『ロッキー・ザ・ファイナル』(シルヴェスター・スタローン)

ロッキー・ザ・ファイナル

今回は、スタローン渾身の最新作『ロッキー・ザ・ファイナル』です。

物語は、ロッキーの墓参りのシーンで幕を開けます。

世界中の人々が、一度は名前を叫んたことがあるであろう(ないですか?)、伝説のヒロイン、エイドリアン。
これを携帯で書いている時、「えい」まで打った時点で予測変換が表示された(笑)、知らぬ人はいないエイドリアン。

でも、この時点で、「エイドリアアァァァ~~ン!!」は聞けないことが確定(笑)

最愛の妻を亡くしたロッキーは、今もちゃんと5時に起き、亀と鳥に餌をやった後、懸垂から一日を始めるような男ですが、かつての面影はなく、すっかり過去に生きる男。

妻の名を冠したしがないレストランを営み、それでも知名度のおかげで店はそれなりに繁盛。
お店の自慢は、料理ではなく、ロッキーの昔話。
アポロとの戦いなどを客に語り、写真をせがまれるロッキー、見事に過去に生きております。

そこへ、もう一人大事な人登場。
こちらもスタローン以上にくたびれた、バート・ヤング!

他には、昔少女だった頃にロッキーとちょっとしたやりとりがあった女性が登場し、いい感じになりますが、なんせ過去に生きる男ロッキー、そしてライバルはエイドリアン、いい感じ以上にはなりません(笑)

もう一人、息子も大事な役。
父親のあまりの知名度ゆえ、いつどんな時も“ロッキーの息子”として生きてきた彼は、就職もそのおかげででき、そんな立場がイヤになり、母親の墓参りにも行かなければ、たまに会いにくる父親にも冷たくします。

きっかけは、テレビ局の企画。

実際には対戦が不可能な偉大なボクサー同士を、コンピューターによって対戦させようというもの。
ロッキーに対するは、33戦無敗30KO、あまりに強すぎて人気がない、無敵の現世界ヘビー級チャンピオン。

これを観て金儲けを企んだチャンピオンのプロモーターが、ロッキーとのエキシビジョンマッチを企画。
悩むロッキー、チャンピオンも俺をバカにしてるのかと怒り心頭。

このチャンピオン、今はすっかり金の亡者たちに取り囲まれていますが、昔育ててくれた心の師と呼ぶべきトレーナーがいて、彼は以前チャンピオンにこんなことを言っていました。

一度お前をこてんぱんにぶちのめしてくれる、そんな奴がお前には必要だ。
ぶちのめされて、そこから立ち上がって初めて、お前は本当の強さを手に入れることができる、そして、その時初めて手にできるものがある、自尊心だと。

時に、人生一度も躓いたことなんかない、自分にできないことはないなんてような口をきく人がいますが、そんな人は心から信用なんかできません。

失敗をしたことのない人間に、挫折を知らない人間に、知っている人間の痛みはわかりません。

やや話が映画とそれますが、最近は、一度も殴られたことのない子供の方が多いんじゃないですかね。
ちょっと先生が手を出したくらいで、やれ暴力だなんだと騒ぐバカな親たちのせいで、ろくなことになっていませんが、教育問題で、学校よりも教育委員会よりも、一番の問題は親だと思っています。

そういう自分も先生に見事にぶちのめされたことがありますが(今ならかなり問題かも)、その時はもちろん腹も立てば悔しくもありましたが、後になれば先生と笑って振り返れますし、あの頃の体験は、自分にとって大切な財産の一つです。

閑話休題。

さて、ロッキーですが、無敗のチャンピオンと違い、戦績には23もの負けが刻み込まれています。

そして、誰もが24敗目を信じて疑わない、年寄りの無謀な戦いに挑もうとするロッキー。

父さんが笑い者になれば、僕まで笑い者になるんだ、やめてくれと息子。

しかし、先ほどの女性に少し背中を押されたロッキーは(一歩を踏み出させる一言がいい!)、息子に向かって熱く語ります。というか語りすぎ(笑)
ジャッキーの『プロジェクトBB』でもそうでしたが、どうもみんな歳を取ると説教臭くてダメですね(笑)

しか~~~し!

そんな不満も宇宙の彼方まで吹き飛ばす、伝説のテーマ曲が、ここしかないというタイミングで、満を持して、劇場中に響き渡ります。
イントロだけで泣ける必殺の曲、ビル・コンティ、あなたは偉い!

そして、このテーマ曲さえかかってしまえば、ロッキーはあの頃のロッキーに戻ります。
地獄の筋トレもなんのその、生卵は3つまとめて一気飲み、さらにとどめは、フィラデルフィア美術館広場の階段を駆け上がって拳を突き上げます(笑)

ロッキー・ザ・ファイナル

ここからは、もう語るまでもないでしょう。
ロッキー最後の雄姿をただ目に焼き付けるのみ。

一つだけ書くと、試合中、ロッキーの凄さを身をもって知ったチャンピオンに、例のトレーナーがかけた一言がいい。
「敬意を払え」

もう少しだけ書くと、試合前に野次を飛ばす客として、なんと、あのマイク・タイソンも参戦。

さらにさらに、対戦相手のチャンピオン役は実際の現世界チャンピオンであり、レフリーとリングアナにも超大物を投入、スタローンの意気込みがわかります。
まさかこんなところで、Michael Buffer氏のあの名調子が聞けるとは!
さあ皆さんもご一緒に、“Ladys and gentleman, Woooooo, Let’s get ready to rumble!”

最後に、エンドクレジットが始まっても最後までご覧になることをお勧めします。
ジャッキーのNG集に負けない、ニヤリとなるいいものが拝めます。

いやあ、いいものが観れました。

 

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[原題]Rocky Balboa
2006/アメリカ/103分
[監督]シルヴェスター・スタローン
[音楽]ビル・コンティ
[出演]シルヴェスター・スタローン/バート・ヤング/アントニオ・ターヴァー

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