『ブラック・サンデー』(ジョン・フランケンハイマー)

ブラック・サンデー

まず初めに、“『ブラック・サンデー』を映画館で観る”というのは、映画ファンにとって長年の夢の一つであったわけで、それを実現させてくれた午前十時の映画祭に心から感謝。

映画館は、自分より一回り以上も上の方たちで熱気ムンムンでした。終わった後には拍手もちらほら。

公開中止を経験したリアルタイム世代ではありませんが、ロバート・ショウ、ブルース・ダーン、マルト・ケラーとクレジットが順に映し出され、Directed by John Frankenheimerの時点で思わず涙が出そうに(笑)

画質が思ってたよりも悪くて一瞬?となりましたが、そんなことは途中からどうでもよくなりました。
DVDで何度も観ている映画ですが、やっぱり迫力が桁違い。

ブラック・サンデー ジョン・フランケンハイマー

飛行船がでかい!見せ場の一つの“試し撃ち”のシーンも、ブルース・ダーンが恍惚となるのも頷けるくらいほんとに美しかった。

この映画、全編素晴らしいですが、特にお気に入りのシーンは3つ。

1つ目は、ほんとなら自分がやられるはずだったのに身代りにモシェフスキーがやられたことをカバコフがベッドで聞くシーン。
手段を選ばないと恐れられた男が、一番信頼のおける部下にだけ見せた弱み。

その部下を殺され、再び男にスイッチが入る。
ここからのロバート・ショウにはもう痺れまくり。相手が大佐だろうが誰だろうが、もう格が違う。
ブチ切れてるわけではなく冷静そのものですが、それが逆に怖い。静かなる凄み。

2つ目は、ブルース・ダーンが当日の担当を外され、もう何もかも終わりだとなるくだり。
マルト・ケラーに押され、徐々に語り始めるブルース・ダーン。
家族ではなく影ばかり観ていた。写真を撮った男に、幸せな人々に、そしてアメリカに復讐を。

序盤に仲間に彼の動機は?と聞かれ、答えられなかったマルト・ケラー。
そこはひっかかってはいたものの、彼女にとっては結果が全てで、彼は利用する手段でしかなかった。
それが、事ここに及んで、ついに彼の動機が爆発する。
それを目にしたマルト・ケラーの目の色が変わる。彼女が成功を確信した瞬間。

完璧な計画と、それを支える尋常でない思い。失敗する余地などどこにもなかった。
でも、今回ばかりは相手が悪かった。
このブルース・ダーンとマルト・ケラーをもってしても、鉄の意志を取り戻したロバート・ショウの敵ではない。

そして3つ目のお気に入り。
本来なら飛ぶはずだったパイロットがホテルで殺されていたのを知ったロバート・ショウが、スタジアムの中を走りに走る。
ここはDVDで観ても素晴らしいですが、スクリーンだとさらに素晴らしい。

ひたすら走るロバート・ショウを、カメラはじっくりと捉える。
ワンカットではないと思いますが、ごちゃごちゃ動かさず、じっくりとロバート・ショウを追う。

これだよこれ。
最近のやたらとカメラを動かすアクション映画とは断然の違い。
無我夢中で走る男にそっと寄り添うだけで、それだけで観客の思いはロバート・ショウと一体化する。こっちまでもう一緒に走ってる気になる。

そして、もはや迷いなど微塵もないロバート・ショウは、ありったけの銃弾を叩きこむ、何の迷いもなしに。
男ならこれを観ろ!

ブラック・サンデー ロバート・ショウ

それでも、ブルース・ダーンとマルト・ケラーの思いの強さも並大抵ではなく、歩みを止めることはない飛行船。
一歩、また一歩と、二人の思いを乗せた飛行船は前へ進んでいく…。

これ以上はさすがにやめておきましょう。

最初に書きましたように、画質もいまいちですし、今の目で観れば、ちゃちな描写もあるでしょう。
でも、そんなことはたいした問題ではありません。
思いと思いのぶつかり合い。画面が大きくなった分、その思いまでどこか大きくなってこっちにより迫ってきます。

長年待ち望んだだけのことはありました。
DVDで観ても十分傑作ですが、“映画館で観る『ブラック・サンデー』”は次元が違う。
両隣りももちろん埋まっていましたし、ほぼ満員だったでしょう。
あの空間を作り出してくれた他のお客様にも心から感謝。

大傑作。

 

ブラック・サンデー [DVD]ブラック・サンデー [DVD]

[原題]Black Sunday
1977/アメリカ/143分
[監督]ジョン・フランケンハイマー
[原作]トマス・ハリス
[音楽]ジョン・ウィリアムズ
[出演]ロバート・ショウ/ブルース・ダーン/マルト・ケラー

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