『トゥルー・グリット』(ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン)

トゥルー・グリット

オリジナルはジョン・ウェインがアカデミー賞を獲った映画ですが、完全にキム・ダービーが主役の映画でした。

その点、今回はヘイリー・スタインフェルドに全てがかかっていたと言ってもいいですが、一言、素晴らしい。
オリジナルにもあった商人を言いくるめるとこからすでに痛快。

トゥルー・グリット ヘイリー・スタインフェルド

そして、この映画、オリジナルより約20分も短い。
みんなが知っている話なので、序盤の事件はナレーションだけで済まして、いきなり町から始まる。これが正解。
これでずっと映画のテンポが良くなったと思います。

さらに、この町のセットが素晴らしい。ちゃんと“西部劇の町”で、この光景を見ただけで、あっ、この映画は大丈夫だと思いました。

『デリンジャー』にあった空気感がごっそり抜け、ちっとも大恐慌時代に見えなかった『パブリック・エネミーズ』とはえらい違い。コーエン兄弟さすが。

ジェフ・ブリッジスのアル中演技はもう安定感抜群で、『クレイジー・ハート』を観ているみたい(笑)

トゥルー・グリット ジェフ・ブリッジス

マット・デイモンが思ってたよりも良くて、ちゃんとテキサスレンジャーしてました。

トゥルー・グリット マット・デイモン

ジョシュ・ブローリンは今回は活躍は少なめ。

オリジナルでロバート・デュヴァルがやった役に、出た!バリー・ペッパー!いいなぁこの配役。ロバート・デュヴァルに全然見劣りしない。

トゥルー・グリット バリー・ペッパー

オリジナルでデニス・ホッパーがやったムーンは、やっぱりデニス・ホッパーの方が全然良かった。今回の役者も頑張ってはいますが。

そして、オリジナルは子供の頃に観たきりでほとんど参考にしてないと言ってたわりに、かなりオリジナルに近い。全く同じ台詞もちらほら。
原作は未読ですが、ちらほら読んだ感想によると、どちらも原作に忠実ということなんでしょうが。

さらに、思ってたよりも“普通の映画”(悪い意味ではなく)で、コーエン兄弟らしい“毒”は少なく、“うまくまとまってる”なぁと思って観ていたら、エピローグがオリジナルと全然違う!
このエピローグが不要という意見が多いみたいですが、これこそコーエン兄弟。

あのまますんなり終わっていたら、オリジナルをなぞっただけの“普通によくできた西部劇”というだけで、何も心には残ってなかったと思います。

それが、ラストで一気に来た!あのエピローグは原作に忠実らしいですが、オリジナル版になかった“毒”が最後に来た!

コクバーンやラビーフと旅をして、大変だったけどいろんな経験をして、成長できて良かったね、そんな単純なもんじゃない。

14歳の少女が、何を学び、何を手に入れ、そして何を失ったか。
どうやってあれから25年も生きてきたか。

そして、あのラストショット。
彼女の“これから”も観客の心に投げかけ、静かに映画は終わる。

コーエン兄弟、さすがだよ。アカデミー賞無冠がなんだ、そんなことはどうでもいい。

傑作。

 

トゥルー・グリット [Blu-ray]トゥルー・グリット [Blu-ray]

Listen on Apple Music
[原題]True Grit
2010/アメリカ/110分
[監督]ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
[撮影]ロジャー・ディーキンス
[出演]ジェフ・ブリッジス/マット・デイモン/ヘイリー・スタインフェルド/ジョシュ・ブローリン/バリー・ペッパー

→予告編 →他の映画の感想も読む

関連記事

今年のアカデミー賞、『英国王のスピーチ』と『ソーシャル・ネットワーク』の一騎打ちでしょうが、個人的にはどちらも観たいことは観たいですが、興味は断然『トゥルー・グリット』。 ちょっと前にこんなニュースが出ていました。 allcin[…]