『暗戦 デッドエンド』(ジョニー・トー)

暗戦 デッドエンド

『ザ・ミッション/非情の掟』『ヒーロー・ネバー・ダイ』に続いて、“男ならジョニー・トー!”(今命名しました)第3弾、『暗戦 デッドエンド』です。

この映画、稲本作蔵様には“男ならこれを観ろ!”へ投稿していただき、東雲様、hi-chan様、きえ様にはコメントのやりとりの中でお勧めしていただきました。
皆様、ありがとうございます!

さて、『ヒーロー・ネバー・ダイ』では“英雄は英雄を知る”というレオン・ライとラウ・チンワンでしたが、ラウ・チンワンは今回も登場。
そして今回、両雄のもう一方はアンディ・ラウ。

ラウ・チンワンを『ヒーロー・ネバー・ダイ』でしか観たことがない自分は、まずはスーツ姿もちゃんとキマるんだと感激。
しかも、テンガロンハットは被ってないし、太い葉巻もくわえてない、そして何よりあの口髭がない!(笑)

と妙なところでまずは感激してしまいましたが、今回のラウ・チンワンは“普通に”かっこいいです。

どこか抜けている上司に足を引っ張られる、できるホー刑事の役。

対してアンディ・ラウ。もうかっこよすぎます!
余命4週間の末期癌患者にして、抜群の知能を誇る犯罪者、この設定からしてもう完璧でしょう。

人質を取りビルの屋上に立てこもると、差し向けられた交渉人を拒否し、ホー刑事を指名。

これはゲームだ、72時間以内に俺を捕まえてみろ!

暗戦 デッドエンド アンディ・ラウ

銃を向ける警官たちを前に、余裕で消えるアンディ。

上司や他の刑事たちはアンディにいいようにあしらわれてしまいますが、一人負けていないホー刑事。

ビルから出たアンディがタクシーに乗ると読むと、運転手になりすまし待ち伏せ。
乗ってすぐ気づくアンディですが、こんな感じでたまらないアンディ・ラウ(以下アンディ)とラウ・チンワン(以下ラウ)のやりとり。

アンディの目的はお金ではなく実は…というストーリーもちゃんとあるんですが、この映画、話の展開を語る映画でもないでしょう。

ダントツで好きなのは、バスでのアンディと女性(『ヒーロー・ネバー・ダイ』ではレオン・ライの彼女だったヨーヨー・モン)のやりとり。

逃げるためにバスに乗ったアンディ。行く先には検問、そして大勢の警察。

通路の反対側に一人で座っている女性を見つけると、席を立ち隣に座るアンディ。

アンディが忍ばせている拳銃に気づく女。

女の肩を抱き「静かに」
この台詞を怖く言わないところがいいですね。

そして、自らのサングラスを女にかけると、女が聞いていたウォークマンのイヤホンの片方を自らの耳に。

そして、「もたれろ」
もちろん女の方は少しは怯えているんですが、怯えきってないのがいい。
男が自分に危害を加えるような男ではないと、彼女にはすぐにわかったことでしょう。

肩に回した手に力を入れるアンディ、アンディの肩にもたれかかる女。
まるで恋人同士のように、イヤホンを分け合って聞く二人。

暗戦 デッドエンド バスの中だけの恋人

無事検問を突破し、「ありがとう」と降りるアンディ。
サングラスを返し忘れたことに気づいた彼女は慌てて降り、後をつけます。

「尾行か?」と振り返るアンディに、「私の家よ」と嘘をつく女。そしてサングラスを返します。

偶然の再会はまたしてもバスの中。先に気づいたのは女の方。
アンディを見つめる表情が前回とは違います。

乗っているバスが警官に止まれと呼び止められ、アンディも女に気づきます。
無言で荷物をどけ隣の席を空ける女。

アンディが女の隣に移動すると、彼女は自ら腕を組みアンディの肩にもたれかかります。

二度目の、バスの中だけの恋人。

しかし実はバスが止められたのは、運転手の信号無視。
安堵の笑みを浮かべる二人。

運転手以外二人きりになった終点で共にバスを降り、レストランに入る二人。

「名前は?私はリュー」
「名前はない」
「新聞で読んだわ」
「どうも」
「いいえ」

「時間がない」
「どうして?」

グラスの水の中に喀血するアンディ。
「すまない」と立ち去るアンディ、真っ赤に染まったグラスを見つめる女。

『ヒーロー・ネバー・ダイ』でも二人の女性が泣かせてくれましたが、今回もたまりませんね。
熱い漢のやりとりだけでなく、こういう部分も抜群に素晴らしいジョニー・トー。

ある日ホー刑事がバスに乗ると、後ろの座席に座っていたのは例の女性。
彼女の首からかかっていたのは…。
これは観てのお楽しみということで。

この映画、もう一つの見せ場はアンディの変装。
インタビューで「街に出ても気づかれなかった」と語っていた老人姿はなかなかでしたが、「すごく醜かった」と語っていた女装には笑いました、醜くはないですが。

ぐっとくるはやっぱり時限爆弾をセットした車でのアンディとラウのシーンでしょう。

観てのお楽しみとしておきますが、アンディの“ニヤリ”には、男でも惚れます。

それにしてもジョニー・トー。
これが3本目ですが、3本ともど真ん中ストライク。

西にサム・ペキンパー、ロバート・アルドリッチ(二人とも故人ですが)あれば、東で迎え撃つのはジョニー・トーでしょう。
アジアも“韓流”なんかで騒いでいる場合ではありません。

必見。

 

暗戦 デッドエンド [DVD]

暗戦 デッドエンド (暗戰) (Blu-ray) (香港版)

[原題]暗戰
1999/香港/90分
[監督]ジョニー・トー
[出演]アンディ・ラウ/ラウ・チンワン/ヨーヨー・モン/ラム・シュー/ホイ・シウホン/リー・チーホン/ルビー・ウォン/ロー・ウィンチョン

→予告編 →他の映画の感想も読む

関連記事

まさかの廉価盤が発売になった『暗戦 デッドエンド』ですが、前に書きましたようにこれでうちには3枚の『暗戦 デッドエンド』が揃うことになりましたので、これから購入される方の参考にもしていただけるよう、今回は画質の比較を行なってみようと思います[…]

関連記事

any様、ご無沙汰しておりますが、お元気ですか? というわけで今回は、any様の“がんばれ!イーキン!!”に久々に参加させていただこうということで、イーキンについて少し。 と言っておきながら、実はヨーヨー・モンの話です(笑) いつ[…]

関連記事

いつもお世話になっている「5011しねま・のーと」の5011様が、「スターのお仕事バトン」というのを作られて、面白いのでいただいてきちゃいました! 5011様のブログには、“スターのお仕事”というカテゴリーに、仕事に焦点を当てた面白いエン[…]