『アイガー・サンクション』(クリント・イーストウッド)

アイガー・サンクション

クリント・イーストウッド第10弾。

オープニング、チューリヒの美しい街並み、被さるジョン・ウィリアムスの美しい旋律、この時点でつかみはOKです。

街を歩く中年の一人の男、彼が家に戻ると…。

“サンクション”のため、かつてのボスに呼び出されたイーストウッド。昔は凄腕の殺し屋、引退した今は女子生徒にも人気のある美術教師。

『ザ・ミッション/非情の掟』でもそうでしたが、一度組織に属すると、“呼び出し”は断れないんですね。

犯人二人のうち一人をあっさりと始末すると(そこまであっさりでもないですが)、残りの一人はアイガーに挑む国際登山チームの中にいるという…。

ここで現れるイーストウッドのもう一つの顔。
登山家でもあった彼はかつて二度アイガーに挑み、そして敗れ去っていたのです。

“仕事”のため、三度目の正直でアイガーを制するため、かつての登山仲間の元に訓練に訪れるイーストウッド。この仲間がジョージ・ケネディ。
アカデミー助演男優賞を受賞した『暴力脱獄』、当ブログでは『特攻大作戦』『シャレード』、出てきただけで圧倒的な存在感を見せつけるジョージ・ケネディですが、今回もキーマンとして存在感十分です。

話としては謎の女性が絡んできたり、犯人もなかなかわからないなど、サスペンスでもありますのでこれ以上は触れません。

そんなことよりも書かなければいかないのは、圧倒的な映像美。

全編スタントなしで挑んだイーストウッド、スイス・アルプスにそびえ立ち、“魔の山”と恐れられるアイガー、雪に覆われた北壁の、その恐ろしいまでの美しさ。

室内撮影を人物の見分けがつかないほどのロー・キーで撮っているため、それとの対比で浮かび上がる陽の光を浴びた大自然の圧倒的な美しさ。

ハーケンが雪山に刺さる音、ザイルの軋む音、CGに頼らない本物の迫力。
撮影中に死者も出している(数分違いでイーストウッドがその運命にあったかもしれないという…)、文字通り命懸けのロケ。

アイガー・サンクション クリント・イーストウッド

中でも白眉はモニュメントバレーでの訓練シーンでしょう。そびえ立つインディアンの聖なる山トーテム・ポール。その上でビールを飲む二人。
言葉を失う美しさとはこのこと。
この“絵”を見るためだけでもこの映画を観る価値はあると思います。

ラストのヴォネッタ・マギーの一言も強烈。
この終わり方は憎い。

でも、こういう“本物”を観てしまうと、CGを使って絶壁でピンチになっている映画を観ても、妙に冷めてしまってダメですね(笑)

最後に、この駄文を、撮影2日目の落石事故で亡くなった、アイガー北壁の登頂にも成功した世界的登山家デイビッド・ノールズ氏に捧げます。

 

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[原題]The Eiger Sanction
1975/アメリカ/128分
[監督]クリント・イーストウッド
[原作]トレヴェニアン
[音楽]ジョン・ウィリアムズ
[出演]クリント・イーストウッド/ジョージ・ケネディ/ヴォネッタ・マギー

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