー/サイモン・ヤム/ニック・チョン/ラム・シュー/ウォン・ティンラム/ラム・カートン/チョン・シウファイ/ユウ・ヨン

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