いや~、久しぶりに恋愛映画のワンシーンに唸りましたね。
全体の感想は、東京で先にご覧になった皆さんがすでに語り尽くしているので、ワンシーンに絞って書きます。
ファイ(ラウ・チンワン)の親切に、マン(ルイス・クー)を忘れられないながらも、少しずつ彼に惹かれていくシウワイ(セシリア・チャン)。
彼女の言葉通り、“ちょっとは好き”になりつつあります。
そして、街を歩いている時、二人はついに初めて手をつなぎます。
このつなぐまでの感じも、自らも経験のあるあのなんともいえない感じを出していて見事なんですが、せっかくつないだのに、前から歩いて来たカップルが二人の真ん中を突っ切ってきたため、やむなく手を離す二人。
この後、ファイが、すぐにまたつなぐでなく、かといってかなり迷ってからつなぐでもなく、ほんのワンテンポ躊躇ってから、そっとシウワイの手を握ります。
自分の記憶が正しければ、ここは二人の手しか映らなかったと思うんですが、この時のファイの表情も、ファイの中の一瞬の心の動きも、握った時の相手の手の感覚も、頭で理解できるだけでなく、感覚として完璧に伝わってきました。
これは監督がどんなに説明したところで限界があるので、ラウ・チンワンの力でしょう。
絶品。
このワンシーンだけでも、金像奨で『マッスルモンク』のアンディに負けるなんて、ラウチンがあまりに可哀想。(『暗戦 デッドエンド』でのアンディの受賞にはもちろん何の異存もありません)
『つきせぬ想い』の時も、主要部門独占したのに、ラウチンだけ『八仙飯店之人肉饅頭』のアンソニー・ウォンに負けてるし(笑)
イー・トンシン監督作品では縁がないということでしょう。
こうなれば我らがジョニー・トー監督しかいません。
最近はずっとラウチンを使ってないので、ぜひ金像奨間違いなしの主演作を!
[原題]忘不了
2003/香港/109分
[監督]イー・トンシン
[音楽]ピーター・カム
[出演]セシリア・チャン/ラウ・チンワン/原島大地/ルイス・クー